サクラインターナショナル「安全大会2026」レポート――変わるルール、変わらない基本

サクラインターナショナル安全大会

サクラインターナショナル「安全大会2026」レポート――変わるルール、変わらない基本

サクラインターナショナル株式会社は2026年8月3日、奈良県橿原文化会館にて「安全大会2026」を開催した。関東・関西で隔年開催されるこの大会は今回で12回目を数え、本年は関西での開催となった。会場となった橿原文化会館は、先般の飛鳥・藤原の宮都群のユネスコ世界文化遺産登録の際、パブリックビューイング会場としてテレビに映し出された場所でもある。当日は同社社員に加え、全国から多くの協力会社が参集した。

変わるルール、変わらない基本行動

安全委員会委員長の竹下氏による開会宣言では、前年の大会テーマ「新人の教育」を踏まえた1年間の取り組みが振り返られたうえで、今年度のテーマ「変わるルール、基本を守る安全行動」が掲げられた経緯が説明された。作業環境の変化や法改正によって、守るべきルールは目まぐるしく変化していく。しかし前年に築き上げた高い安全意識という土台があるからこそ、どれほどルールや環境が変わろうとも、一人ひとりが基本の安全行動を着実に徹底し続けることができる――竹下委員長はそう述べ、「日々、誰一人欠けることなく、確実にゼロ災害を貫いていきたい」と力を込めた。

背景には、人手不足に伴う未熟練者の割合の増加や、労働安全衛生に関する法規改正への対応など、これまで以上に安全管理の重要性が高まっているという現状認識がある。未熟練者の増加に伴い、基本動作の理解不足や確認不足に起因するヒヤリ・ハット事例も見受けられることから、現場が一体となったフォロー体制の一層の強化が求められている。そうした状況下でも、安全は日々の「当たり前」を確実に積み重ねることで実現される――大会テーマにはそうした思いが込められている。

現場を歩いて見えてきた基本動作の緩み

安全委員会事務局の森田氏からは、今期の安全巡回実施報告が行われた。担当したのは東京ビッグサイト、幕張メッセ、パシフィコ横浜を中心とした関東エリアで、関西・東海方面は同社の佐藤氏が巡回を実施。巡回は取り締まりが目的ではなく、現場で作業に従事する協力会社の安全意識向上を図る啓発活動として位置づけられている。

巡回時に重点的に確認しているのは、搬入時における車両誘導時のコーン設置の徹底、パワーゲートやフォークリフトでの荷卸し時の声掛け、台車の手押し移動時に2名以上で作業しているかどうかといった基本動作だ。設営時には前傾姿勢での作業、長物・重量物運搬時の2名以上での実施、壁面への資材の立てかけの有無なども確認している。

実際に確認された危険行為の事例も具体的に報告された。ヘルメットを着用していないアルバイトスタッフ、出展物付近での電気工事作業中に切断した電線を落として出展者に当たりそうになった事例、脚立への2人乗り、ヘルメット未着用のまま脚立の天板に立って作業していた事例、搬送用カートに足をかけた無理な姿勢での撤去作業など、日々の現場でヒヤリとする瞬間は決して少なくない。一方で、長物を1人で手運びする現場に注意喚起を続けた結果、複数の協力会社でヘルメット着用が定着してきたという改善も報告された。森田氏は「安全は一日にしてならず、毎日の基本の積み重ねです」と締めくくった。

事故は増加、ヒヤリ・ハットは減少――データが語る現場の変化

安全委員会事務局の須田氏からは、この1年の事故統計報告と、事故の傾向と対策の分析結果、KYM(危険予知ミーティング)資料の報告が行われた。事故・ヒヤリハットの合計は増加傾向にある。運搬時・荷役作業時の車両事故が多く、安全未確認や車両操作ミス、路面の悪さなどが要因として挙げられた。

過去3年間のデータをもとにした傾向分析では、ヒヤリ・ハット区分が前年より減少した一方で、実際の事故区分に該当する件数は増加したことが報告された。原因分析では、人的要因のうち技術面に起因するものが多く、事前の安全確認の徹底で低減が可能であること、外的要因については整理整頓など環境整備で低減可能なケースが多いことが示された。未熟練者の割合の増加に伴い、安全教育・安全行動のルールが十分に浸透していない事例も見られたという。

一方、KYM(危険予知ミーティング)は、繁忙期にあたる秋や初夏は実施率が低下する傾向があるものの、全体としては着実な改善が見られており、協力会社への謝意が述べられた。

スマホで完結する事故報告ツール、来期導入へ

続いて、大阪製作管理部の村社氏より、事故報告を迅速かつ簡便に行うための社内Web事故報告ツールが紹介された。従来はパソコンでExcelフォーマットに入力しメールで送信する必要があり、現場担当者にとって少なからぬ手間となっていた。新しいツールでは、スマートフォンからその場で報告が可能になるという。

運用フローは2段階に分かれている。事故発生後の初期対応を終えた段階で、まずスマートフォンから「第1報」として事故概要を報告する。社内チャットアプリと連携しており、報告先に選んだ社内関係者と安全委員会全員に、自動的にチャット通知が届く仕組みだ。状況が落ち着いた段階で、パソコンからでも続けて入力できる「第2報」でより詳細な事故内容を報告し、これで事故報告が完了する。現場での負担軽減と、迅速な情報共有の両立をねらった設計だ。

具体的な操作方法については、IT事業部ソリューション課の矢田氏がVTRを用いて紹介した。ツールの導入は来期からを予定しており、将来的には社外向けサービスとしての販売・提供も検討しているという。興味を持った協力会社には、IT事業部ソリューション課への問い合わせが呼びかけられた。

507件の応募から選ばれた、今年の安全標語

安全標語発表・表彰のコーナーは、担当である生産本部担当役員・樽井氏の代理で浦久保執行役員が進行した。今年の安全標語には、協力会社から99件、社内から408件、合計507件(前年332件)という過去最多の応募が寄せられた。「変わるルール、基本を守る安全行動」という今年のテーマに沿った標語の中から、佳作3件、優秀賞3件、そして最優秀賞1件が選ばれている。

佳作には、大阪企画営業部・小野原氏の「予測せよ もしもの先のそのリスク」、株式会社ニシマツテント・塩谷泰伸氏の「焦るな 省くな 確認作業 みんなで築く安全現場」、東京企画営業本部・松田氏の「変わるルール 変えてはならない安全意識」の3作が選ばれた。会場に出席していた塩谷氏は登壇し、「日頃作業している中で感じたことをそのまま言葉にした。経験を積んでいても、焦りや慣れによって安全が守られないことがある。確認作業をみんなで徹底し、声を掛け合って安全第一でやっていきたい」とコメントした。小野原氏・松田氏は事前収録のコメントが映像で紹介された。

優秀賞には、製作管理部・島原氏の「手間暇かけた安全作業が手間を省く」、東京オーガナイザーサポート部・キーファー氏の「安全は経験則の外にある」、同・中島氏の「違和感に気づく力で事故防止」が選ばれた。島原氏は「手を抜いたことで何かしら不具合が発生し、かえってその処理に手間が取られてしまうことがないよう、自分自身も仕事をする上で心がけている」とコメント。キーファー氏・中島氏は事前収録のコメントで、経験だけでは気づけない危険もあるからこそ、変わるルールを正しく理解し基本を守ることが安全につながる、という趣旨を述べた。

そして今年度の最優秀賞に選ばれたのは、大阪オーガナイザーサポート部・稲村幸子氏の「伝える経験、受け継ぐ基本、つなぐゼロ災害」だ。稲村氏本人が登壇し、「どうすれば新しく入社した人に基本を伝えられるかを考えた。マニュアルだけでは伝えきれない、実際に経験したからこそ得られる気づきや判断、危険を回避するための工夫は、先輩から後輩へ伝えていくことで受け継がれるものだと思う。それが後輩の成長にもつながり、自身の基本の振り返りにもなり、結果として会社全体の安全意識の向上にもつながる」とコメントした。この最優秀賞のフレーズは、今年度大会の合言葉として位置づけられることとなった。

全員参加のリアルタイムディスカッション「Sakura de discussion」

大会中盤には、参加者全員がスマートフォンでQRコードを読み取り、リアルタイムアンケート形式で進行する「Sakura de discussion」のコーナーが設けられた。テーマは大会テーマと同じ「変わるルール、基本行動について」。5問の設問に対し、5名の特別ゲストが解説・コメントを加えていく構成だ。登壇したのは、一般財団法人大阪国際経済振興センター インテックス事業本部 施設運営担当課長代理の大木悠加氏、株式会社ユニティ大阪支店施工管理部の石岡氏、株式会社映像センター イベント映像事業部次長の竹波浩一氏、サクラインターナショナル大阪クリエイティブ本部執行役員本部長の猪之奥康仁氏、同社大阪企画営業部部長の水川紀孝氏の5名である。

第1問は、同社のスローガン「The Green Global Business Producer」に含まれる「グローカル」という語の意味を問うもの。「グローバル」と、地域や現場の視点を意味する「ローカル」を掛け合わせた造語であり、大阪・東京・愛知・横浜に加えラスベガス・中国・ドバイにも拠点を広げ、地球規模の視点で環境保全に取り組む思いが込められていることが説明された。安全確保の徹底が顧客からの信頼、ひいては会社の未来につながるという解説がなされた。

第2問は熱中症対策について。主催者側の対策が十分かを問う設問では、「対策はしているが、まだ十分ではない」という回答が最も多かった。西岡数仁氏からは、塩分タブレットとアイスパックの現場配布、全社員への空調服支給、アルバイトスタッフへの夏季ドリンク代支給(7〜9月、1現場あたり500円)といった取り組みが紹介された。会場からも参加していた協力会社の方が発言し、屋外案件が多いため、ドリンクの現場常備や、気温が高い日の1時間ごとの休憩取得をクライアントと調整していることが紹介された。

第3問は、インテックス大阪で来年から始まる改修工事の認知度を問うもので、「知っている」という回答は約25%にとどまった。大木氏によれば、インテックス大阪は開業から41年を迎え、2027年4月から1年間、3号館を皮切りに複数館を順次休館しながら大規模改修工事を行う予定だという。将来的にはホールを一体的に使えるような仕様変更の案も検討段階にあるとのこと。同施設は合計10館の展示会場を有し、日常的に複数のイベントが並行開催されているため、「前回はこうだったから」という思い込みが通用しない場であり、その都度の状況に応じた危険予知と安全確保への協力が呼びかけられた。

第4問は高所作業における各社の取り組みについて。竹波氏からは、高所作業車(6〜10メートル級)の操作やフルハーネス型安全帯の使用について、入社3年目までに段階的な資格・許可を取得させていること、LEDモニター設営時の重量物(1枚あたり十数キログラム、複数枚を2人体制で運搬)の取り扱いや、配線作業でトラス・木工・電気の各業者との連携が必要になっていることが紹介された。会場からも参加していた協力会社の方が、法令遵守の徹底と、特別教育修了者を現場に配置する取り組みを紹介した。

第5問は、女性活躍推進法・次世代法に基づく「えるぼし」認定・「くるみん」認定の取得状況について。「いずれも取得していない」という回答が多数を占める中、猪之奥氏からは、法改正や働き方の多様化を踏まえ、心身のゆとりが安全意識・集中力につながること、女性・高齢者・外国人など多様な人材が活躍する現場において、従来の当たり前に縛られない新しい安全ルールの徹底が重要であるとの説明があった。あわせて、品質・安全性に関する認証(ISO、プライバシーマークなど)の取得にも触れられた。

フォークリフトの荷崩れ、バック走行時の接触――基本動作の徹底を決議

大会決議文は、サクラインターナショナル生産本部の森本氏が読み上げた。イベント業界ではサクラインターナショナルと協力会社が一つのチームとなり、それぞれの技術・経験を持ち寄ることで現場が成り立っている。その根底にあるのが安全であり、安全なくして良い現場づくりはあり得ない――そうした趣旨から始まり、本年度テーマ「変わるルール、基本を守る安全行動」のもと、安全指針19カ条の遵守・作業前確認の徹底・仲間同士の声かけが、経験の有無にかかわらず全ての現場で徹底すべき行動であると述べられた。

今年度の事故傾向としては車両系事故の増加が挙げられ、フォークリフトからの荷崩れやバック走行時の接触など、基本動作の徹底で防げた事故が多かったことが指摘された。車間の適切な確保、安全な速度での運行、進行方向・周囲の確認といった基本動作は、経験を積んでいても省略してはならない。また本年、同社がISO14001の認証を取得したことにも触れられ、環境配慮も企業としての重要な責任であるとされた。最後に、本年度の最優秀安全標語「伝える経験、受け継ぐ基本、つなぐゼロ災害」のもと、無事故での事業活動を継続していくことが大会の決議として宣言された。

国際園芸博覧会を見据える横浜支店

横浜支店・伊東氏からは、昨年8月1日に法人登記されたばかりの横浜支店の紹介が行われた。所在地はパシフィコ横浜展示ホールA、海側サービスヤード付近の入口。関西の協力会社にとっては初めての紹介となるため、詳しく説明したいとのことだった。

来年に迫った国際園芸博覧会をはじめ、神奈川県内での業務展開に力を入れており、これまで展示ホール中心だった業務に加え、パシフィコ横浜の会議センターやノース多目的ホールを活用した国際会議・海外主催者によるイベントにも注力していく方針が語られた。あわせて、この後の見学先となる飛鳥スタジオがISO14001を取得していること、海外拠点(ラスベガス、中国・上海)、大阪本社別館(tonari)に製作管理部門が入っていることなど、拠点網の広がりが紹介された。

 

妙代社長が語る、無限の可能性を秘めたイベント業

閉会挨拶に立ったのは、代表取締役の妙代金幸氏。協力会社への感謝の言葉から始まり、「協力会社の皆様のご支援があってこそ、私ども社員一同、日々の現場を支えられている。この1年、皆様と一体となってイベントを成功させることができた」という趣旨の挨拶が続いた。

話題は今年8月にATC(アジア太平洋トレードセンター)で開催されるB2Cイベントに及んだ。大阪・関西万博のレガシーイベントと位置づけられ、入場料2,500円ながら大変な集客があったといい、大きな反響だったというエピソードが紹介された。

また同社が携わる国際的なイベントとして、ラスベガスで開催される世界最大級の見本市CESが挙げられた。来年は同社として10社ほどの出展ブースの施工を予定しているという。あわせて、9月にマイアミで開催されるSWIFT主催のカンファレンス「SIBOS(サイボス)」や、入場料が高額な世界的なスポーツ関連のイベントにも言及し、「私どものイベント業は無限の可能性を秘めている」と語った。

最後に、国内外の主催者・地方公共団体・一般企業など幅広い顧客との仕事は、協力会社があってこそ成り立っていると改めて謝意を述べ、「安全こそビジネスです。皆様も一緒に、サクラインターナショナルとともにイベントを大成功に導いていただきたい。本日は暑い中、本当にありがとうございました」と締めくくった。

大会後は飛鳥スタジオへ――最新機器が支える現場力

安全大会終了後、参加者は同社の製作拠点である飛鳥スタジオへ移動し、施設見学が行われた。案内は、GDO(グラフィックデザインオペレーション)と呼ばれるグラフィック製作部門の紹介から始まった。同部門で扱う商材として、7連ボードのパネル、切り文字、バナーなどのサンプルが紹介され、実際に手に取って質感を確かめることもできた。

続いて案内されたのは、2週間ほど前に導入されたばかりという大型印刷・カット機だ。案内役によると、東京工場(埼玉県草加市)にある機械と同等機種で、1,500mmから3,100mmまでのサイズをカットできるという。機械の名称は「Zünd(ヅンド)」。パネルへの直接印刷とカットを一体で行うことで、複数枚のパネルを継ぎ合わせる際の色ズレや隙間、塗り足しの必要がなくなるのが最大の特徴だという。実際、横浜支店事務所の壁面装飾もこの機械で制作されたとのことで、案内役は「継ぎ目ができない」「湿気の影響も展示会の期間中であればほとんど問題にならない」と胸を張った。

デザインやサイズによって、大判の一面ものはこの機械、複数枚に分割するものは従来通りの貼り合わせという手法を使い分けており、どちらを使うかは担当者との相談の上で決めていくという。この機械の導入により、これまで関西では対応が難しかった案件にも対応できるようになった点が、拠点としての新たな強みとして紹介され、見学は締めくくられた。

守り続けようとする一人ひとりの意識の積み重ねがゼロ災害へ

「変わるルール、基本を守る安全行動」というテーマのもと開催された今年の安全大会は、事故統計という数字の報告から、現場で実際に起きたヒヤリ・ハットの実例、新人育成のための言葉、そして次世代の技術投資に至るまで、幅広い切り口で「安全」というテーマを掘り下げる場となった。507件という過去最多の応募が寄せられた安全標語にも表れているように、変わり続ける現場環境の中で、基本を守り続けようとする一人ひとりの意識の積み重ねこそが、サクラインターナショナルの掲げるゼロ災害を支えている。

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