STBの展示会・コンベンション局とJETRO Singaporeが3年間の協力覚書
日本からの誘致の土台になっているのが、2025年6月20日に結ばれた協力覚書だ。STBグループのシンガポール展示会・コンベンション局(SECB)と、JETRO Singaporeが、大阪・関西万博のシンガポール館「The Dream Sphere」で署名した。期間は3年間で、両国のビジネスイベントを伸ばし、経済協力の新たな経路をつくることを目的にしている。STBの発表とJETROのリリースによると、取り組みの柱は3つある。日本の多様な経済力とシンガポールのビジネスイベント拠点としての強みを結びつけ、現地で開かれるイベントの国際的な広がりを高めること。サステナビリティ、生産性、デジタルイノベーションの分野で知見を共有し、MICEの水準を引き上げること。そして、両国に共通する成長分野について、それぞれの発信手段で周知することだ。
SECBのエグゼクティブ・ディレクター、Poh Chi Chuanさんは、シンガポールをアジア太平洋への玄関口と位置づけ、JETROとの協力を初の試みとして、両国のMICEの仕組みを強くしたいと述べた。JETROのManaging Director、Junji Kurokawaさんは、2026年が外交関係樹立60周年であり、JETRO Singaporeの設立70周年にもあたると触れ、日本企業にシンガポールの国際的なイベントを新市場の開拓に活用してほしいと呼びかけた。JETRO Singaporeは10月に開かれる「SWITCH(Singapore Week of Innovation and Technology)」への日本企業や自治体の出展を支援するほか、シンガポールの展示会への日本企業の参加や現地関係者との交流を後押しする計画だ。
MICE観光収入は前年比35%増、2040年に45億シンガポールドルが目標
STBは2026年5月20日の発表で、MICEの最新の数字を示している。2025年の観光収入は328億シンガポールドルで、前年の298億シンガポールドルから10%増えた。このうちMICE関連の観光収入は23億シンガポールドルで、前年の17億シンガポールドルから35%増。国際会議協会(ICCA)の統計では、2025年に156件の国際会議が開かれ、アジア太平洋で23年連続の首位になった。2040年までにMICE観光収入を45億シンガポールドルに伸ばす目標も掲げている。現在の展示面積は総計で約20万平方メートルで、ダウンタウン地区に新たなMICE拠点を設ける構想もある。
同発表では、2026年上半期の実績や下半期の予定も挙がっている。2026年6月のハーバライフのAPAC向けイベントは、2万5,000人が参加する見込みで、同国で過去最大の会議・報奨旅行になる見通しとされた(5月時点)。下半期には、英国のインフォーマ社が新たに手がけるFundForum Asia、Pharmapack Asia、BioProcess International Asiaや、Passenger Terminal ExpoとBreakbulkのアジア初開催が予定されている。STBとインフォーマ社は3年間の覚書も結んだ。
メッセ・ベルリンとも戦略提携、2027年は7つの見本市に
展示会の主催者との提携も続く。STBは2026年9月25日、ドイツのメッセ・ベルリンと戦略的パートナーシップの覚書を結んだと発表した。2008年のITB Asiaの立ち上げから続く18年間の提携を土台にしたもので、署名はInnoTrans Berlin 2026の会期中に、STBのMelissa Owさんとメッセ・ベルリンのMario Tobiasさんが行った。現在シンガポールで開いている見本市に加え、2027年にはInnoTrans Asia、CMS Asia、Smart Pharma Asiaがアジア初開催となり、同年は合計7つの見本市を運営する見通しだ。2025年のITB Asiaは、ビジネスアポイントメントが6万件超(前年比35%増)、来場者が1万8,000人だった。
日本からのイベントを後押しする制度
日本の企業や団体がシンガポールでイベントを開く際に使える制度として、STBは「Business Events in Singapore(BEiS)」を用意している。公式ページによると、新鮮で革新的な内容を持つ質の高いイベントの開催を促すための制度で、会場の確保、政府機関や事業パートナーの紹介、広報の支援、サステナブルなイベント運営の支援に加え、第三者の専門サービスやコンテンツ開発、マーケティング、招致活動にかかる適格費用の一定割合の助成が含まれる。審査では、内容、ブランド、海外からの参加者を含む参加者の属性などが評価され、競争は激しい。助成金は後払いで、支援の対象となったあとに第三者監査済みの書類の提出が求められる。助成の割合や、参加人数の下限は、同ページに記載されていない。
報奨旅行や社員旅行向けには、INSPIRE Globalなどの体験プログラムもある。旅行業界メディアのトラベルボイスは2026年3月、JTBがSTB、シンガポール航空、マンダイ・ワイルドライフ・グループと協定を結んだ際の記事で、STBの担当者が「INSPIRE Global 3.0」を、20〜250人のインセンティブ旅行や社員旅行に無料の体験を提供する制度と説明したと報じている。同記事は、BEiSを750人以上のイベントの支援としているが、STBの公式ページには人数の下限が示されていない。制度の最新の条件は、STBに直接確認するのが確実だ。
ANAとシンガポール航空の共同運賃で、往復の航空会社を選べる
移動手段では、ANAとシンガポール航空の共同事業が、出張や報奨旅行の組み立てを変えつつある。ANAの公式ページによると、共同運賃は2025年5月21日に販売が始まり、対象は2025年9月1日以降の搭乗分。シンガポール航空の公式ページでは、東京とシンガポールを結ぶ便は1日最大9便(羽田5便、成田4便)で、関西、中部、福岡からの直行便もあり、顧客はシンガポール航空とANAの便を組み合わせ、日付や運賃の種類を選べる。ただし一部の運賃は対象外だ。法人向けには、出張者向けプログラム「HighFlyer」で割引運賃やポイントを提供している。
今後の日程:SJ60フェスティバルは11月28日・29日
60周年の記念行事として、SJ60の公式サイトによれば、「SJ60 MUSUBI SINGAPORE-JAPAN FESTIVAL 2026」が2026年11月28日(土)・29日(日)の10:00〜20:00に、マリーナベイ・サンズのエキシビションホールD/Eで開かれる。パフォーマンス、カルチャー、ツーリズム、フード、テクノロジーのカテゴリーで体験型のブースが並ぶ。主催は日本・シンガポール外交関係樹立60周年実行委員会とJTB PTE LTDで、商談イベントについては同サイトに記載がない。STBのMICE情報サイトには、11月の「Singapore FinTech Festival 2026」も掲載されており、会期の詳細は掲載ページや公式サイトで確認できる。
シンガポールの動きを公式情報でたどると、STBは日本の機関(JETRO)や旅行会社、ドイツ・英国の展示会主催者と、複数の相手にそれぞれ覚書や協定を結び、助成と体験、航空の選択肢、展示会の誘致を組み合わせて、MICEの受け入れを広げようとしている。日本の展示会・イベント業界にとっては、海外のビジネスイベントを検討する際の窓口や制度が整理されつつあるという見方ができる。一方で、助成の割合や条件は公式ページに示されていない部分もあり、実際の活用には個別の確認が必要だ。
主な日程
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2025年6月20日(金) | SECBとJETRO Singaporeが3年間の協力覚書に署名(大阪・関西万博 シンガポール館) |
| 2026年5月20日(水) | STBがMICE観光収入などの最新数字を発表 |
| 2026年9月25日(金) | STBとメッセ・ベルリンが戦略提携の覚書を発表 |
| 2026年10月8日(木) | 東京の在日シンガポール大使館で「Japan-Singapore Business Gateway Night」(Aviation Wire報道) |
| 2026年11月28日(土)・29日(日) | SJ60 MUSUBI SINGAPORE-JAPAN FESTIVAL 2026(マリーナベイ・サンズ) |
参考
STB:Singapore Raises the Bar for Global Business Events(2026年5月20日)
STB:SECBとJETRO Singaporeの協力覚書(2025年6月20日)
JETRO:シンガポールMICE誘致の協力覚書(2025年6月)
STB:メッセ・ベルリンとの戦略的パートナーシップ(2026年9月25日)
Visit Singapore MICE:Business Events in Singapore(BEiS)
トラベルボイス:JTB、シンガポールへのMICE送客を強化(2026年3月)
ANA:シンガポール航空とのジョイントベンチャー
シンガポール航空:SQ/NH JV
日本・シンガポール外交関係樹立60周年(SJ60)
Aviation Wire:ANAとシンガポール航空、行き帰りで使い分け 国交60年でMICE誘致強化(2026年10月9日)




















