名刺が受注につながらない展示会を変える——来場者3タイプ別アプローチとAI動画活用の最前線|森田光一さん(モード・マーケティング株式会社)

名刺が受注につながらない展示会を変える——来場者3タイプ別アプローチとAI動画活用の最前線|森田光一さん(モード・マーケティング株式会社)
「展示会では名刺が集まる。でも受注につながらない」——出展経験のある企業なら、一度は直面したことのある悩みではないだろうか。名刺枚数という指標に縛られてきた展示会の常識を、根本から問い直しているのがモード・マーケティング株式会社代表の森田光一さんだ。大手企業向け営業研修で磨いた知見をもとに、展示会特化の接客メソッドを構築してきた森田さんに、来場者タイプ別のアプローチと、AI動画を活用した新しい展示会マーケティングの可能性を伺った。
展示会の成功ノウハウは、どう変遷してきたか
森田さんが提唱するのは、来場者を大きく3つに分類するフレームワークだ。「顕在ニーズ・今必要」「顕在ニーズ・まだ先」「潜在ニーズ・まだ先」、そして「関係なし」の4区分である。特定のサービスをすぐに導入したい「今必要」層は、ブースに来た段階で商談化しやすい。一方で数は多いが取りこぼしやすいのが、課題はあるが予算や検討時期が先の来場者だ。さらに「潜在ニーズ・まだ先」の層は、決裁権や影響力を持ちながらも、何をすべきか優先順位が定まっていない状態にある。
展示会の出展成果を上げるためには、この分類ごとに対話の設計を変えることが不可欠だと森田さんは語る。全員に同じトークをしていては、目の前にいる潜在的な商談相手を逃し続けることになる。
「まだ先」の来場者を商談につなげる接客術
森田さんが特に力を入れるのが、「顕在ニーズ・まだ先」と「潜在ニーズ・まだ先」の来場者への対応だ。上司から情報収集を命じられて来た担当者、課題は感じているが優先順位が決まっていない管理職——そうした来場者に対しては、ブースで製品を説明するよりも先に、「課題の重要性」と「優先して取り組む理由」を気づかせることが鍵になる。
「展示会後に商談になる来場者のほとんどは、『今すぐ必要』な人ではありません。ニーズはあるけれど動けていない層をどう動かすか。そこに接客スキルの本質があります」
大手企業向け営業研修で積み上げてきた「啓蒙型」のアプローチを展示会ブースに持ち込んだことで、名刺の枚数ではなく商談の質と数を高める独自のメソッドが生まれた。来場者が抱える課題の優先順位を、対話を通じて整理していく。その結果として「展示会後に連絡してもよいですか」という言葉を自然に引き出す流れを設計するのが、森田さんの接客設計の核心だ。
差別化が難しい展示会で、何が勝負を分けるか
近年の展示会では、同カテゴリーの出展企業が増え、来場者から見た差別化が一層難しくなっている。同じようなブースデザイン、似通ったキャッチコピー——その中で来場者の「認識を変えること(啓蒙)」こそが重要だ、と森田さんは断言する。
この課題に対して森田さんが提示するのが、展示会成果を支える3つの柱だ。ひとつ目は「成功事例」——具体的な導入効果を来場者にイメージさせること。ふたつ目は「接客スキル」——来場者のタイプを見極め、それぞれに合った対話をする力。そしてみっつ目が「AI動画」だ。ブースに人員を張り続けられない時間帯や、スタッフの説明にばらつきが出やすい場面をAI動画でカバーし、来場者の興味喚起と情報提供を自動化する。
「AIの活用、マーケの高度化、ブランディングと独自の専門性——この3つが重なるところに、今の展示会で勝てる出展者の姿があると思っています」
「AI動画×展示会」が変える集客・商談創出のかたち
「AI動画×展示会」は、森田さんが近年特に注目する領域だ。来場者がブースに立ち寄った瞬間から、AI動画が製品の世界観や成功事例を端的に伝え、スタッフとの対話に入りやすい状態をつくる。従来、属人的なスキルに依存してきた「最初の30秒」を設計できるツールとして、展示会の現場での活用が広がりつつある。
さらに将来的には、来場者が動画を見ている様子や反応をデータとして蓄積し、ブース運営の改善サイクルに組み込む可能性も視野に入る。展示会マーケティングに「再現性」と「改善性」をもたらすAI動画の活用は、まだ黎明期にある。だからこそ早期に取り組む出展者が、数年後の差をつくると森田さんは語る。
名刺を集めることから、商談を設計することへ。展示会の目的を問い直すきっかけとして、今回の対話はイベント・展示会に携わるすべての方に届くヒントに満ちていた。
2015年9月、モード・マーケティング株式会社を設立。「展示会で名刺は集まるのに、受注につながらない」という企業の課題を解決する展示会コンサルティングを展開。大手企業向け営業研修で培った知見を活かし、展示会に特化した独自の接客ノウハウを構築。特に、ニーズはあるものの検討時期が先の来場者に対して、課題の重要性や検討の優先順位を明確にし、展示会後の商談や具体的なアクションにつなげる接客術を強みとしている。近年は「AI動画×展示会」の可能性に着目し、来場者の興味喚起から商談創出まで、新たな展示会マーケティングのあり方を追求している。
| 来場者タイプ | 特徴・状況 |
|---|---|
| 顕在ニーズ/今必要 | 特定のサービスを探している・比較したい・価格や専門性が知りたい |
| 顕在ニーズ/まだ先 | 課題はあるが予算がついていない・上司から情報収集を指示されている |
| 潜在ニーズ/まだ先 | 決裁権や影響力があるが優先順位が未定・何をすべきか悩んでいる |
| 関係なし | 新人の勉強目的・競合調査・営業目的・決裁に全く関与しない |
コースケ・よーこのミュートを解除 第264回(2026年10月16日配信)
MC:コウスケ(ヒラヤマ コウスケ=イベントレジスト株式会社 代表取締役 CEO)/よーこ(樋口 陽子=月刊イベントマーケティング 編集長)
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