札幌市、新MICE施設の基本計画案を公表 事業費597億円、地下1階で中島公園駅と接続
- 2026/10/7
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- MICE施設, 新MICE施設整備計画, 札幌コンベンションセンター, 札幌市

札幌市、新MICE施設の基本計画案を公表 事業費597億円、地下1階で中島公園駅と接続
札幌市は、中島公園に隣接する敷地に整備を計画している新MICE施設について、「(仮称)新MICE施設整備基本計画(案)」を取りまとめ、10月6日に公表した。令和8年第3回定例会の経済観光委員会への報告資料として、市の公式サイトで概要版と本編が公開されている。概算整備事業費は税込みで約597億円(建物整備費約492億円、土地取得費約105億円)。2025年9月に示した基本方針の592億円から5億円増えた。地下鉄南北線の中島公園駅とは地下1階で接続し、2033年度中の供用開始を目指す。
1階に多目的ホール、4階にメインホール
延べ約3万8,400㎡のモデルプラン
整備予定地は中央区南10条西3丁目で、敷地面積は約12,600㎡。商業地域で、法定容積率は400%、高さは60mの高度地区にあたる。隣接する札幌パークホテルの建て替え後の新ホテルとは、施設を接続して一体的に利用できるようにする方針だ。
計画案が示したモデルプランでは、施設総面積は約38,400㎡。内訳は、ホールと会議室の合計が約8,600㎡(メインホール約2,000㎡、多目的ホール約3,200㎡、会議室15室で約3,400㎡)、共用部(ホワイエ、エントランスなど)が約10,400㎡、駐車場・車寄せが約5,400㎡、バックヤード(倉庫、機械室、控室など)が約14,000㎡となっている。この面積構成は2025年9月の基本方針から変わっていない。
各階の構成を見ると、1階には展示やイベント、中規模のコンサート、大規模なインセンティブツアーにも使える3,200㎡の多目的ホールを置く。会議室は2階から5階に分散して配置し、大規模学会で想定される多数の分科会やバンケットを同時に開けるよう、さまざまな大きさで分割利用ができる計画とした。メインホールは4階で、学会やセミナー、企業会議、インセンティブツアーのほか、比較的小規模なコンサートやディナーショー、パブリックビューイングにも対応することを検討する。可能な限り天井高を確保し、大型の壁面LEDビジョンや可動式LEDビジョンの導入も検討するという。

地下鉄との接続は、今回の計画案の大きな柱の一つだ。中島公園駅とは地下1階で接続し、MICE参加者は主に地下鉄など公共交通機関で来場することを想定している。このため、メインエントランスとホワイエは歩行者が多く集まる敷地の西側に置き、公園東通線からの車両の進入を想定した車寄せや荷捌きスペースは東側に配置する。歩行者と車両の動線を分ける考え方である。
地域への開放にも配慮している。敷地内には東西を貫通する公共通路を設け、東側街区との間には空中歩廊などでの接続を検討する。中島公園駅1番出口の周辺には公共駐輪場を設ける。計画案は、災害時の防災拠点としての位置づけも掲げた。環境面では、ZEB Ready(再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量を50%以上削減した建築物)相当以上の性能を目指すとしている。

周辺道路への影響も検証している。最大規模の催事として5,000人規模の学会と3,500人規模のコンサートを想定し、平日と休日の将来交通量を算出したところ、周辺交差点などで渋滞は発生しない見込みだという。一方、自動車交通の需要に対して施設内の駐車場台数が不足することも予想されるため、公共交通の利用促進など運営面での対策が必要だと整理した。

597億円の中身と、駅改良費の扱い
事業費は、基本方針で建物整備費約487億円、土地取得費約105億円の計約592億円としていた。今回の計画案では、直近の資材費や労務費の上昇、ZEB化にかかる費用を考慮し、建物整備費を約492億円に見直した。土地取得費は約105億円のままで、令和6年10月時点の不動産鑑定評価額を基にしている。実際の売買金額は、契約直前に取得する鑑定評価額で決まる。
数字を比べる際に注意が必要なのは、地下鉄駅の改良費の扱いである。計画案によると、基本方針では地下鉄駅との接続にかかる費用と、駅の改良(バリアフリー化など)にかかる費用の2つを見込んでおり、このうち駅の改良費は約24億円だった。計画案は、駅の改良が新MICE施設の利用者以外の観光客や地域住民の利便性向上にも広く寄与すること、今後のまちづくりの方向性によって必要な改良の内容が変わる可能性があることを理由に、この駅改良費を事業費に含めない整理とした。つまり、592億円と597億円は同じ範囲を比べた数字ではない。
この計画は、これまでも何度か姿を変えてきた。月刊イベントマーケティングが2021年1月に報じた事業延期の発表時点では、延べ3万2,400㎡、事業費341億円の計画だった。当時の記事と見比べると、施設規模は約3万8,400㎡に拡大し、事業費は大きく膨らんでいる。

運営収支は年2.8億円の黒字を見込む
経済波及効果は年563億円
年間の運営収支(税抜)は、収入が約9.2億円(利用料金収入、備品使用料、駐車場収入)、支出が約6.4億円(人件費、物件費)で、約2.8億円の黒字を見込む。基本方針では収入約10.6億円、支出約8.3億円で収支は約2.2億円だったため、収入・支出とも金額は小さくなったが、黒字額は約6,000万円増えた。事業者の公募にあたっては、物価変動や市場動向を踏まえて改めて見直すとしている。
この試算の前提となる想定稼働率は、メインホールが年300日で83%、多目的ホールが年274日で76%、会議室は平均で年192日・49%(大会議室5室が54%、中会議室4室が38%、小会議室6室が55%)。需要は、札幌コンベンションセンターで開催されてきた催事のうち海外・道外からの参加者が多いもの、希望日が重なって開けなかった催事、学会向けアンケートから算出した潜在需要、将来の増加分、札幌パークホテルで開かれていたバンケット系催事を参考にした需要を積み上げて見込んだ。新施設の開業後、札幌コンベンションセンターの稼働率は約2割減ると想定している。
市内への経済波及効果は、観光庁の「MICE開催による経済波及効果測定のための簡易測定モデル(Ver.4)」で試算し、年間約563億円とした。基本方針では約492億円だった。
BT+コンセッション方式を選択
札幌コンベンションセンターとは一体運営
事業手法については、従来方式、DBO、PFIのBTO、BT+コンセッションなどを比較した。財政負担額を現在価値に換算して従来方式と比べたところ、VFM(Value for Money)はDBOで5.2%、BTOとBT+コンセッションでは5.8%となり、後者では財政負担を約40億円削減できる試算になった。定性面では、運営権を付与するコンセッション方式は民間事業者に収益拡大のインセンティブが働き、利用者サービスや施設の魅力向上につながる提案が期待できると評価し、BT+コンセッション方式での事業化を進めることにした。事業期間は15年から20年程度で、引き続き検討する。なお市場調査では、複数の民間事業者から参画意欲を確認したという。
運営面では、札幌コンベンションセンターとの一体運営を前提とする。営業・誘致活動や利用調整、バックオフィス機能を共通化・集約できるため、人件費は年間約4,800万円程度削減できると試算した。このほか、施設間の利用調整の最適化、大規模MICEでの両施設の一体的な活用、営業窓口の一元化といった効果も見込む。
なぜ新施設が必要か 国際会議は国内4位でも大規模会議に弱み
計画案が新施設の必要性として挙げるのは、大規模会議の開催が難しい現状だ。札幌市内には大規模な会議を分割せずに一体で開ける施設がなく、市内中心部のホテルや公共施設を複数併用して開催するため、主催者の経費負担が増え、参加者の利便性も下がっているという。その結果、現在は小・中規模の国際会議が中心になっている。
数字でも、その傾向は表れている。2019年の国際会議開催件数は札幌市が75件で、参加者3,000人以上は2件(2.7%)だった。札幌市を除くグローバルMICE都市では1,779件のうち92件(5.2%)で、大規模会議の比率は札幌のほうが低い。2025年の国際会議開催件数は、札幌市が24件で国内4位(東京119件、京都市53件、大阪市35件に次ぐ)となっている。誘致力はあるが、施設面の制約が大規模会議の誘致を妨げているという整理である。
施設規模は、概ね3,000人以上が参加する国内の主要な151学会の過去の開催状況を調べ、5,000人規模までの学会の半数以上を単館で開催できる水準として設定した。MICE関係者へのアンケートでは、札幌市が新たなMICE施設を整備した場合の開催意向について、学会の回答者の約7割が関心があると答えたという。
スケジュールと今後
想定スケジュールは、令和10年度(2028年度)中に事業契約を締結し、令和11年度(2029年度)に設計業務に着手、令和15年度(2033年度)中の供用開始を目指すというもの。市の新MICE施設整備のページによると、市は今回の計画案についてパブリックコメントを実施したうえで、改めて基本計画の策定を目指すとしている。
展示会・イベント業界の視点で見ると、今回の施設は、展示会そのものを大規模に開催する展示場というより、学会や国際会議に展示を併設する「会議・展示同時開催」を想定した施設という色合いが濃い。1階の多目的ホールは3,200㎡で、展示だけでなく、コンサートやインセンティブツアーなどにも使う前提だ。会議室とホールを一つの建物に収めることで、主催者にとっては会場分散による負担を減らせる利点がある。事業費がたびたび膨らんできた経緯もあり、今後は市議会での議論や、パブリックコメントでの市民の意見がどう計画に反映されるかが注目される。
基本方針と基本計画(案)の比較
| 項目 | 基本方針(2025年9月) | 基本計画(案)(2026年10月) |
|---|---|---|
| 建物整備費 | 約487億円 | 約492億円 |
| 土地取得費 | 約105億円 | 約105億円 |
| 概算整備事業費(合計) | 約592億円 | 約597億円 |
| 地下鉄駅の改良費 | 約24億円を見込んでいた | 事業費に含めない整理 |
| 運営収支(年間) | 収入約10.6億円、支出約8.3億円、収支約2.2億円 | 収入約9.2億円、支出約6.4億円、収支約2.8億円 |
| 経済波及効果(年間) | 約492億円 | 約563億円 |
| 施設総面積 | 約38,400㎡ | 約38,400㎡ |
| 供用開始・完成の目標 | 2033年度 | 2033年度中 |
※基本方針時と基本計画(案)では、駅改良費の扱いが異なる。事業費の単純比較はできない。
出典(札幌市の公式資料)
(仮称)新MICE施設整備基本計画(札幌市)/基本計画(案)概要版(PDF)/基本計画(案)本編(PDF)/新MICE施設整備(札幌市)/新MICE施設整備基本方針 記者説明会資料(2025年9月8日、PDF)



















