第9回SXアワード サステナブルイベント協議会「SUSTAINAVI QUEST」が奨励賞 競合5社の共創による“学びの場”づくりに評価

SXアワード奨励賞、サステナブルイベント協議会が受賞

一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)は2026年9月29日、イイノホール&カンファレンスセンター(東京都千代田区)で「第9回SXアワード」表彰式を開催した。素材、建設、食品、エネルギーなど多様な産業分野から全20事例が受賞するなか、イベント業界からは、サステナブルイベント協議会(丹青社・電通ライブ・乃村工藝社・博報堂プロダクツ・ムラヤマ)による実践型ワークショップ「SUSTAINAVI QUEST」が奨励賞を受賞した。

SX(サステナビリティトランスフォーメーション)の実装を顕彰

SXアワードは、サステナビリティトランスフォーメーション(SX)の実現に寄与することを目的とした表彰制度だ。カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミーへの転換、DX、ESG対応など社会経済を取り巻く環境が大きく変わるなか、環境配慮をはじめSXに資する製品・サービス・技術・ソリューション・ビジネスモデルなどの「サステナブルデザイン」を表彰し、そのさらなる開発・普及を促すことをねらいとしている。

第9回には57件の応募があった。審査委員会(委員長:梅田靖・東京大学大学院教授)と選考委員会(委員長:醍醐市朗・東京大学先端科学技術研究センター教授)による審査の結果、大臣賞5件、優秀賞5件、奨励賞10件の計20事例が選ばれた。

6省庁が後援、産業分野を横断して表彰

同アワードの特徴は、関係省庁が横断的に関わっている点にある。後援には財務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、金融庁の6省庁が名を連ね、最上位の賞として財務大臣賞、農林水産大臣賞、経済産業大臣賞、国土交通大臣賞、環境大臣賞の5つの大臣賞が設けられている。受賞事例も酒造・畜産から地域金融、アパレル、建設、電池産業まで幅広く、特定業界にとどまらず、産業全体のSXを後押しする設計となっている。

大臣賞5事例

財務大臣賞:白鶴酒造株式会社「酒蔵×畜産 地域企業連携による『サケ炭』アップサイクルモデル」
清酒製造で発生し、従来は産業廃棄物として処理されてきた使用後の活性炭を、牛の飼料「サケ炭」としてアップサイクル。サケ炭を与えた牛の糞を堆肥化して自社農業法人の酒米圃場に施用し、最終的に酒造りへ戻る循環をつくっている。近隣酒蔵の活性炭の飼料化の仲介も始め、「灘五郷」全体での循環を目指す。

農林水産大臣賞:株式会社肥後銀行「地域ロス削減プラットフォーム『かせする』を活用したサーキュラーエコノミーの実現」
売れ残り食品や在庫、空席など地域で生じる未活用資源を再流通させるプラットフォーム。2026年3月末時点でユーザー約2.5万人、加盟店約480店。予約販売機能による過剰生産の抑制に加え、廃棄されていた資源の収益化で地域内の経済循環も促している。

経済産業大臣賞:株式会社フクル「アパレルのエコデザインサービスFiTO[フィト]」
縫製の自動見積りによる適量生産とリペアサービスで、アパレルの過剰生産・廃棄を抑制する。森林由来カーボンクレジットを活用したCO2排出実質ゼロの衣服生産や、二次元コードによるデジタルプロダクトパスポート(DPP)での製品情報開示にも取り組む。

国土交通大臣賞:大和リース株式会社「リース建築が実現する建設業のサーキュラーエコノミー変革モデル」
建物を解体後に整備して繰り返し使うリース建築を基盤に、外壁パネルのアップサイクル、アルミ建材の水平リサイクル、樹脂部材の再資源化を組み合わせた。建物と建材の双方を循環させ、災害時の迅速な供給といった社会的価値も生んでいる。

環境大臣賞:プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社・日本軽金属株式会社・冨士発條株式会社・パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社「4社協働で実装したクローズドループ型資源循環 -電池産業におけるアルミ水平リサイクルによるSXの実現-」
電池セル用部品の製造工程で出るアルミスクラップを、同じ部品用途へ戻す水平リサイクルを4社の役割分担で社会実装。品質要求の厳しい電池用途で循環を成立させ、CO2削減をコスト削減や安定調達という事業成果に結びつけた。

「第 9 回 SX アワード」大臣賞を受賞した5事例の受賞者

「第 9 回 SX アワード」優秀賞を受賞した5事例の受賞者

事例発表、ポスターセッション、交流会も

当日は15時からの表彰式に続き、大臣賞受賞者による事例発表が行われた。その後、全受賞事例のパネルが並ぶポスターセッションが開かれ、来場者は各社の取材対応者から取り組みの背景や成果、今後の展開について直接話を聞いた。19時までの交流会では、業種を越えた受賞企業・団体と参加者の間で知見の共有が図られた。

全受賞事例ポスターセッションも行われた

編集部注目:イベント業界から「SUSTAINAVI QUEST」が奨励賞

イベントマーケティング編集部が特に注目したのが、奨励賞を受賞したサステナブルイベント協議会の「SUSTAINAVI QUEST(サステナビクエスト)」だ。

同協議会は、丹青社、電通ライブ、乃村工藝社、博報堂プロダクツ、ムラヤマの5社が、競合関係の垣根を越え、イベント業界のサステナビリティ(持続可能性)を促進し、業界全体のリテラシー向上を目指して2023年10月に発足した団体。「SUSTAINAVI QUEST」は同協議会が提供する実践型ワークショップで、参加者は「人類万博」という架空のイベントを、環境に配慮したイベントへと書き換えていく。架空の博覧会を報じる新聞風の資料「SUSTAINAVI TIMES」やカード型のツールを使用して、ゲーム感覚でイベントの企画・運営の判断を体験できる。協議会は今後、より多くのステークホルダーへ普及させることで、クライアントの意識変容と持続可能なイベント産業づくりにつなげることを目指している。

審査委員会の講評では、複数企業が連携する教育・体験型プログラムを通じてイベント業界におけるサステナビリティの普及と行動変容を促している点が評価された。特に、競合関係にある企業同士が業界横断で価値創出に取り組んでいる点を大きな特徴として挙げている。また、架空のイベントを題材に環境配慮型イベントの企画・運営を学ぶ仕組みが、参加者の理解促進と実践的な気づきにつながっていることにも言及。個社の取り組みにとどまらない「共創モデル」として、イベント業界全体の変革を牽引することへの期待が示された。

「第 9 回 SX アワード」奨励賞を受賞したサステナブルイベント協議会

製品・技術と並んで評価された“行動変容の仕組み”

全20の受賞事例を見ると、その多くは素材、製品、建築、エネルギー、認証制度などの領域で、イベント分野からの受賞はSUSTAINAVI QUESTのみだった。6省庁が後援する産業横断型の表彰制度で、イベント分野の取り組みが評価されたことの意義は小さくない。

注目したいのは、評価の対象が「サステナブルなイベントそのもの」ではなく、「サステナブルなイベントをつくれる人を増やす仕組み」である点だ。イベントの環境負荷は、会場、装飾、ブース、印刷物、輸送など、発注者と制作会社、施工会社、会場といった多くの関係者の判断の積み重ねで決まる。一社が努力しても、発注段階で仕様が決まっていれば変えられる範囲は限られる。だからこそ、発注側であるクライアントの意識変容やイベントに来場する参加者など、ステークホルダー全体への普及を踏まえ、業界の主要プレーヤーが共通の“教材”を持つことに意義がある。

企業のマーケティング・ブランディング担当者やサステナビリティ担当者にとっては、自社のイベントや展示会出展を見直す際の共通言語を得る機会となり、空間デザイナーやブース企画・運営の担当者にとっては、クライアントとの対話の起点となり得る取り組みである。

総評:多様な主体との協働が、SXを前に進める

審査委員長の梅田靖氏は全体講評で、今年度の受賞案件について、技術開発そのものを目的とせず、環境価値と経済合理性を結びつけ、循環経済を持続可能なビジネスとして成立させている点に今後の産業社会への重要な示唆があると述べた。そのうえで、環境・社会・経済の価値を統合し、多様な主体との協働で未来を切り開く姿勢を「まさにSXを体現する姿勢」と評した。

この視点は、イベントマーケティングの領域にもそのまま当てはまる。イベントは、企業、制作会社、会場、来場者など多様な主体が一堂に会する場。環境配慮を「コスト」ではなく、ブランド価値や顧客との関係づくりにつながる「価値」として設計できるかどうか。競合5社が手を組んだSUSTAINAVI QUESTの受賞は、イベント業界のSXもまた、一社の努力ではなく協働によって進むことを示唆していた。

大臣賞(5件)
賞名 受賞企業・団体 受賞取組
財務大臣賞 白鶴酒造株式会社 酒蔵×畜産 地域企業連携による『サケ炭』アップサイクルモデル
農林水産大臣賞 株式会社肥後銀行 地域ロス削減プラットフォーム「かせする」を活用したサーキュラーエコノミーの実現
経済産業大臣賞 株式会社フクル アパレルのエコデザインサービスFiTO[フィト]
国土交通大臣賞 大和リース株式会社 リース建築が実現する建設業のサーキュラーエコノミー変革モデル
環境大臣賞 プライムプラネットエナジーアンドソリューションズ株式会社
日本軽金属株式会社
冨士発條株式会社
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社
4社協働で実装したクローズドループ型資源循環 ―電池産業におけるアルミ水平リサイクルによるSXの実現―
優秀賞(5件)
賞名 受賞企業・団体 受賞取組
優秀賞(審査委員会賞) 株式会社UACJ
東洋製罐株式会社
環境負荷を低減した次世代の飲料缶蓋「EcoEnd™」
優秀賞 AGC株式会社 捨てられてきたフッ素を、再資源化!“循環蛍石”から“Fluon® PTFE”へとフッ素国内循環の社会実装
優秀賞 大成建設株式会社 ~今ある建物をともに未来へ連れていく~「グリーン・リニューアルZEB」
優秀賞 川崎CNブランド等推進協議会 川崎CNブランド及び川崎メカニズム認証制度
優秀賞 キヤノン株式会社
帝人株式会社
パートナー共創で切り拓く 脱炭素時代の競争力
奨励賞(10件)
受賞企業・団体 受賞取組
NTN株式会社 移動型独立電源「N3 エヌキューブ」
リファインホールディングス株式会社 多様な加工性を有する汎用プラスチック樹脂のメリットを、自然素材のみで活かした100%バイオマス樹脂<RegeNature®>
株式会社竹中工務店 「うけいれる・つかう・ためる」マルチ水素ステーションと建物の連携による次世代エネルギーモデルの創出 ~建物の脱炭素化と地域の燃料供給拠点拡大を目指して~
フルハシEPO株式会社 静脈系・木質バイオマスのサーキュラーエコノミー事業と、国内資源活用型再エネ(木質バイオマス発電)によるカーボンニュートラルへの貢献
ネッスー株式会社 こどもふるさと便
株式会社あかりカンパニー 閉めても“明るい”、明るいのに“暑くない”自然光を活かした採光ブラインド「アカリナ」による、電気設備に依存しない快適・省エネ空間の創出
ブラザー工業株式会社 高耐久・循環素材・修理しやすさで環境貢献と経済性を追求 ビジネスインクジェットプリンタ
CKD株式会社 ClearE-Sheet
住友電工焼結合金株式会社 モータの資源安全保障にも貢献する、水平リサイクル可能な鉄心「圧粉磁心」
サステナブルイベント協議会
(株式会社丹青社・株式会社電通ライブ・株式会社乃村工藝社・株式会社博報堂プロダクツ・株式会社ムラヤマ)
SUSTAINAVI QUEST

出典:一般社団法人サステナブル経営推進機構「第9回SXアワード 審査結果」

樋口陽子 (MICE 研究所 イベントマーケティング 編集長)

樋口陽子月刊イベントマーケティング編集長

投稿者プロフィール

2003年に展示会の専門出版社に入社。12年編集業務に従事し、展示会ユーザーである出展者の立場に立った専門雑誌などを企画。​ 2015年に株式会社MICE研究所を共同創業。ビジネスイベント、体験型マーケティングを中心に主催者や企画者の声、制作の舞台裏を取材。​ 2016年から体験型マーケティングのカンファレンス「BACKSTAGE」を主催(3社共催)。​ 2020年5月からほぼ毎週、イベント・マーケティング関係者とのトーク形式のライブ配信を続けており、260回以上発信している。

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