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世界基準と日本流を合わせる アジア競技大会 ─GL events Japan
- 2026/8/12
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スポーツイベント特集:その熱、誰が仕掛けた -大会・都市・球場に学ぶ、熱狂のつくり方-
世界基準と日本流を合わせる アジア競技大会
─GL events Japan
開催まで50日を切った第20回アジア競技大会。プレステージパートナー(Tier1)であるGL eventsのグループ企業として、会場内設営を含む会場運営(オーバーレイ業務)を担うGL events JapanのThomas Quemin(トマ・クマン)さんに現状を聞いた。
組織委員会から「イベント・デリバリー・エンティティ(EDE)」に任命されたGL eventsは、アジア競技大会とアジアパラ競技大会を合わせて56会場の設計・計画・設営を担う。準備段階で「もっとも重視したのは、高い安全性の実現」とGL events Japanの代表兼総括Thomas Quemin(トマ・クマン)さんは語る。
建設業法をはじめとする日本の厳格なレギュレーションに準拠するため、他国とは異なる運営・設営方法を採用した。資材保管用コンテナに構造補強の鋼板を溶接するといった工夫も必要だった。欧州では仮設インフラ専用の規格があるのに対し、日本では大会期間中の使用を想定した仮設のテントスタンドであっても、恒久建築物と同一構造計画・建築確認・施工図の提出が求められる。
パイオニア精神と創意工夫により、国際競技連盟や放送局、報道関係者など多数のステークホルダーが関わる国際大会特有のチャレンジに対しても、過去の五輪やワールドカップの経験を活かしたプラグマティックな判断で最適なソリューションを提供している。「制度の壁と、多数の関係者を束ねる複雑さ。この二つを同時にマネジメントすることが、私たちの強みです」とQuemin さんは語る。
56会場での一貫性確保とパートナーとの協力体制
仮設構造物、電力供給、照明・音響・放送、会場運営、プレス対応、観客サービス、表彰式、飲食提供、清掃・廃棄、そしてこれら全体を貫くロジスティクス。これら10の領域を、同社は組織委員会と分担しながら統括する。計画立案から調達、国内外のロジスティクス、設営・納品まで社内の専門知識を持つ女性・男性スタッフや地元のサプライヤーとともに一気通貫で押えることがGL eventsの強みだが、56会場の備品の量をマネジメントするうえで不可欠なのが業務の一貫性だ。
そのため大会運営を単体で規定するオペレーショナル・プランを策定。責任分担マトリクスにより、あらゆる機能領域で「誰が何を行うか」を細かく定義する。
これらを現場で実現するのが、パートナー企業との協業体制だ。ある大手レンタル会社は13会場で仮設インフラ設営の大部分を担い、機材レンタル面も支援。また、ある人材会社は大会期間中に必要な1,300名超のスタッフのうち500名超を提供する主要パートナーとなる。
専門性の異なる複数のパートナーを同じ運営リズムに乗せ、どのタイミングで誰が意思決定するのかを明確にすること。一見地味な調整業務の積み重ねこそが世界大会運営の核心であり、GL eventsが日本で10年以上培ってきた対応力だ。
世界大会が地域・企業にもたらす価値とレガシー(大会後の活用)
Quemin さんは国際的なスポーツイベントのトレンド、またイノベーションについて、2024年のパリ・オリンピックのレガシーを参考例として説明する。多くの会場は組み立て・解体が可能な構造で設計され、大会終了後はイベント用に転用・売却された。仮設ではあっても、地域にとって長期的な視点をもった投資となったという。
今回も恒久的な建造物は名古屋・愛知に残るだろう。しかし、大会運営を通じて構築された”制体”や”知見”は、地域が主体となって国際イベントを企画・運営する能力の”土台”となる。次の大規模イベントに転用可能な”見えないインフラ”であり、真のレガシーとなる。
国際スポーツイベントの意義としては、地域の認知度向上と国どうしの結びつきも挙げられる。愛知・名古屋の魅力を発見し、実際に足を運ぶきっかけになること自体が、大会が地域にもたらす無形の価値だ。観光やビジネス、文化交流という形で長く波及効果が持続する、ソフト面のレガシーにこそ、大会が生み出す本当の価値が凝縮されている。

メイン会場となる名古屋
市瑞穂公園陸上競技場
令和8 年1 月撮影
機材一元管理で持続可能性 熱量や感動の体験設計
GL eventsは、DX、サステナビリティ、安全対策、観客体験など必要性の高い分野に優先順位をつけ、予算とリソースを集中投資する。サステナビリティの観点で新規調達より既存資材の利用を進める。そのため資材の所在をリアルタイムで把握できる在庫一元管理システムを構築した。計画期間内の短縮とコスト削減に直結するDX投資だ。
安全対策や電源供給のような”止められない”領域については、優先すべきものは明確だ。大会用に安定した電力を供給するため、バックアップ用意を常に信頼性を高める。特に生中継向けにはクリティカルパワー(重要電源)も確保する。観客体験については、その場でしか味わえない熱量や感動を届けるだけでなく、チケットを買った瞬間から会場までの時間に至るまで、すべてを「体験」として設計・計画すべきだ、と語る。
成功の測り方がイベントの本質を高める
イベントの成功をどう測るか。チケット販売実績や投資対効果は大きな指標だ。しかしQuemin さんが重視するのは、数値だけでは測れない主観的なものの、「アジア競技大会は何よりもまず選手と観客の満足のためにある。開会式の熱気や勝利の瞬間を肌で感じる選手と観客の姿、満足こそが大会が本当に何ものかを映す鑑だ。そして、選手、観客、関係者がどう感じたか。を総ね、成功を測りたい」と語る。そうした主観的な成功にまで責任を持とうとする姿勢こそが、イベント会社に求められる本当の役割なのかもしれない。
Quemin さんは、「現地のホスピタリティ、地域のネットワーク、そして地元のサプライヤーなしには、この大会は実現しません。都市全体、私たちのクライアント、そして現場で働いてくださるスタッフに至るまで、あらゆるネットワークの信頼に支えられています」と述べた。
第20回アジア競技大会の成功は、最終的にはチケット販売実績や経済効果といった数字で語られるだろう。しかし、その数字の裏側にある選手や観客の生の声や、この大会が本当に成し遂げたものが刻まれているはずだ。数値と主観、外形と本質──その両方に目を配ることこそ、大会をより深く理解するための鍵になるだろう。
※紙面下段の広告は第20回アジア競技大会とは関係ありません。

Thomas Quemin さん
GL events Japan 株式会社
Managing Director













