230項目をどう「自分ごと化」する? ジールアソシエイツに学ぶ、現場発サステナブルチェックリストの作り方(2)
- 2026/9/17
- 事例

7月30日に行われたサステナブルチェックリスト活用プロジェクトの経緯と模擬企画会議の様子をレポートしてきたが、ここからは、模擬企画会議を視察したJACEサステナビリティ委員会メンバーによる意見交換会のようすを紹介する。
6. JACEサステナビリティ委員会との意見交換
模擬企画会議に続き、JACEサステナビリティ委員会のメンバーを交えた意見交換会が行われた。
■JACEサステナビリティ委員会参加メンバー(※順不同)
– 越川延明さん(株式会社セレスポ)
– 松本秀之さん(株式会社フロンティアインターナショナル)
– 照井秀浩さん(株式会社ジールアソシエイツ)
– 竹嶋理恵さん(株式会社電通)
– 森下慎一さん(株式会社東急エージェンシー)
– 高森雅浩さん(株式会社乃村工藝社)
– 村松加奈江さん(株式会社博展)

JACEサステナビリティ委員会として、(写真左から)越川さん、村松さん、竹嶋さん、森下さん、高森さん、松本さんから模擬企画会議を受けてのコメントがあった
「自分ごと化」の度合いが企業の背中を押す
株式会社セレスポの越川延明さんは、まず今回の取り組み全体を高く評価した。
「取り組む時に一番大事なのは、納得感を持って始められることと、続けられることだと思います。最初の一歩として、皆さんが活用できる形ができたというのは、一番大きいところですよね。50項目という数字も、使っていく中で60になるのか70になるのか、あるいは全く違う50になるのか――そこは運用しながら調整していけばいいのじゃないでしょうか」(越川さん)
さらに越川さんは、各社が「自分ごと化」の度合いを共有し合うことの意義にも触れた。
「これは各社でやってほしいですね。自分ごとにどれくらいなっているか、アンケートを取ってみる。例えばB社でやっても大体50くらいでした、というのが分かれば、他社も勇気づけられると思うのです。逆に200個やっています、という会社があったら、それはそれですごいことですが。自社の状態に合わせてだいたい30〜50くらいに収まる、と分かれば、取り組む企業も増えるのじゃないでしょうか」(越川さん)

JACEサステナビリティ委員会の越川さんは今回のジールアソシエイツの取組みを「最初の一歩として納得感を持って進められていたことがよかった」とコメント
チェックリストを「ネタ帳」に――カード化のアイデア
意見交換会では、株式会社フロンティアインターナショナルの松本秀之さんからチェックリストをそのままの形で見せるのではなく、カード化するアイデアも出た。
「50項目をずらっと並べても、正直見えづらいんですよね。カルタのように1枚1枚カードにしておいて、打ち合わせの時にパッと広げておく。そうすれば『これ、いけるんじゃない』という会話のきっかけになる。チェックリストというと、チェックして終わってしまいがちですが、その先――企画のアイデアの元ネタとして使ってもらう方が、本来の狙いに近いと思います」(松本さん)
また、今回の議論を踏まえて、松本さんは、2つの視点を整理した。
「今日お聞きして、大きく2つの新しいサステナブルな視点があると感じました。一つは、ブレストしながらアイデアを作っていくという意味で、サステナビリティを『楽しいもの』として企画に活かす視点。もう一つは、各所から届く定型的なサステナビリティ関連の質問票への対応など、定量・定性で分けて考える視点です。この2つを整理してアドバイスとして発信していくと、各社がもう少し気楽にリストと向き合えるようになるのではないかと思います」(松本さん)
各社への広がりへの期待
模擬企画会議に立ち会ったJACE側のメンバーからも、それぞれの視点から気づきや、この取り組みが他の会員企業にも広がることへの期待が語られた。

ジールアソシエイツによる模擬企画会議後にはJACEサステナビリティ委員会との意見交換が行われた
株式会社博展の村松加奈江さんは、項目そのものよりも、絞り込みの過程自体に価値があると指摘した。
「過程がすごく素晴らしいなと思いました。『ジールアソシエイツさんっぽさ』を皆さんで改めて捉え直すプロセスがすごくいい。項目そのものよりも、そのプロセスがあることで、今後の方針が立てやすくなるのではないでしょうか。実際にDE&Iの項目が多いということが見えてきたわけですが、これは今後検討されているというサステナビリティ方針の策定にも影響してくる可能性も気になりました」(村松さん)
株式会社電通の竹嶋理恵さんは、チェックリストが企画のアイデア出しの起点になっていた点を評価した。
「『こういう項目があるよね』『こういうカテゴリーがあるよね』というところから、『うちだったらこれできるかも』『こういうやり方があるかも』とアイデアが生まれていく――チェックリストがそのアイデアの元ネタになっている感じがして、すごくいいなと思いました。チェックリストと言ってしまうと、チェックして終わってしまいがちですが、企画会議では、『こんなことできるんじゃない』というアイデアが先にある。チェックリストをブレストのネタとして使っていく、という使われ方をしていた気がします」(竹嶋さん)
株式会社乃村工藝社の高森雅浩さんも、「やらされ感」のない使い方に手応えを感じたという。
「模擬企画会議では、視点にハッとさせられた、というのが正直な感想です。チェックリストを使って項目をみながら、というのはどうしても『やらされている感』が出てしまう。それよりも、通常の企画の中で『あ、そういえばこうだよね』と掛け合いのように出てくる方がずっといい。今の企画を詰めていく中で、足りていないところに立ち返る、運営面はどうだっけ?と戻ってまた広がっていく――そういう使い方ができる。だからこそ、230項目のままではなく、50とか30に絞ってやる方がいいと改めて思いました」(高森さん)
株式会社東急エージェンシーの森下慎一さんは、広告会社ならではの視点から、絞り込みの意味を語った。
「これまではどちらかというと使いづらさを感じていたんです。今日のお話を伺って、企画で複数の選択肢が出た時に、それを絞り込んでいく根拠や、方向性を決める材料として使えるという気づきがありました。行動指針につなげていくというお話もありましたが、単に『取り組みやすいから』『すべきだから』ではなく、絞り込む過程そのものに『らしさ』が表れていく。それを将来の行動につなげる位置づけにされていたのが、すごくいい取り組みだと感じました」(森下さん)
照井さんは、この日の一連のセッションを次の言葉で締めくくった。
「本当に楽しかったです。メンバーとはこれで4、5回やっていますが、選ぶ作業自体、毎回楽しみながらやらせていただきました」(照井さん)
7. まとめ
230項目のチェックリストの中から無理なく始められることに絞り込んでいくプロセスは、最初の一歩を踏み出す上で非常に取り入れやすい方法だ。またこの過程で、DE&Iに関する取り組みの多さに気づいたという発見も、サステナビリティというフィルターを通して自社の強みを言語化することにつながった。
膨大な内容に向き合う必要性が、結果としてジールアソシエイツ社内のさまざまなポジション・年代の社員による共同作業を生み、多くの社員が「自分ごと化」しやすいチェックリストが完成したことも大きな成果といえる。このチェックリストが同社のパーパス“楽しいを創る”と連携することで、双方がさらに強固なものになっていくだろう。
今後、企画・実施案件で実績を積み重ねる中で、ジールアソシエイツのサステナビリティ指針はさらに整えられていく見込みだという。ガイドブックやチェックリストを作成した意図を正しく理解し、活用している好事例として、業界各社にもぜひ参考にしてほしい取り組みだ。

<関連資料>
イベント制作や企画立案で活用できるガイドブック・チェックリストは、下記リンクよりダウンロードできる。サステナビリティ推進の第一歩として、活用してみてはどうだろうか。
– 【リンク】イベント・MICE関係者のための使いやすいサステナビリティガイドブック
– 【リンク】サステナビリティイベント・MICEチェックリスト
– 【リンク】イベント活動プロセスにおける業界標準カーボンカリキュレーター「EVENT CARBON SIMULATOR」
■JACEサステナビリティ委員会参加メンバー プロフィール
越川延明さん(株式会社セレスポ)
サステナビリティ委員会委員長。2010年に「ISO20121:イベントの持続可能性に関するマネジメントシステム」の策定を機にサステナビリティを軸として組織づくり、人材育成、PRを担当。近年はダイバーシティに注力しており、LGBTQ+ハンドブックやダイバーシティ・イベント・カードを用いた研修など業界内外への普及・啓発にも取り組む。
松本秀之さん(株式会社フロンティアインターナショナル)
サステナビリティ委員会副委員長。フロンティアインターナショナルサステナブル委員会幹事として社内のサステナブル啓蒙を推進。
照井秀浩さん(株式会社ジールアソシエイツ)
長年、イベント・空間づくりの企画・クリエーティブ・制作に携わり、取締役として、クリエーティブ・制作など事業のアウトプット領域を管掌。
これまでの経験を活かし、サステナビリティを理念や目標にとどめず、イベント・空間づくりの企画や制作プロセスの中で実践できる形にすることを重視している。
社内の現状や課題を整理しながら、社員一人ひとりが企画段階から活用できる仕組みづくりや、自社らしいサステナビリティのあり方について、研鑽と実践を重ねている。
竹嶋理恵さん(株式会社電通)
電通においてサステナビリティコンサルティング室に所属。エグゼクティブ・プランニング・ディレクター。サステナビリティ起点での企業の戦略策定や事業変革、商品・サービス・プログラム開発、コミュニケーションなどを支援する。広告やメディア業界が提供するマーケティングソリューションの制作プロセスの脱炭素化にも取り組んでいる。
森下慎一さん(株式会社東急エージェンシー)
大型国際スポーツイベントの会場運営やファンゾーンの運営、大型商業施設の開業プロモーションなどを担当。
JACEでは2022年よりサステナビリティ委員会 委員。
高森雅浩さん(株式会社乃村工藝社)
大型博覧会や展示イベント・プロモーションの企画/設計/施工のマネジメントを担当。
JACEでは2026年よりサステナビリティ委員会 委員。
村松加奈江さん(株式会社博展)
博展にてサステナビリティ推進部 サステナブル経営推進室所属。資源循環型イベントの実装のため、社内の基盤整備や廃棄物量の削減等に取り組むほか、サステナビリティ人材の育成、DE&I推進も担当。JACEサステナビリティ委員会のほか、日本展示会協会のサステナビリティ推進委員会に所属し、業界横断のサステナビリティ推進にも取り組む。



















