元監獄が会議室に、伊プロチダ島の先進MICE事例-東京観光財団

元監獄が会議室に、伊プロチダ島の先進MICE事例-東京観光財団

公益財団法人東京観光財団内に設置されたサステナブルMICEサポートデスクは、アドバイザーの熊坂仁美氏によるイタリア・プロチダ島での国際シンポジウム参加レポートを発信した。2026年5月20日〜22日の3日間にわたり、イタリア・ナポリ州プロチダ島で開催された「SUM – Multidisciplinary Symposium on Circular Economy and Urban Mining(循環経済と都市鉱山に関する学際シンポジウム)」に参加した熊坂氏は、歴史的建造物を活用したユニークベニューや、地域文化・工芸と循環型経済の思想を組み合わせた演出など、日本のMICE運営にも示唆に富む事例を紹介している。

舞台はナポリ港から40分の小島 映画『イル・ポスティーノ』の地

プロチダ島はナポリ港から高速フェリーで約40分の距離にある、人口約1万人の小さな島。映画『イル・ポスティーノ』の舞台としても知られ、カラフルな漁村の風景が印象的な観光地でもある。同シンポジウムの参加者は「シンポジウム参加」が第一目的でありながら、島そのものを楽しむことも体験の重要な柱となっており、会期中は歴史的建物や地元レストランを使った社交イベントが毎晩開催されたという。

16世紀の修道院と元監獄がメイン会場 不便さの先にある「意義」

シンポジウムの会場として使用されたのは、島の歴史的建造物だ。開会式が行われたのは、断崖に立つ16世紀建造の修道院。しかし天井が高く音が響き、天窓からの光でスクリーンへの投影が見づらいという、現代の会議運営からすれば決して快適とはいえない環境だったという。メイン会場となったアヴァロス宮殿は、16世紀に建てられ1988年まで監獄として使用されていた建物で、こちらも音響・照明の難易度は高いものだったと熊坂氏は振り返る。

それでも「雰囲気は大変よく、島の歴史を感じ、窓からの眺望も楽しめた」という。そこに熊坂氏が感じ取ったのは、「自国イタリアの歴史を重んじ、参加者を通じて世界に発信したい」という考え方のもと、合理性よりも意義を優先するヨーロッパ的な価値観だ。会議の「使いやすさ」よりも「場所が持つ意味」を重視する運営の姿勢は、日本における画一的な会議室中心のMICE運営と一線を画すものだといえる。

装飾から備品まで地元の職人・アーティストが担う 廃棄サリーのアップサイクルバッグも

会場の装飾にも一貫したこだわりがあった。地元の伝統文化をモチーフに、地元の職人やアーティストを採用したものを使用。参加者に配布されたカンファレンスバッグは、フェアトレードのプロジェクトを通じて作られた、バングラデシュの廃棄サリーをアップサイクルしたものだった。そしてこれらの品々には「循環ストーリー」としてその背景が展示・説明されており、ノベルティ一つひとつが会議のテーマ「循環経済」と深く結びついた体験として設計されていた。

シンポジウムのテーマが「循環経済と都市鉱山」であることを考えると、会場選択から装飾・備品・社交イベントまで、すべての要素がコンセプトと有機的に連動している点は、MICEの体験設計という観点からも注目に値する。

「それが意義のあることだからやる」 信念が貫かれた運営

熊坂氏は今回の視察を振り返り、「その土地をリスペクトし、土地の人とつながり、物語を発信し、地域への経済効果も作っていくカンファレンス。運営が大変でも、参加者に不便をかけても、それが社会的・環境的に意義のあることだからやる。そんな信念が感じられる会議だった」と評している。こうした取り組みは、地域資源の活用方法や運営設計の工夫によって、日本国内のMICEにも応用が可能だという。

東京観光財団のサステナブルMICEサポートデスクが無料で相談を受付

東京観光財団(TCVB)では、都内でMICEを開催する主催者を対象に「サステナブルMICEサポートデスク」を設置し、環境配慮型MICEの導入・実践を無料でサポートしている。具体的には、サステナブルMICEの企画・運営に関する相談対応、アドバイザーによる助言、先進的な取り組み事例の紹介などを行っている。あわせて、持続可能なビジネスイベントの運営を行う主催者向けのガイドライン「TOKYO MICEサステナビリティガイドライン」の策定・公開、東京における会議・イベントのCO₂排出量を試算できる「Carbon Footprint Calculator for Business Events in Tokyo」の提供、国際会議参加者向けの東京SDGs体験コンテンツガイドの提供なども行っている。

サステナブルMICEの導入・実践を検討している主催者や関連事業者は、サポートデスクへの相談を活用できる(利用料金無料)。

機関名 サステナブルMICEサポートデスク(公益財団法人東京観光財団内)
TEL 03-5579-2663
メール sustainable_mice@tcvb.or.jp
受付時間 平日9:00〜17:45(土日祝・年末年始除く)
費用 無料
関連サイト ビジネスイベント東京 サステナブルMICEページ

出典:公益財団法人東京観光財団 サステナブルMICEサポートデスク ニュースレター(2026年)

 

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