eスポーツが「ゲーム」からグローバルビジネスへ──世界大会直前、日本経済大学の特別公開講座が問い掛けるもの

平岩康佑

eスポーツが「ゲーム」からグローバルビジネスへ──世界大会直前、日本経済大学の特別公開講座が問い掛けるもの

日本経済大学東京渋谷キャンパスが2026年6月25日、eスポーツキャスター・平岩康佑氏を迎えた特別公開講座「eスポーツビジネスの将来像」を開催する。平岩氏は2026年11月にサウジアラビア・リヤドで開催される世界大会「Esports Nations Cup 2026(ENC 2026)」の日本代表ナショナルチームマネージャー(団長)に就任しており、本講座はその世界大会直前のタイミングで実施される。講座では、単なる「ゲーム」の枠を超え、莫大な放映権やスポンサーシップ、国家戦略が絡み合う「巨大なグローバル・ビジネス」として急速に展開するeスポーツの最前線が語られる。イベント業界および教育現場におけるeスポーツの位置付けが、大きな転換点を迎えていることを示す企画である。

eスポーツが「産業」として認識される時代へ

eスポーツは、従来「ゲームの競技化」「ゲーマーのトーナメント」という限定的な認識で捉えられることが多かった。しかし、国連の支援、各国政府による国家戦略的な推進、大手メディアの放映権購入、多国籍企業によるスポンサーシップ投資といった動きが顕在化するにつれ、eスポーツは確実に「産業」として位置付けられつつある。

本講座のテーマ「eスポーツビジネスの将来像」という表現自体が、そうした転換を象徴している。「ビジネス」という用語が使用されることで、eスポーツが利潤追求の対象となり、国家戦略の一部として機能しながら、同時に個人のキャリア形成の対象となっていることが明確に打ち出されているのだ。

世界大会「ENC 2026」の意義

2026年11月にサウジアラビア・リヤドで開催される「Esports Nations Cup 2026」は、複数の国が国家代表として参加する国際大会だ。つまり、オリンピックやワールドカップと同じ構造の国家間競争が、eスポーツの領域でも展開されているということである。

平岩氏が「日本代表ナショナルチームマネージャー(団長)」に就任したという事実は、日本の eスポーツが「個別企業や個人プレイヤーの活動」の段階を超え、「国家戦略」の対象になったことを意味している。これは、eスポーツの産業化・国際化がどの段階にあるのかを示す、極めて重要なシグナルだ。

平岩康佑氏のキャリアが示すもの──「好きを仕事に」の現実

平岩氏は、朝日放送(ABCテレビ)でアナウンサーとして、プロ野球や女子プロゴルフ、高校野球などの実況を担当していた。つまり、従来型の「放送業界のエリート」というキャリアを有していたのである。

しかし、2018年に退社後、株式会社ODYSSEYを設立し、アナウンサーのマネジメントやコンサルティング事業を展開する傍らで、RAGEやCRカップなど日本最大級のeスポーツイベントで実況を担当するようになった。つまり、「放送局という組織に属する」という従来型のキャリアから、「eスポーツというニッシュながら成長領域を自ら開拓する」というキャリアへの転換を実現しているのだ。

本講座で「『好きを仕事に』を体現する平岩氏独自のキャリアプラン」が語られるということは、eスポーツが単なる「娯楽」ではなく、「職業選択肢としての現実性」を獲得したことを示している。従来、「ゲームを仕事にする」という選択肢は、社会的には不安定と見なされてきた。しかし、国家戦略・国際大会・業界の産業化という流れの中で、それが確実な職業として成立し始めているのだ。

教育機関がeスポーツを取り上げることの意味

日本経済大学のような教育機関が、特別公開講座の形でeスポーツをテーマに取り上げることは、象徴的な出来事である。これは、eスポーツが「学生が学ぶべき産業」「キャリア形成の対象」として、大学から公式に認識されたことを意味する。

講座の対象が「本学学生、および一般聴講者」とされていることも、注目される。つまり、大学内のクローズドな講座ではなく、「社会一般に向けた情報発信」として位置付けられているのだ。これは、eスポーツに関する理解が、大学内の限定的な学問的関心ではなく、社会全体での産業認識へと拡大していることを示す。

イベント業界への示唆

本講座が「会場リアル開催+限定生配信(予定)」という形式を採用していることも、現代的なイベント運営の特徴を示している。つまり、会場での直接体験と、オンライン配信による広範な参加者への情報提供が、同時に実現される仕掛けが構築されているのだ。

eスポーツ関連のイベント(RAGE、CRカップなど)では、すでに「会場での競技」と「オンラインでの視聴」が並立する運営形式が定着している。本講座は、そうしたeスポーツ業界の標準的なイベント運営形式を、教育機関での講座に応用した事例として機能している。

「ゲーム」から「グローバルビジネス」への概念転換

リリースで「単なる『ゲーム』の枠を超え、莫大な放映権やスポンサーシップ、国家戦略が絡み合う『巨大なグローバル・ビジネス』へと急速に変貌を遂げるeスポーツ」と述べられていることは、eスポーツ産業の転換点を示す極めて重要な指摘である。

「ゲーム」という語彙から「グローバルビジネス」への概念転換は、単なる言葉の置き換えではなく、社会的認識の根本的な変化を反映している。これまで「ゲーム産業」は、個人消費財としての「ゲームソフト」の販売が中心だった。しかし、eスポーツの産業化により、「競技の興行化」「放映権」「スポンサーシップ」「選手マネジメント」など、複雑な経済構造が形成されている。これは、音楽業界やスポーツ業界と同等の産業構造であり、国際的な資本フローを伴っている。

世界大会の位置付けの変化

eスポーツの世界大会が「国別代表による競技」という形式を採ることで、ゲーム産業内の個別イベントから「国家間競争」へと位置付けが変わった。これにより、eスポーツは:

第1に、「国家戦略」の対象となった。各国政府がeスポーツ産業育成に投資し、国際大会での成績を国家の国際的プレゼンスと結びつけるようになった。第2に、「多国籍企業の投資対象」となった。放映権やスポンサーシップの価値が、従来型のスポーツと同等レベルに達しつつある。第3に、「キャリア形成の正当な対象」となった。国家代表として参加する選手やマネージャーは、国家から公式に認定されたプロフェッショナルであり、その職業選択は社会的に正当性を持つようになったのだ。

日本のeスポーツシーン内での平岩氏の位置付け

平岩氏が「日本代表団長」に就任したという事実は、日本のeスポーツシーンが「個別イベントの集合」から「国家代表による国際競争」への段階に進んだことを意味している。また、その団長として、放送業界出身で、かつeスポーツイベントでの実況経験を持つ平岩氏が選ばれたことは、eスポーツ業界が「メディア戦略」「情報発信」「国際的プレゼンテーション」といった領域での高度な専門性を求めていることを示している。

つまり、eスポーツの国際化に伴い、単なる「強い選手」の集約ではなく、「メディアマネジメント」「国際的な対外発信」「ビジネス運営」を統合できるマネージャーの存在が、必須になったということだ。

イベント業界が注視すべき点

本講座が「メディアの皆様におかれましては、時節柄大変ご多忙中とは存じますが、注目を集めるeスポーツの最新情報をぜひご取材いただけますようご案内申し上げます」と述べていることは、eスポーツが確実に「報道価値のある産業」として認識されていることを示している。

これは、イベント業界にとって重要な示唆である。eスポーツイベントは、単なる「ゲーマーのための競技大会」ではなく、「メディアが報道すべき国際的・産業的意義を持つイベント」として位置付けられるようになったのだ。したがって、eスポーツイベント企画においては、「放映権」「メディア連携」「国際的な情報発信」といった、従来型のスポーツイベント運営と同等のマネジメントが必要になってくる。

「7月以降、スケジュールがタイト」という背景

メール本文で「平岩さまは7月以降、世界大会に向けてスケジュールがタイトとのことで、このタイミングで予定を頂きました」と述べられている。これは、単なる「スケジュール調整の都合」ではなく、eスポーツの国際大会開催まで約5ヶ月という期間の中で、日本代表団の準備がどの段階にあるのかを示唆している。

つまり、6月時点での講座開催は、「世界大会前の最終的な情報発信」「日本代表団の国内向けプレゼンテーション」「業界全体への認知拡大」という複数の目的を持つ、戦略的な企画である可能性が高い。

今後のeスポーツ業界を占う

本講座は、eスポーツ産業における転換点を示す象徴的なイベントといえる。「ゲーム」から「グローバルビジネス」への転換、個別の企業イベントから「国家戦略」への拡大、個人キャリアから「産業就職」への正当化。これらすべてが、本講座のテーマとゲスト講師の経歴に集約されているのだ。

eスポーツイベント業界は、今後、従来型のスポーツやエンターテイメント産業と同等の規模・複雑性・国際性を備えていくだろう。その過程で、メディア戦略、国際的な情報発信、ビジネス運営といった、高度な専門性を統合できるマネージャー・プロデューサーの需要が、ますます高まっていくはずである。


開催概要

  • イベント名:日本経済大学 東京渋谷キャンパス 特別公開講座
  • テーマ:eスポーツビジネスの将来像、世界に挑戦する日本代表の取り組み、及び「好きを仕事に」を実践するキャリアプラン
  • 日時:2026年6月25日(木)18:00~19:30
    (受付開始 17:30~)
  • 会場:日本経済大学 東京渋谷キャンパス 「STATIO」7F Theater教室
    東京都渋谷区桜丘町1-1 渋谷サクラステージ7階
    ※JR渋谷駅新南口から徒歩1分
  • 対象:本学学生、および一般聴講者
  • 形式:会場リアル開催+限定生配信(予定)
  • 参加方法:申し込みフォーム
    https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfwQ0zn0_iyAssYpdogKoCupzSQHeTow03llBpIT8yiQJUD9w/viewform

ゲスト講師

  • 名前:平岩康佑(ひらいわ こうすけ)氏
  • 肩書:eスポーツキャスター
  • 現職:2026年Esports Nations Cup(ENC 2026)日本代表ナショナルチームマネージャー(団長)
  • 経歴
    • 朝日放送(ABCテレビ)アナウンサーとして活動(プロ野球、女子プロゴルフ、高校野球などの実況を担当)
    • 2018年退社後、株式会社ODYSSEY設立
    • アナウンサーのマネジメント・コンサルティング事業を展開
    • RAGE、CRカップなど日本最大級のeスポーツイベントで実況を担当

Esports Nations Cup 2026(ENC 2026)について

  • 開催地:サウジアラビア・リヤド
  • 開催時期:2026年11月予定
  • 形式:国別代表によるeスポーツ国際大会
  • 日本代表団:平岩康佑氏がナショナルチームマネージャー(団長)として統括

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