
展示会のブースには、必ずと言っていいほどノベルティが用意されている。ボールペン、モバイルバッテリー、お菓子、トートバッグ――その種類は実にさまざまだ。しかし、「とりあえず定番のものを配っておけばいい」という発想で選んでしまうと、せっかくのノベルティが十分な効果を発揮しないまま終わってしまうことも少なくない。
ノベルティは、単なる「配りもの」ではない。来場者との接点を記憶に残し、ブースへの立ち寄りを促し、展示会が終わった後も手元に残ってブランドを思い出させる、れっきとしたマーケティングツールだ。この記事では、ノベルティを選ぶ際の考え方から、予算相場、景品表示法との関係、効果的な配り方まで、体系的に解説する。
毎年同じようなノベルティを、深く考えずに発注し続けている担当者も少なくないだろう。しかし、他社のブースと似たようなノベルティを並べているだけでは、数百のブースがひしめく会場の中で埋もれてしまう。ノベルティ選びに一手間かけることは、限られた出展予算の中で、来場者一人あたりの印象を底上げする、費用対効果の高い投資になり得る。
展示会ノベルティの選び方完全ガイド 予算相場・景品表示法まで
展示会ノベルティの役割とは

ノベルティが果たす役割は、大きく二つに分けられる。
一つ目は、ブースへの動線をつくる「呼び込み効果」だ。展示会場は数百から数千のブースがひしめく空間であり、来場者は限られた時間の中で、どのブースに立ち寄るかを瞬時に判断している。魅力的なノベルティは、通路を歩く来場者の足を止めさせ、ブースへの立ち寄りのきっかけをつくる力を持つ。特に、他社にはない珍しいノベルティや、実用性の高いノベルティは、口コミやSNSでの言及を通じて、想定していなかった来場者を呼び込む効果を生むこともある。ブースの前に「ノベルティ配布中」という掲示を出すだけでも、通路からの視認性が高まり、立ち寄りのきっかけを増やす効果が期待できる。
二つ目は、展示会が終わった後もブランドを思い出させる「記憶定着効果」だ。名刺交換だけで終わった接点は、時間が経つにつれて記憶から薄れていきやすい。しかし、実際に手元に残るノベルティがあれば、それを使うたびに、あるいは目にするたびに、出展企業のことを思い出すきっかけになる。特に日常的に使う文房具やモバイル関連グッズは、この記憶定着効果を長期間にわたって発揮しやすい。展示会後のフォローアップメールと組み合わせて、「先日お渡ししたノベルティはお役に立っていますか」といった一文を添えるだけでも、記憶を呼び戻すきっかけとして機能する。
この二つの役割は、必ずしも一つのノベルティで両立できるとは限らない。呼び込み効果を重視するなら、ブースの前を通りかかった瞬間に目を引く、視覚的なインパクトの強いものが向いている。一方、記憶定着効果を重視するなら、日常生活の中で繰り返し使われる、実用性の高いものが向いている。自社が展示会に出展する目的に照らして、どちらの効果をより重視すべきかを、まず整理しておくことが出発点になる。
ノベルティを選ぶ際の判断軸
ノベルティを選ぶ際には、いくつかの判断軸を意識しておくと、選定がぶれにくくなる。
一つ目の軸は、出展の目的だ。認知拡大が主目的であれば、多くの来場者に配布できる、単価の低いノベルティが向いている。一方、リード獲得が主目的であれば、名刺交換の対価として渡す、単価がやや高めの魅力的なノベルティを用意し、「名刺交換した人だけがもらえる」という限定感を演出する設計が効果的になる。既存顧客との関係深化を目的とする場合は、招待した顧客だけに向けた、より特別感のあるノベルティを用意することで、関係性の深さを演出する手段としても活用できる。目的の設定についてはイベントマーケティングの目的でも詳しく扱っているので、あわせて参考にしてほしい。
二つ目の軸は、ターゲット層だ。BtoB展示会の来場者(業界関係者、決裁権を持つ担当者など)と、BtoC展示会の来場者(一般消費者、家族連れなど)では、喜ばれるノベルティの傾向が大きく異なる。BtoBの来場者には、オフィスや日常業務で実際に使える実用品が好まれやすく、BtoCの来場者には、話題性やデザイン性を重視したアイテムが好まれやすい。
三つ目の軸は、単価と実用性・話題性のバランスだ。単価が高ければ良いノベルティになるわけではなく、限られた予算の中で、どれだけ「もらって嬉しい」と感じてもらえるかを見極める視点が重要になる。安価であっても工夫次第で強い印象を残せることもあれば、高額であっても実用性に欠け、結局使われないまま終わってしまうこともある。次のセクションで、単価帯別の具体的な相場感を扱う。
四つ目の軸は、自社ブランドとの親和性だ。ノベルティ自体が自社の事業内容や世界観と関連していると、単なる「もらいもの」を超えて、ブランドの印象づけにもつながる。例えば、環境配慮を打ち出す企業であれば、エコ素材を使ったノベルティを選ぶことで、事業姿勢そのものを体現する演出になる。IT企業であればデジタルガジェット、食品関連企業であれば自社製品と親和性の高い食器や調理小物を選ぶといった具合に、事業領域と結びつけた選定は、来場者の記憶に「あの会社らしいノベルティ」として残りやすい。
人気のノベルティ例とその傾向
ノベルティには、大きく分けていくつかのカテゴリがある。ここでは特定の商品名ではなく、カテゴリごとの特性を整理する。
実用系のノベルティは、文房具(ボールペン、付箋、メモ帳)、モバイル関連グッズ(モバイルバッテリー、USBメモリ、スマートフォンスタンド)、オフィス用品(クリアファイル、カレンダー)などが代表的だ。日常的に使われる頻度が高く、記憶定着効果を長く発揮しやすいという特徴がある。反面、他社との差別化が難しく、埋もれてしまいやすいという弱点もある。差別化を図るには、機能面での工夫(例えば複数の用途を兼ねる多機能タイプ)や、パッケージデザインへのこだわりが有効な手段になる。
食品系のノベルティは、菓子類やドリンクなど、その場で消費されるものが中心になる。会場を歩き回って疲れている来場者にとって、ちょっとした食品は喜ばれやすく、ブースでの立ち話のきっかけにもなりやすい。ただし、消費されて手元に残らないため、記憶定着効果は実用系に比べて短期的になりやすい。
話題性重視系のノベルティは、SNS映えするデザイン性の高いアイテムや、その展示会・ブースでしか手に入らない限定感のあるアイテムが該当する。呼び込み効果が特に強く、思わず写真に撮って共有したくなるような仕掛けを持つものもある。反面、企画・製作にコストと時間がかかりやすく、実用性という観点では劣ることもある。このカテゴリを狙う場合は、ノベルティ単体だけでなく、それを受け取る体験自体(その場でのカスタマイズ、記念撮影スポットとの組み合わせなど)まで含めて設計すると、より強い印象を残しやすい。
自社商材と連動したノベルティは、実際に自社の製品・サービスのミニチュア版や体験版を配布する形態だ。単なる販促品ではなく、来場者に製品への理解を直接深めてもらえるという、他のカテゴリにはない独自の価値を持つ。ソフトウェア企業であれば無料トライアル券、メーカーであれば製品の試供品など、業態に応じた形態を工夫することで、ノベルティそのものが営業活動の一部として機能するようになる。
どのカテゴリを選ぶにしても、「なぜこのノベルティを配るのか」という目的意識を持って選定することが、単なる予算消化に終わらせないための鍵になる。
ノベルティの予算相場

ノベルティの予算は、単価帯によっておおよその用途が分かれる。
数十円程度の単価帯は、来場者全員に配布する、いわゆる「バラマキ用」のノベルティに向いている。ポケットティッシュやシンプルなクリアファイルなど、コストを抑えつつ広く配布することを目的とする場合に選ばれる。この価格帯では、大量発注によるスケールメリットを活かせる反面、他社との差別化は難しく、記憶に残る効果は限定的になりやすい。
数百円程度の単価帯は、最も選択肢が広く、多くの企業が主力として採用する価格帯だ。文房具やモバイル関連グッズなど、実用性の高いアイテムがこの価格帯に多く存在する。名刺交換をした来場者に配布する、標準的なノベルティとして設定されることが多い。この価格帯であれば、ある程度のデザイン性や実用性を確保しつつ、数百から千個単位でのまとまった発注も現実的な範囲に収まる。
千円以上の単価帯は、特に重要な来場者(決裁権を持つ担当者、有力な見込み顧客など)に限定して渡す、特別感のあるノベルティに向いている。すべての来場者に配布するには予算がかさむため、渡す対象を絞り込む設計とセットで検討する必要がある。この価格帯のノベルティは、招待制のプライベートショーや、VIP対応が想定される商談展などで採用されることが多く、来場者一人ひとりに「特別扱いされている」という印象を与える効果も期待できる。
予算全体の設計としては、「広く浅く配るもの」と「重要な相手にだけ渡すもの」を組み合わせた、二段構えの設計にする企業も多い。全体の来場者数の見込みと、出展全体の予算配分を踏まえて、ノベルティにどの程度の予算を割くかを、事前に決めておくことが望ましい。出展予算全体に占めるノベルティ費の割合は、企業や業界によって幅があるが、ブース装飾費や人件費とのバランスを見ながら、無理のない範囲で設定することが基本になる。
景品表示法との関係で気をつけたいこと
ノベルティを企画する際、意外と見落とされがちなのが景品表示法との関係だ。ノベルティが「景品類」に該当する場合、景品表示法上の規制の対象になることがある。
景品表示法では、商品・サービスの取引に付随して提供される経済上の利益を「景品類」と定義し、その提供方法に応じて、提供できる景品類の最高額に上限を設けている。展示会で配布するノベルティが、単なる販促目的の配布物ではなく、何らかの取引(商品購入や契約など)に付随して提供される性質を持つ場合には、この規制の対象になる可能性がある。
ただし、展示会来場者に対して、購入や契約と無関係に配布する、いわゆる「オープン懸賞」に近い形でのノベルティ配布であれば、景品表示法上の景品類規制の対象外となるケースが一般的とされている。とはいえ、この判断は個々の企画の実態によって変わってくるため、高額なノベルティを企画する場合や、来場者に何らかの行動(アンケート回答、契約など)を条件に提供する場合には、事前に消費者庁や関連団体が公開している最新のガイドラインを確認するか、専門家に相談することを強く勧める。
特に注意したいのは、「名刺交換をしてくれたら高額なノベルティを渡す」という設計だ。名刺交換自体は取引そのものではないが、その後の営業行為や契約に結びつく前提での提供と見なされる可能性もゼロではなく、判断が難しいグレーゾーンになりやすい。不安がある場合は、提供するノベルティの価格帯を抑えめに設定するか、事前に社内の法務担当者や外部の専門家に確認を取っておくことが、安全な運用につながる。この記事の内容は一般的な情報提供にとどまるものであり、個別の法的判断を保証するものではない点に留意してほしい。
ノベルティの効果的な配り方

ノベルティは、何を配るかと同じくらい、どう配るかが成果を左右する。
一つ目の配り方は、来場者全員に無条件で配布する方法だ。ブースの前を通りかかった人に声をかけ、気軽に受け取ってもらう形式で、呼び込み効果を最大化することを狙う。この場合、単価を抑えたノベルティを、大量に用意しておく必要がある。声をかける際のひと言(「新商品のサンプルです、よろしければどうぞ」など)を工夫することで、単なる配布作業ではなく、会話のきっかけとしても機能させることができる。
二つ目の配り方は、名刺交換をした来場者に限定して配布する方法だ。「名刺をいただいた方には、こちらをプレゼントしています」という形で、名刺交換そのものへのインセンティブとしてノベルティを機能させる。リード獲得を目的とする場合に、最も一般的に採用される配り方だ。この方式では、ノベルティを目立つ場所に陳列しておき、来場者自身に「あれが欲しい」と思わせたうえで、名刺交換という行動を引き出す設計にすると、より自然な流れをつくりやすい。
三つ目の配り方は、アンケートへの回答やデモンストレーションへの参加など、何らかの行動を条件に配布する方法だ。単に名刺を交換するだけでなく、より深く自社の製品・サービスに触れてもらうきっかけとしてノベルティを活用する。来場者が費やす時間が長くなる分、単価をやや高めに設定することで、行動へのインセンティブとしての説得力を持たせることが多い。この方式は、単なる接点づくりを超えて、来場者に製品理解を深めてもらう機会としても機能するため、リード獲得だけでなく、その後の商談化率を高める効果も期待できる。
どの配り方を選ぶにしても、当日のブーススタッフが、ノベルティを配る意図を理解したうえで対応することが重要だ。単に「配るだけ」の作業になってしまうと、ノベルティが持つ本来の効果(呼び込み、記憶定着、行動喚起)を十分に引き出せないまま終わってしまう。
業種別に見るノベルティの傾向
業種によって、来場者に喜ばれるノベルティの傾向は異なる。
IT・ソフトウェア業界の展示会では、モバイルバッテリーやUSB-Cケーブル、ワイヤレス充電器といった、デジタルガジェット関連のノベルティが定番になっている。来場者自身がITリテラシーの高い層であることが多く、実用性の高いガジェット系アイテムへの反応が良い傾向がある。競合他社も同様のガジェット系ノベルティを用意していることが多いため、機能面での小さな工夫や、デザインの独自性で差をつける努力が求められる領域でもある。
製造業・機械関連の展示会では、丈夫な文房具や工具に近いアイテム(メジャー、多機能ドライバーなど)が好まれる傾向がある。現場での実用性を重視する来場者層の特性に合わせた選定が効果的だ。
食品・飲料業界の展示会では、自社の製品そのものを試供品として配布するケースが多い。ノベルティというより、製品体験そのものが呼び込み・記憶定着の役割を兼ねる、業界特有の設計になっている。試食・試飲という体験自体が来場者の記憶に強く残るため、パッケージに連絡先や購入方法を明記しておくことで、後日の購買行動につなげやすくなる。
BtoC色の強い展示会(ゲーム、ホビー、ファッションなど)では、デザイン性やコレクション性を重視したアイテムが好まれやすい。限定デザインのステッカーやポストカード、キャラクターとコラボしたグッズなど、話題性を重視したノベルティが多く見られる。来場者がSNSで自発的に発信したくなるような、フォトジェニックな要素を取り入れることで、会場外への波及効果も期待できる。
このように、業種特有の来場者傾向を踏まえてノベルティを選ぶことが、汎用的な「定番アイテム」を配るよりも高い効果につながりやすい。
ノベルティ選びでよくある失敗
ノベルティの選定において、いくつかの典型的な失敗パターンがある。
一つ目は、目的を考えずに「とりあえず去年と同じものを発注する」というパターンだ。前年踏襲で選定を続けていると、来場者層や出展目的が変化しているにもかかわらず、ノベルティだけが取り残されてしまうことがある。展示会に出展するたびに、今回の目的・ターゲット層を改めて確認し、ノベルティの選定もその都度見直す習慣を持つことが望ましい。
二つ目は、単価にこだわりすぎて、実用性や話題性を犠牲にしてしまうパターンだ。予算を抑えることばかりを優先すると、来場者にとって「もらっても嬉しくない」ノベルティになってしまい、せっかくの呼び込み効果や記憶定着効果を発揮できないまま終わってしまう。
三つ目は、数量の見積もりを誤り、会期中に在庫が尽きてしまう、あるいは大量に余ってしまうパターンだ。過去の来場者数の実績や、今回の展示会の規模感を踏まえて、必要な数量を事前にシミュレーションしておくことが望ましい。想定来場者数に対して発注数が不足すると、後半の来場者に配布できなくなり、機会損失につながる。逆に大幅に余らせてしまうと、次回への持ち越しが難しいノベルティ(季節性のあるデザインなど)であれば、単純な予算の無駄遣いになってしまう。会期が複数日にわたる展示会では、初日の消費ペースを見ながら、残り日数分の配布ペースを調整するといった、当日の在庫管理も見落とせないポイントだ。
四つ目は、ノベルティのデザインに自社のロゴや連絡先を入れ忘れる、あるいは目立たない形でしか入れていないパターンだ。記憶定着効果を狙うのであれば、後で見返したときに「どの会社のものか」がすぐに分かるデザインにしておくことが欠かせない。QRコードを添えて自社サイトへの導線を用意しておくなど、ノベルティを次のアクションへのきっかけにする工夫も、あわせて検討する価値がある。
ノベルティの発注スケジュール
ノベルティの企画から手元に届くまでには、相応の準備期間が必要になる。既製品にロゴを印刷するだけの簡易的なノベルティであれば、発注から納品まで数週間程度で済むことが多いが、オリジナル形状の製品を一から製作する場合や、繁忙期(展示会シーズンである春・秋)に重なる場合は、納期がさらに延びることも珍しくない。
展示会出展が決まった段階で、早めにノベルティ会社への見積もり依頼を始めておくことが望ましい。特に、他社との差別化を狙った独自性の高いノベルティを企画する場合は、デザインの検討・サンプル確認・修正といった工程に時間がかかるため、会期の2?3か月前には具体的な検討を始めておきたい。
また、複数の展示会に継続的に出展する企業であれば、年間を通じたノベルティ計画をあらかじめ立てておくことで、まとまった数量での発注によるコスト削減や、季節・展示会ごとのテーマに応じた使い分けがしやすくなる。
環境配慮とノベルティ
近年、ノベルティの選定においても、環境配慮の視点が意識されるようになってきている。プラスチック製品への規制強化や、消費者・来場者側のサステナビリティ意識の高まりを受けて、再生素材を使用したアイテムや、生分解性の高い素材を使ったノベルティを選ぶ企業も増えている。
環境配慮型のノベルティは、単に「エコである」ことをアピールするだけでなく、自社の事業姿勢そのものを来場者に伝える機会にもなる。特にサステナビリティを経営方針に掲げる企業にとっては、ノベルティの選定自体が、ブランドメッセージを体現する一つの手段になり得る。再生紙を使ったメモ帳や、繰り返し使えるエコバッグなど、使い捨てを前提としないアイテムを選ぶことで、環境配慮と実用性を両立させる工夫も広がりつつある。
一方で、環境配慮型の素材は、従来の素材に比べてコストが高くなる傾向があることも事実だ。予算とのバランスを見ながら、どの程度まで環境配慮を優先するかを、企業ごとの方針として整理しておくとよい。すべてのノベルティを環境配慮型にすることが難しい場合は、主力となる一部のアイテムだけを環境配慮型に切り替えるといった、段階的な導入から始める選択肢も現実的だ。
ノベルティの製作方法
ノベルティを準備する方法には、大きく分けて既製品を活用する方法とオリジナル製作する方法の二通りがある。
既製品を活用する方法は、市場に既に流通している商品(文房具、モバイルグッズなど)に、自社のロゴやメッセージを印刷・加工する形だ。コストを抑えやすく、納期も比較的短く済むため、多くの企業が採用している。専門のノベルティ製作会社に依頼すれば、商品選定から印刷、納品までを一括して任せることができる。初めてノベルティを企画する担当者にとっては、まず既製品の活用から始め、費用感や制作フローの勘所をつかんでいくのが、現実的な進め方になる。
オリジナル製作する方法は、形状やデザインを一から企画し、自社独自のノベルティをつくる形だ。他社との差別化を強く打ち出したい場合や、自社の製品・サービスと直接連動したノベルティを作りたい場合に選ばれる。金型の製作が必要になるケースもあり、コストと納期は既製品の活用に比べて大きくなる傾向がある。
どちらの方法を選ぶにしても、発注先の選定は重要な検討事項になる。複数のノベルティ製作会社から見積もりを取り、価格だけでなく、納期の確実性や、過去の製作実績なども踏まえて比較検討することが望ましい。特に、展示会シーズンである春・秋には、多くの企業が同時にノベルティを発注するため、製作会社側の対応キャパシティが逼迫しやすい。この時期に出展を予定している場合は、余裕を持ったスケジュールで発注先を確保しておくことが、当日までに確実に間に合わせるための実務上のポイントになる。
複数の展示会に出展する場合のノベルティ戦略
年間を通じて複数の展示会に出展する企業では、すべての展示会で同じノベルティを使い回すのか、展示会ごとに変えるのかという判断も必要になる。
同じノベルティを使い回す場合、まとまった数量での発注によるコスト削減や、在庫管理のシンプルさというメリットがある。一方、複数の展示会に足を運ぶ来場者(業界関係者など)にとっては、毎回同じものをもらうことになり、新鮮味に欠ける印象を与えかねない。
展示会ごとにノベルティを変える場合、それぞれの来場者層やテーマに合わせた最適化がしやすくなる一方、企画・発注の手間とコストが増える。実務上は、主力の展示会には力を入れたオリジナルノベルティを用意し、それ以外の展示会には汎用的な既製品ベースのノベルティを使う、といった使い分けをしている企業も多い。
自社の年間出展計画を踏まえて、どの展示会にどの程度の力を入れるべきかを整理したうえで、ノベルティの企画方針を決めていくことが、限られたリソースを効率的に配分する現実的なアプローチになる。
ノベルティ選びを次年度以降に活かす
出展が終わった後は、そのノベルティがどの程度効果を発揮したかを、簡単にでも振り返っておくことをおすすめする。ブースへの立ち寄り数、名刺交換数、来場者からの反応(その場での会話や、後日のフォローアップでの言及)といった情報を記録しておけば、翌年以降のノベルティ選定における貴重な判断材料になる。当日のブーススタッフに、来場者の反応を簡単にメモしてもらうだけでも、振り返りの精度は大きく向上する。
同じ展示会に継続して出展する企業であれば、毎回異なるノベルティを試しながら、どのようなアイテムが自社の来場者層に響くのかを、経験的に蓄積していく視点も有効だ。ノベルティ選びは一度の正解を見つける作業ではなく、出展を重ねるごとに精度を高めていく、継続的な改善のプロセスとして捉えるとよい。複数のノベルティ候補を同時に用意し、来場者の反応を比較するといった、簡易的なテストを行っている企業もある。
展示会のノベルティは、単なる「配りもの」ではなく、呼び込み効果と記憶定着効果という二つの役割を持つ、マーケティングツールとして設計すべきものだ。出展の目的、ターゲット層、予算、自社ブランドとの親和性という複数の判断軸を踏まえて選定し、景品表示法との関係にも注意を払いながら、配り方まで含めて一貫した設計をすることが、投資対効果を高める鍵になる。
業種特有の来場者傾向や、製作方法・発注スケジュール、環境配慮といった観点も踏まえたうえで、単発の「今年の準備」で終わらせず、出展を重ねるごとに改善していく視点を持つことが、ノベルティという小さな投資を、着実な成果につなげる道筋になる。
展示会出展の全体的な準備の進め方については展示会とはで、出展の目的設定についてはイベントマーケティングの目的で、それぞれ詳しく解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

















