
交通機関の全面停止で浮かび上がった会場の”もう一つの顔”
2026年9月8日、東海地方を襲った記録的な大雨で、名古屋市内の公共交通機関が終日にわたり大きな影響を受けた。地下鉄・市バスが全面的に運転を見合わせるという異例の事態となり、名古屋市は帰宅困難者向けの「退避施設」を開設した。この退避施設の指定リストを見ると、名駅・栄エリアのイベントホールや会議室が名を連ねている。展示会・イベント業界にとって会場は集客の場であると同時に、防災インフラの一端も担っているという実態が、今回の大雨で改めて浮き彫りになった。
線状降水帯、地下鉄・市バスが終日運休に
9月8日、東海地方では静岡・愛知・岐阜で線状降水帯が発生し、大雨災害発生の危険度が急激に高まった。名古屋市は同日15時34分、レベル4大雨危険警報の発表を受けて災害対策本部を設置。夕方以降は栄地区を中心に道路の冠水も相次いだ。
この影響で、名古屋市交通局は地下鉄全線と市バス全系統の運転を見合わせ、JR東海や名古屋鉄道も複数路線で運転を見合わせる事態となった。交通局が同日22時30分時点でまとめた「大雨に伴う市バス・地下鉄の運行の見合わせ等について(第3報)」によると、地下鉄は22時30分より順次全路線で運転を再開したが、市バスは全系統で終日運転見合わせとし、運行再開は翌朝の始発からとした。道路状況等により遅れが生じる可能性があるとの注記も添えられている。
「退避施設」に並ぶイベントホールの名前
公共交通機関の全面停止を受け、名古屋市災害対策本部は名古屋駅、金山駅、伏見駅・栄駅の周辺で、帰宅が難しい人向けに24時間を限度とする「退避施設」を開設した。この制度自体は本来、大規模地震発生時を想定して整備されたもので、名古屋駅周辺地区・伏見栄地区・金山駅周辺地区の3エリアに、あらかじめ民間ビルや商業施設など多数の施設が指定されている。
このリストを見ていくと、イベント・会議用途の施設が、まさに「集客のための空間」を「収容のための空間」として提供する形で並んでいることに気づく。
JPタワー名古屋の3階には「JPタワー名古屋 ホール&カンファレンス」がある。約220平方メートル・天井高約5メートルの2分割可能なホールと、約60平方メートルのカンファレンスルーム4室、ホワイエを備え、会議やセミナー、研修のほか集客イベントやパーティー、懇親会にも対応する施設で、運営は株式会社コングレが手がける。今回の一覧表ではこのビルが退避施設として「2階貫通通路、1階アトリウム、B1階ロビー等」を提供する指定を受けている。
名古屋国際センター別棟ホールも、その名の通りホール機能を主体とする施設で、公益財団法人名古屋国際センターが管理し、そのまま「ホール」が退避場所として指定されている。
一方、同じく名駅エリアのJRゲートタワーは、名古屋JRゲートタワーホテルや名古屋マリオットアソシアホテルが入る複合ビルだが、大規模な貸しホールや宴会場の状況は確認できず、退避施設としての指定場所も「2階通路」というオフィス動線部分にとどまる。同じ名駅エリアでも、施設の性格によって退避施設としての受け入れ方が変わってくる。
ウインクあいち(愛知県産業労働センター)も名古屋駅周辺地区の指定を受けている。一時退避場所として「空地、軒下」、24時間滞在可能な退避施設としては「1階ホワイエ、会議室等」が指定されており、管理主体はアイラック愛知株式会社となっている。栄駅地下街直結の中日ホール&カンファレンスが入る「中日ビル」も、伏見・栄地区の退避施設として「B1階共用部・6階ホール・6階会議室」の指定を受けており、6階ホールはまさに中日ホール&カンファレンスを指すとみられる。
一方、名古屋国際会議場(熱田区)と吹上ホール(千種区)は、この3地区の対象エリア外にあるため、今回の指定リストには含まれていない。名古屋国際会議場については、大規模改修工事のため2025年2月から2027年3月まで全館が臨時休場中でもある。
「指定」と「実際の開設」には差も
もっとも、退避施設は「管理主体が開設可能と判断した場合に限り開設されるものであり、使用できない場合もある」と名古屋市の計画資料にも明記されている制度で、指定されているからといって必ず開くわけではない。
実際、9月8日19時台の時点で、市内の退避施設の多くが開設されているわけではないとの声がSNS上でも見られた。名古屋市防災アプリの開設状況マップ https://nagoya-bousai.maps.arcgis.com/apps/dashboards/fe3d75a5a32c49a8924b0bc1778e2bb1# (開設済み・混雑〜開設済み・空きの4段階で表示)を確認したところ、栄駅周辺のオフィスビル・商業施設(ナディアパーク、中部電力MIRATOWERテラス21など)や名古屋駅周辺のビル(JPタワー名古屋、JRゲートタワー、JRセントラルタワーズ、名古屋国際センター別棟ホールなど)にはマーカーが表示されていた一方、ウインクあいちと中日ビルにはこの時点でマーカーが確認できなかった。指定はされていても、今回実際に開設され、来場者・利用者を受け入れたかどうかは、施設側への確認が必要な状況だ。
ホール・会議室を抱える施設が「イベント時の集客力」だけでなく「非常時の受け入れ力」としても評価される時代になりつつある中、今回のように制度上は対象でも実際の開設判断が追いつかないケースがあるとすれば、それは主催者・会場運営者双方にとって今後のBCP(事業継続計画)を考える材料になりそうだ。
東京では明日、大型展示会が一斉開幕
同じ9月8日から9日にかけては、関東甲信でも線状降水帯の発生が警戒されており、東京地方・千葉県を含む広い範囲で大雨が予想されている。折しも9月9日は、東京ビッグサイトで第28回自動認識総合展、幕張メッセでサステナブル経営WEEK秋やオートモーティブワールド幕張など複数の大型展示会が、東京国際フォーラムでは第6回The Makers・Apparel Showが、それぞれ初日を迎える。名古屋のような交通の全面停止には至らないまでも、来場者アクセスへの影響が出ないか、開幕日の朝の状況が注目される。
(取材メモ:ウインクあいち・中日ホール&カンファレンスの実際の開設有無については、管理主体〈アイラック愛知株式会社/中部日本ビルディング株式会社〉への確認が望ましい。JRゲートタワーの宴会場・イベントホール有無も要確認。東京側の交通影響は9月9日朝の運行情報を追記予定。)

















