感動は明るさに比例する!? 観察と分析、技術と科学の演出論

感動は明るさに比例する!? 観察と分析、技術と科学の演出論

寛永行幸400 年を記念し二条城で上演されたプロジェクションマッピングをプロデュースした、シンユニティグループ取締役の長崎英樹さんに、その映像設計を聞いた。

9割の「無関心な人」を振り向かせる視覚の閾値

プロジェクションマッピングで、最も大切なものは何か。長崎さんは迷わず即答する。
「圧倒的に明るさです。」映像のストーリーや解像度よりも、まずは明るさ。そこにはプロデューサーとしてのシビアな視点がある。「夜が一瞬で決まります。そもそも明るさが足りなければ、見る気にすらならない。」

長崎さんが意識しているのは、マッピングを目当てに来場する1 割のファンではなく、残りの9 割の、そこまで興味がない人たちだ。「二条城も同じです。たまたま観光で来た人にも、おっ、と思ってもらわないと意味がない。その入口になるのが光なんです」

強い光は、ただ見やすくするためのものではない。人の感情を動かすスイッチになる。
現場で観客の反応を見続けてきた長崎さん、それを感覚として知っていた。後から心理学を調べると、強い光が感情の振れ幅を大きくするという専門的見地もあった。

投影するのは、白壁、瓦、木部が混在する歴史的建造物。あえて白い部分を暗く沈める手法を取ることもある。「明るいところを少し落として対比をつくる。そうすると全体の見え方が揃って、結果的にパキッと明るく見える。絵画の明暗法と同じです」(長崎さん)。建築の凹凸と映像がぴたりと重なる瞬間。そして次の瞬間に、それが崩れ、別のものに見えてくる。その驚きを成立させるためにも、十分な明るさは欠かせない。

「16:9 の枠」空間そのものを体験に変える

次に重視するのが、視野率とアスペクト比だ。「今の僕らは、日常的に16:9という四角い枠に囲まれています。その見慣れた比率で映した瞬間に、人はそれをただの映像だと感じてしまう。せっかくの二条城が、スクリーンの延長になってしまうんです」と今回の二条城では、壁面だけでなく手前の松の木にまで投影を広げ、視界いっぱいに広がる構成をつくったという。「松まで巻き込むことで、空間全体が変わったように感じてもらえる。映像じゃなくて、体験になるんです」(長崎さん)。

コンテンツ面でも、説明しすぎないことを意識している。「物語はあっても、全部を理解させようとしたらダメ。説明が増えると、人は頭を使い始めて客観的になる。むしろ、なんだかわからないけれど凄い、という感覚を残す方が強いんです」と長崎さんは分析する。

身体に響く低音が感動を確信に変える

「音は感動を2割増しにするブースターです。特に低音は、耳で聴くものではなく、身体で受け止める振動。花火もそうですよね」

長崎さんが特に意識するのは、低音を入れるタイミングだ。「最後ですね。ラストでしっかり低音を入れる。人って、終わり方で全体の印象がかなり決まるんです」いわゆるピークエンドの法則。体験の満足度は、最も感情が動いた瞬間と、最後の印象によって強く左右される。

「音って、良いと気づかれないんです。でも、気持ちはちゃんと上がってる。そこが大きいんですよね」音は目立たない。でも、無意識のうちに感情を押し上げ、映像を見るものから体験したものに変えている。

感動は「偶然」ではなく、観察の積み重ね

「光ってきれいでした、では商売にならない」

長崎さんが追求しているのは、自己表現ではない。人がどこで立ち止まり、どこでスマホを向け、どこで拍手が起きるのか。その反応を、ひたすら見る。現場での観察と検証が、光量、音、画角という具体的な設計に変わっていく。

「演出はセンスじゃない。人がどう反応するかを、どれだけ見たか」

感動は設計できる。長崎英樹さんの空間演出は、その執念のような観察から生まれている。

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