統合リゾートという新しい産業が日本に生まれ、雇用の拡大が期待される一方、これまでにない職種の人材育成が課題になっている。長年にわたりディーラーの育成を手がける日本カジノスクール校長の大岩根成悦さんに話をうかがった。

生徒4人の時も… 現在は6000人の人材供給目指す

新宿にルーレット教室という場所があり、大学生の私はそこでディーラーのアルバイトをしていました。新宿でカジノということで、薄暗くて怖そうな場所を想像されるかもしれませんが、実際には上品な方々が紅茶を飲みながら優雅にルーレットを楽しんでいました。ミス日本コンテスト事務局の和田研究所がその場所を手がけていたこともあり、ミス日本候補のようなきれいな女性もいらして、華やかでワクワクする場所でした。大学を卒業した私は世界一周クルーズも行う客船「飛鳥」のカジノゲームでディーラーをしていました。

1999年に石原慎太郎都知事のカジノ構想があり、2002年の都庁で開催された模擬カジノも私がいた会社が運営してたこともあり、日本にカジノが成立すると見込んで、2004年にトラベルジャーナルさんと一緒に日本カジノスクールを開校しました。

それから法案があがっては消えを繰り返し15年がたちました。その間に卒業生が4人しかいなかった年もあったのですが、IR推進法と整備法が成立したいま、在校生は200人ほどになっています。

しかし、IR施設3か所がシンガポールと同じ規模と仮定すると、ゲームフロアだけで6,000人ほどが必要になります。現在海外で働いたり別の仕事に就いている卒業生が累積で900人ほどになりますが、全員が日本のIRで働いてもまったく足りません。日本政府や自治体がIRに期待するもののなかに雇用の創出がありますので、外国人のディーラーを大量に雇用するわけにはいかないので、多くの人材をIR開業の2024年ごろまでに育成しなければいけません。いまは東京と大阪の2校ですが、IR建設地が決まり次第その地元に開校します。

また、海外では80歳以上という高齢の方や車椅子の方がディーラーをしています。日本の課題である労働人口の減少とダイバーシティのソリューションとしても期待されます。

ディーラーはホスピタリティ業

よく、ルーレットで狙った目に落とす方法を教えていると勘違いされるのですが、ディーラーはボールを投げる時に盤面を見ていません。カジノの収益はお客様に勝つことで得ているのではありません。ハウスエッジ(控除率)というのですが、賭けたお金の5%くらいが(アメリカンスタイルの場合)カジノの収益になるように、ゲームのルールが設定されています。カジノ側としては、誰かをわざと勝たせるような不正をしないように、狙った目をださせないために、プレーヤ中のディーラーの所作は細かくルールが決められています。ディーラーの服にはポケットはありませんし、手でお金を扱うことも禁止されています。

ディーラーに求められる能力は、正確にすばやくゲームを進行することとホスピタリティです。日本の公営ギャンブルの控除率20〜30%と比べて、カジノはルーレット以外も多売薄利なゲームが多いのでプレイの回転を早くし、かつお客様に快適に長い時間楽しく遊んでいただかないといけないのです。

当校では、ゲームをミスなく円滑に進める技術のほかに、ゲームのルール、カジノの歴史、カジノ英会話、接客、ギャンブル依存症についてなど、座学でも多くのことを学んでもらいます。ゲームフロアにはディーラー以外にもフロアパーソンやピットマネージャーという管理側の人も多数いますので、マネージャー向けのコースも昨年新設しました。日本でまだIRの施設がないため、現在卒業生が海外のカジノ施設での就職のための試験対策も行っています。

大きな金額が飛び交うカジノで働くためには、厳しい信用調査をクリアしなければなりません。犯罪歴や破産歴がないことを証明する公的文書を提出したり、銀行口座で不自然なお金の流れがないかもチェックされますので、技術や知識以外のことも身につけてもらいます。

 

日本らしいIRで文化の発信拠点に

世界のIR業界にとって日本はラスト・フロンティア。各事業者が素晴らしい施設を提案してくるでしょう。そしてハード以上に重要なのはソフト。直接お客様に触れるディーラーのホスピタリティは重要だと思います。先ほどもお話したようにディーラーに必要なのは、ミスなく正確に素早く進行し、お客様を快適にする接遇なので、日本人に向いている仕事だと思っています。そこで日本のIRをソフトの面でも世界最高のクオリティにする、そういう人材を育成するのが私たちの役目だと思っています。

高いクオリティのなかに日本的な文化をおりこんで、IRをきっかけに日本の素晴らしさが世界に伝播するようになるといいですね。マニラの日系カジノのオカダマニラのチップには富士山が描かれています。ディーラーが浴衣というのは行き過ぎかもしれませんが、日本らしいところがどこかにあるといいですね。

プレイする側の皆さんにも気軽に体験してゲームに慣れていただけるように、テーブルゲームを体験できるカフェを東京のお台場と大阪のなんばで営業しています。またイベント向けにゲームテーブルやディーラーを派遣しています。

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