気づけば、そこは”もう一つの百貨店”だった――大丸東京店、XRホラー『迷界デパート』を歩いてきた
- 2026/7/17
- ニュース

「閉店後の百貨店に迷い込んだら」——そんな想像を、実際に歩いて体験できてしまうコンテンツが7月16日から東京駅直結の百貨店に登場する。株式会社大丸松坂屋百貨店(J.フロントリテイリンググループ、本社:東京都江東区、代表取締役社長:宗森耕二)が、ホラークリエイティブカンパニーの株式会社闇(本社:東京都港区赤坂、代表取締役:荒井丈介)、株式会社日本XRセンター(本社:東京都中野区、代表取締役CEO:小林大河)と共創したオリジナルXRホラーアトラクション「迷界デパート~終わらない記憶が彷徨う、無限の百貨店迷宮~」だ。
リアルな商業空間×最新XR×ホラー演出という組み合わせは、夏の納涼イベントの進化系としてだけでなく、「スペースの活用」「体験型コンテンツによる集客」「XR技術のロケーション実装」といったテーマに関心のある企業マーケティング担当者やデベロッパーにとっても、事例として押さえておきたい取り組みではないだろうか。舞台は大丸東京店。ヘッドマウントディスプレイを装着して自分の足で歩き回りながら物語に入り込む、フリーローミング(自由歩行)型のホラー体験イベントとなる。
ストーリーは、「深夜の従業員用エレベーターに乗ると、異世界に取り込まれてしまう」という都市伝説が囁かれる百貨店を舞台に、新人夜間警備員である体験者が「空間の異常」を調査するというもの。存在しないはずのフロアに迷い込み、記憶が狂気を帯びて無限にループする「迷界デパート」からの脱出を目指す内容となっている。
開催前日にあたる7月15日には体験会が大丸東京店11階催事場で開かれた。前半のプレス発表会には、株式会社闇代表取締役社長の内山賢一さん、株式会社日本XRセンター代表取締役CEOの小林大河さん、株式会社大丸松坂屋百貨店執行役員の林直孝さんの3名が登壇。後半の体験会では、公式先行体験ゲストとしてアイドルグループ「8°世界が変われば、」(8われ)もいち早く世界観を体感した。

先行して体験したアイドルグループ「8°世界が変われば、」(8われ)
体験会レポート
実際に体験するとどんな感じなのか——やはり気になるところ。内覧会ではアイドルグループ8われメンバーが実際にヘッドセットを装着して体験し、率直な感想を口にしていた。
VR体験自体が初めてだったという参加者からは、歩くだけで物語が進んでいく感覚に対し、世界観の広がりへの驚きの声が上がった。景色が移り変わっていく展開に「自分がついていけているのか」と不安を覚えたという声や、物が壊れる音の臨場感、声のように聞こえる演出が「現実ではないか」と思わせるほど作り込まれていたとの感想も聞かれた。百貨店という空間そのものについても、「暑い季節に涼しい屋内で楽しめる」「実際に百貨店の店舗内のため、体験のイメージが湧きやすい」といった、会場ならではの利点を挙げる声があった。

別の参加者は、映像の鮮明さによる緊迫感や怖さを語りつつ、衣服など百貨店らしいディテールが随所にあることを面白がっていた。VRやこの種の脱出体験自体が初めてで、機材のセットアップに不安を感じたが、ゲーム内の案内はわかりやすかったという声もあった。音響の迫力について「実際より何倍も広い場所でプレイしているように感じた」との感想や、複数人で体験したことで恐怖が和らいだという声も寄せられている。
ホラーが苦手だと話す参加者からも、恐怖と技術力への感動が同居する感想が出た。階段や着物の細部の作り込みに驚き、思わず立ち尽くす場面もあったといい、音響のリアルさを含め「これまで体験したお化け屋敷より怖かった」との評価があった。
体験者の声を総じてみると、初めてXRホラーに触れる参加者が多い中で、「自由に歩ける」という操作感そのものへの新鮮な驚きと、音響・映像のディテールによる没入感の高さが共通して語られていた。

体験の感想をコメントする8われメンバー
百貨店×XR×ホラーのワケ
大丸松坂屋百貨店(林直孝氏):百貨店が非日常体験を担う理由
林氏は、J.フロントリテイリンググループが掲げる「価値共創リテイラー」への進化と、そこに含まれる「感動共創」という考え方を出発点に説明。XR技術とリアルな店舗を組み合わせることで感動を生み出せるのではという発想から研究が始まり、約1年前には社員発案により、閉店後の松坂屋上野店で関係者限定のVRホラー体験を試験実施したという。その際は好評だった一方、閉店後の店内で一般の来場者に向けて運営することの難しさもあり、営業時間中にVR空間の中で閉店後の環境を再現する現在の形に着地した。
また、百貨店が明治後期に誕生して以来、非日常のエンターテインメント体験を提供する場であり続けてきたことにも触れ、大正時代に屋上動物園があった銀座松坂屋の例を挙げながら、今回の企画も百貨店が紡いできた非日常体験の系譜に連なるものだと位置づけた。

林直孝さん(株式会社大丸松坂屋百貨店 執行役員)
日本XRセンター(小林大河氏):ロケーション型XRの技術的な転換点
小林氏は、VRヘッドセットが2015年前後のPC接続型から、単体で動作しロケーション内を自由に歩き回れる現在の形に進化してきた経緯を説明した。この技術的な進化に加え、コロナ禍を経てロケーションベースエンターテインメントへの需要が広がっていることも背景にあるという。百貨店という空間でホラー体験を提供する取り組みについては、自身の知る限り国内でも初めての試みだと述べた。

小林 大河さん(株式会社日本XRセンター 代表取締役 CEO)
株式会社闇(内山賢一氏):クリエイティブとクラウドファンディングによる価値共創
内山氏は、闇がホラーに特化したクリエイティブカンパニーであり、イベントや映像、ゲームなど幅広い領域でホラーコンテンツを手がけていることを紹介した。今回はシナリオと演出面を担当し、深夜の百貨店という舞台設定と、圧倒的なXR技術の組み合わせによって新しいホラー体験が実現したと語った。また、大丸松坂屋百貨店が実施したクラウドファンディングについても触れ、支援者がイベントを身近に応援する仕組みが制作チームの後押しになったとし、これも価値共創の一つの形だと位置づけた。

内山 賢一さん(株式会社闇 代表取締役社長)
株式会社闇 プロデューサー(浜田氏):シナリオ設計の裏側
企画プランニング・ストーリー制作・恐怖演出を担当した闇のプロデューサー浜田氏は、実空間として6×3メートル程度のブースを複数用意し、エレベーターを起点にフロアを巡回する形で省スペースに収める設計にしたと説明した。同時に3ブースを稼働させることで一度に多くの体験者を受け入れられ、施設側の回転率にもメリットがあるという。
シナリオ面では、百貨店という舞台にネガティブな印象を与えないよう、事件性のあるわかりやすい恐怖描写はあえて避け、「リミナルスペース」という、どこかで見たことがあるような既視感を伴う空間の概念を取り入れたとも話す。百貨店が来店客にとって晴れの場であり、思い出の詰まった場所であることも踏まえ、懐かしさと不気味さを両立させることにこだわったという。大丸松坂屋百貨店側からは、血など過激な表現を避けてほしいという要望があった一方で、キラキラした百貨店の「裏側」を覗くような感覚を出すため、婦人服売り場をあえて現代的でない時代設定にするなど、異世界感の演出を工夫したとしている。ジャンプスケア(驚かせる演出)が苦手な体験者が増えている状況を踏まえ、驚かせる演出は控えめにとどめたことも明かした。企画自体は約1年前から進んでいたが、シナリオが本格的に固まってからの制作期間は3~4カ月だったという。

濱田 瑠衣さん(株式会社闇 ディレクター)
4. まとめ
「迷界デパート」の面白さは、百貨店という商業空間そのものをコンテンツの舞台にしてしまった発想にある。大丸松坂屋百貨店にとっては非日常体験を提供してきた百貨店の歴史をXRで更新する試みであり、日本XRセンターにとっては単体型ヘッドセットによるロケーション型XRの進化を体現する場、闇にとっては百貨店という制約の中でホラー表現のさじ加減を突き詰める挑戦——それぞれの立場から見え方が変わるのも、この企画の面白いところだ。

内覧会のコメントを見ても、VRやXR体験自体が初めてという参加者が多かったにもかかわらず、「自由に歩ける」操作感の新鮮さや、音・映像のディテールが生む没入感には共通して驚きの声が上がっていた。普段づかいしている百貨店という入りやすい場所で非日常が味わえる、という体験のハードルの低さも見逃せないポイント。大丸グループ内外の商業施設への展開可能性にも前向きな言及があっただけに、遊休スペース活用やロケーション型XRの事例として、今後の展開にも注目したい。

「「迷界デパート~終わらない記憶が彷徨う、無限の百貨店迷宮~」開催概要
- 会期:2026年7月16日(木)~8月11日(火・祝)
- 会場:大丸東京店 11階催事場
- 営業時間:10時~20時(最終入場19時45分)
- 体験料:2,000円(税込) *チケットサイト
- 体験時間:約20分(説明・準備を含む。プレー時間は約10分)
- 同時体験人数:最大4名(1グループ)
- 年齢制限:7歳未満は入場不可。13歳未満は18歳以上の保護者の同伴が必要
- 企画・制作:株式会社大丸松坂屋百貨店、株式会社闇、株式会社日本XRセンター(ストーリー制作は株式会社闇が担当)
- 特設ページ:https://dmdepart.jp/xr-lbe/meikaidepart/













