イベントは社会を動かす(1)─ 第12回JACEアワード受賞者たちの言葉
- 2026/6/24
- ニュース

6月16日、(一社)日本イベント産業振興協会(JACE)は「第12回JACEイベントアワード」表彰式を行った。174件のエントリーから計11作品を選定。今回から新設された「スペースデザイン賞」も加わり、イベントの評価軸がまた一歩広がった。
表彰式後、主要3賞の受賞者に話を聞いた。
最優秀賞 経済産業大臣賞(日本イベント大賞)
ばくモレ展|株式会社NTTドコモ

最優秀賞 経済産業大臣賞(日本イベント大賞)を受賞した「ばくモレ展」(主催:株式会社NTTドコモ)
SNSにおける情報漏洩の危険性を啓発する写真展イベント。”盛れている”写真と見せかけて、実は個人情報が”漏れている”写真だったという仕掛けが話題を呼んだ。堅くなりがちなリスク喚起を、若年層が思わず足を止める体験として設計した点が高く評価された。
─ 受賞の率直な感想を聞かせてください
この取り組みは若手社員が企画から運営まで全部を担ったプロジェクトなんです。彼女たちが「同じ世代に何を伝えるべきか」にとことんこだわって作ったものが、こうして賞をいただけたことが本当に嬉しくて。
─ 会場での来場者の反応はどうでしたか
1階で”盛れた写真”を見て、2階に上がって初めて個人情報が「漏れていた」と気づく設計にしたんですが、気づいた瞬間に1階に戻って「どこから漏れてたんだろう」と確認する方がすごく多かった。自然な動線の中で、リスクを自分ごとにしてもらえた手応えがありました。
─ 受賞のポイントをどう分析していますか
普段、リスクの情報に自ら触れにいく人ってほとんどいないと思うんですよね。特に若年層は。その入口を、驚きと体験でつくれたこと。そして同世代への拡散を通じて「自分も気をつけなきゃ」という一人ひとりの気づきにつながったことが評価されたのかなと思っています。
─ 当初は若年層向けとして設計したとのことですが、実際の来場層は
予想外だったのが、親御さんや教育関係者の方も多くいらっしゃって。「娘に教えたい」「生徒に見せたい」という声があって、私たちも驚きました。世代を超えて刺さったのが、正直一番嬉しかったです。
─ 今後の展開は
すでに3月にゲーム版をリリースしていて、1週間で4万ユーザーを超えました。今後は学校教材としての活用も目指していて、受賞を機にさらに広げていきたいと思っています。

「ばくモレ展」を主催した株式会社NTTドコモブランドコミュニケーション部のチーム。若手社員の発案で企画はスタートした
イベントプロフェッショナル賞
映画『8番出口』東京メトロ脱出ゲーム|株式会社メトロアドエージェンシー、東宝株式会社、STORY株式会社、ESCAPE合同会社

イベントプロフェッショナル賞を受賞した「映画『8番出口』東京メトロ脱出ゲーム」(株式会社メトロアドエージェンシー、、東宝株式会社、STORY株式会社、ESCAPE合同会社)
映画『8番出口』の世界観を東京メトロ全線に投影した周遊型謎解きイベント。駅という日常インフラを”参加型メディア”として機能させた設計がイベント業務管理士の投票で最多得票を獲得した。
─ 受賞の感想から聞かせてください
正直、受賞は想定していませんでした。多数の関係者との調整に相当な時間をかけたプロジェクトだったので、プロフェッショナルの方々に評価いただけたことは、その苦労が報われた感覚があります。
─ 実施にあたって最も苦労した点は
東京メトロだけでなく、地下直結施設や衛生施設など多方面の協力が必要でした。180ある駅それぞれに個性があるので、コンテンツと駅の特色をいかに組み合わせるか、関係者全員が同じ方向を向くまでの調整が最大の山でした。
─ 参加者の反応で印象的だったことは
参加者のうち「謎解きが初めて」という方が約7割弱いたんです。それが一番の手応えでした。東京メトロの駅という場が、新しい体験の入口になれたということですから。
─ 今後、この取り組みをどう発展させていきたいですか
東京メトロには180の駅があり、下町の稲荷町や上野から、ハイブランドの銀座まで、様々な顔があります。駅や車内というスペースで、さまざまな企業やIPとコラボしながら楽しめるイベントをもっと広げていきたいと思っています。

イベントプロフェッショナル賞のトロフィーを受け取る「映画『8番出口』東京メトロ脱出ゲーム」主催の株式会社メトロアドエージェンシー
スペースデザイン賞(新設)
Marunouchi Street Park 2025 Summer|特定非営利活動法人 大丸有エリアマネジメント協会

今回新設したスペースデザイン賞を受賞した
「Marunouchi Street Park 2025 Summer」(主催:特定非営利活動法人 大丸有エリアマネジメント協会)
今回新設されたスペースデザイン賞を射止めたのは、丸の内仲通りを”街の縁側”へと再定義した都市空間プロジェクト。道路を通行インフラから人が滞在・関係を育む場へと転換した実践が、都市開発の新たな指針として評価された。
─ 新設賞での受賞、率直な感想は
2019年から続けてきた「道路という公共空間の多様な使い方」が、こういう形で社会的に認められたことを前向きに受け止めています。道路が車のためだけでなく、人がアクティビティを行い滞在できる場所になってきたという手応えがずっとありましたので。
─ 受賞のポイントをどう捉えていますか
長年をかけて「道路の新しい使い方」が社会に定着してきたこと、そして東京駅前・丸の内での実践が他の地域──たとえば大阪など──にも波及する示唆を与えられたこと。そのモデル性と波及性を評価いただいたのではないかと思っています。
─ 三菱地所グループでありながら「中立的な立場」を重視されているとのことですが
エリアマネジメント団体というのは、特定の企業の論理でなく、地権者も来街者も含めた街全体の価値向上が使命です。だからこそ中立性が重要で、「この場所で何かやりたい」という企業や団体の受け皿になれる立場でいたいと思っています。
─ 今後の展望を聞かせてください
来街者が「また来たい」と思えるよう、サプライズやエンターテインメント性を備えた時間と体験を作り続けていきたいと思っています。今回の受賞が、さらなる企業やコンテンツとの連携のきっかけになれば嬉しいです。

スペースデザイン賞を受け取る「Marunouchi Street Park 2025 Summer」主催者の特定非営利活動法人 大丸有エリアマネジメント協会
編集部から──「体験が社会を動かす」という共通項
今回の授賞式を通じて印象的だったのは、主要3賞の受賞作品がそれぞれ異なるアプローチを持ちながら、「体験が人の意識や行動を変える」という一点で共鳴していたことだ。
日本イベント大賞の「ばくモレ展」は、啓発というとかく説教的になりがちなコミュニケーションを、驚きと発見のある体験に昇華した。プロフェッショナル賞の「映画『8番出口』東京メトロ脱出ゲーム」は、駅という日常空間をIPの力で非日常に変えた。スペースデザイン賞の「Marunouchi Street Park」は、道路という公共インフラに滞在と関係性を生み出した。
もう一人、印象に残った受賞者がいた。政府・自治体・公的団体部門ゴールド賞を受賞した「託児銭湯」のよっぴーさん(株式会社ヒャクマンボルト)だ。「他薦いただき、アワードに書類を出すよう言われて、もらえるんだったらもらおうというテンションで出したら選んでもらえた」とよろこびを交え語りつつ、子どもを持って初めて見えた社会課題──親がゆっくりお風呂に入れない、夏の外出が怖い──を、イベントという形で解決しようとする姿勢には確かな熱量があった。「託児銭湯は全国に広がってほしい。子ども食堂みたいに」という言葉が、会場でひときわ温かく聞こえた。

政府・自治体・公的団体部門 ゴールド賞を受賞した「託児銭湯」。主催者を代表してトロフィーを受け取る株式会社ヒャクマンボルトのよっぴーさん
選考委員長・中村利雄氏は総評でこう述べている。「楽しい体験を社会啓発へと昇華した企画が光った」。その言葉は、今年のJACEアワードを一言で言い表している。イベントは人を楽しませるだけでなく、社会を動かす力を持つ。174件の応募が示すのは、その可能性にかけるプロたちの数と熱量だ。
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*第12回JACEイベントアワード 公式サイト:https://award.jace.or.jp/*
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