「APイノゲート大阪」内覧会レポート(3)| 対談:場とクリエイティブするチカラアート×学び 体験価値

APイノゲート大阪内覧会レポート_3

「APイノゲート大阪」内覧会レポート(3)では、内覧会を総合プロデュースし、新たなコミュニケーション創造の場を目指すTCフォーラムの最上さん。大阪アート&デザイン総合プロデューサーの青木昭夫さんと「場とクリエイティブするチカラ」をテーマに語っていただいた。(2024年11月27日収録、聞き手:月刊イベントマーケティング編集部樋口陽子)

 

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青木 昭夫さん
DESIGNART INC. CEO
Osaka Art & Design総合プロデューサー

 

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最上 直生さん
株式会社TCフォーラム
マーケティングデザインチーム ブランディングディレクター

 

内覧会でセッションを依頼した理由とは

――青木さんには大阪エリア最大級のアート& デザインイベントの舞台裏を内覧会でお話いただきました。まさに場とクリエイティブするチカラのヒントがありました

青木 2023 年にスタートした「Osaka Art & Design」は2024年、43.9 万人に来場いただき、2025年5月28日から6月24日の開催に向け企画を始動しているところです(2024年11月末時点。2026年は5月27日から6月23日に開催)。

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「Osaka Art & Design 2024」の様子

 

初回は阪急うめだ本店のある梅田エリアを中心に20 箇所、2回目の2024年は55 箇所とギャラリーやショップの参加は拡大。梅田にとどまらず大阪全体の街イベントという指針を示すため、エリアを広げています。

最上 今回、JR 大阪駅直上のAPイノゲート大阪のオープンにあたり、大阪の街と人を繋げるハブとなりたいという想いがありました。そして大阪エリアを盛り上げる皆様と一緒に「クリエイティブな空間でユニークな発想を」をテーマとした内覧会を企画しました。

「Osaka Art & Design」もクリエイティブで大阪エリアを繋げる取り組みであり、まさに私たちが目指す場作りと同じ。だからこそ是非、場とクリエイティブするチカラのヒントをお聞きしたかったんです。

ジャンルを超えてつながる仕組み

――新たなつながり、異業種の交流を促進する仕組みとは

青木 よくアートは主観的なものに対してデザインは客観的で大勢に受け入れられるもの、と言われ相反する考え方があります。僕は両方を楽しめて、街巡りをしながら新しい気づ

きを得る、そして自分磨きができる、そんな場を「Osaka Art & Design」で実現したいと、場をつくりました。

点在する場をつなげるには、関わるアーティストやデザイナーで知らない人同士つながっていくことも大切です。コネクターという存在を介して輪を広げる、場づくりの仕掛けは常に考えています。

最上 AP の会場でも日々沢山の方が集まり多種多様なイベントが行われています。一つの場所に集まる最大の価値は「新しい気づきを得られる豊富な情報量」。そこにはセレンディピティのような偶発的なものもあると思います。思わぬ出会いが縁となり、その後の未来にも繋がっていくのではないかと日々感じています。

――人と人とのつながりを作る上での工夫はありましたか?

青木 「Osaka Art & Design」実現のため、大阪には何度も通いました。会うことが非常に重要なのです。初めて訪問するような場所にも飛び込んでいきました。僕みたいなよそ者だと、しがらみもないけど知らないゆえに不安も感じますよね。だから、ジャンルを問わず、例えば写真ギャラリーに突然訪問したりして、新しい出会いをつくっていきました。

同時にイベントの参加者同士を繋げる仕組みも大事にしました。例えば「Osaka Art & Design」で展開する20カ所の会場の皆さんが集まる会合を設けたり、コネクター同士の機会をつくったりしました。あらかじめコアな関係者同士でお互いを知る機会をつくっておくことで、当日の大人数の集まるレセプションの空気感が変わるんです。それは、知らない人たちばかりだと傍観者が増えてしまいますよね。逆に関係のある人たちが既に知り合っていると、そこから輪が広がっていくということなんです。

つながりが広がれば参加者の満足度が高くなりますね。「このパーティーに来てよかった」と思ってもらえることが大切です。

最上 APイノゲート大阪内覧会でも、コネクターの大切さについて語っていただいて、聴講者から「すごく良いセッションでした」と感想がありました。その反応がとても嬉しかったです。実りのあるトークでした。

セッション後にも、青木さんが「(この話を聞いた)皆さんは、APイノゲート大阪を通じて出会った同士として、この場のつなぎ役になってください」という呼びかけもあり、新しい出会いのきっかけになったと思います。内覧会は会場のお披露目であり、スタートです。そのタイミングで、その場のつながりがまた未来につながっていくことは非常に重要だと思っています。

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APイノゲート大阪内覧会のDAY1セッション『「大阪アート&デザイン2024レビュー」大阪エリア最大級のアート&デザインイベント』に登壇した青木昭夫さん

 

アートとデザインの力

――クリエイティビティを引き出す街づくりや場のつながりをつくる上で、アートとデザインはどんな役割を果たすんでしょうか

青木 デザインとアート、両方とも重要だと思います。デザインは割とターゲットにしている方に共感が生まれやすく、みんなの生活の日常に答えを提供します。解釈が近い傾向があるんです。

一方、アートの解釈は人それぞれです。見たときに心地よさを感じたり、逆にグロさを感じたりとアートには答えがなく、解釈は各自に委ねられます。その結果、自分の審美眼が磨かれ、物差しになる基準点を自分で開拓することになります。自主性を磨くことにつながるんです。

最上 アートには自分で考える力を養う効果がありますよね。

青木 そうですね。人の意見に流されるのではなく、自分で見極めていく力が鍛えられます。人生の分岐点での判断や、人にどういう答えを提供できるか、という基準を磨くことができるんです。

今は世界的なトレンドとして、デザインでありながらアートに近いもの、アートでありながらデザインに近いものが多くなっています。例えば、デザイン家具でも彫刻のようなダイニングテーブルがあったり、アートでも機能を持つものもあったりと、そのようなケースが増えています。境目がグラデーションになっているんですね。

私は15年くらい前から、アートとデザインの境界を厳密に分ける必要があるのかを考えてきました。アートからデザインまで横断的に、感動のあるものが街中にあって、次に何に出会うかわからないというドキドキ感が刺激になると思うんです。普段接しないものに触れる機会が増えれば、新しい気づきを得られます。

最上 イベントにもアートで得られるようなインスピレーションを生む、そういった役割が必要だと思っています。

 実は私自身、20年前にとあるホールでファッションショーをみて、無機質な場所でもモデルが動くことでこんなにも引き込まれるものなのか、と没入感を体験して衝撃を受けました。それがきっかけでこの業界に入ったんです。そういう体験を提供できる場所をつくりたいと考えています。

わざわざその場所に行って、何かを得る。本来の目的以外のものも得られる場所づくりが大切です。それが記憶に残り、印象に残り、場合によっては人生の転機になることもある。そういう場を提供し続けていきたいと思います。

教育×エンターテインメント

――誰と出会うか、どんな場をつくるかが人の人生や自分を磨くことにつながっていくとするとイベントや場のプロデュースは影響が大きいですね

 最上 これからは、業界の盛り上げや広がりをつくるためにも、会場間と連携したようなイベントが必要だと感じています。周辺施設とも連携していかないと、広がりが生まれません。われわれMEETING SPACE APで開催されるイベントの9割はBtoBですが、それを超えてBtoBtoCへと発展させていく必要もあります。Cがどのようなジャンルになるのか、その可能性を探っていかないと、これまで通りの貸し会議室で終わってしまいます。

青木 やはり会議施設というと学びの部分も多くありますが、そこにアートやエンターテインメントが加わることで場所性が変わっていきます。体験価値というのが重要で、研修や展示会でも、その場所だからこそ学びが深まる体験の仕組みをつくることが大切です。これからAIやテクノロジーを活用することで、もっと効率化できる可能性もあります。

――教育とエンターテインメントの掛け算について、お考えを聞かせてください。

青木 今、トレンド的にイマーシブな体験が学校施設でも目玉として使われることが多いですが、テクノロジーだけに頼るのではなく、リアルな教育に楽しみながら夢中になれる状況をつくることが本当のエンターテインメントだと思います。これが新しい集客の装置になります。

例えば、フランスのパリにある「フィルハーモニー・デ・ザンファン」は素晴らしい例です。これはパリパリ管弦楽団の音楽ホール内にある施設で、4歳から10歳までの子どもたちが音楽をゲーム感覚で学べる場所です。指揮者になって実際にオーケストラをコントロールしたり、楽器を演奏したことがなくても画面の案内に合わせてバンド演奏をしたりと音楽を体験できます。

英才教育は真面目にやらなければならないという固定観念がありますが、ここでは楽しみながら自然と音楽のスキルが身につく仕組みになっています。時間を忘れるほど夢中になって、アドレナリンが出るような体験を通じて才能を開花させるのです。

最上 ホール内にそのような学びの施設があるのは素敵な取り組みですね。

青木 はい、私はこの施設を日本に持ってきたいと考えていて、現在エージェントになっています。私のプライベートの会社「見るデザイン」として、この「フィルハーモニー・デ・ザンファン」を日本に持ってこようとしています。名称は「フィルハーモニー・フォー・キッズ」として、現在関西地方での展開を検討中です。東京でも良い場所があれば探しています。

この施設の特徴は、デザイナーがしっかりとデザインしていて、洗練されたデザインでありながら親しみやすいバランスのとれた空間という点です。子どもたちも楽しみながら、芸術性としても高い評価を得ています。

例えば、APイノゲート大阪で「フィルハーモニー・フォー・キッズ」オープンに向けてポップアップ的なイベントを実施して、そこから本施設へと人の流れをつくるという展開もあるかもしれませんね。フランス政府の文化機関からもサポートがありますし、APイノゲート大阪さんにも会場提供と企画をサポートいただくことで体験型コンテンツのイベント化をするような仕組みも可能性はあると思います。

最上 素敵なご提案ありがとうございます。APイノゲート大阪の立地的にもこの場所のポテンシャルは大きいと思っています。大阪駅前の開発も進んでいるタイミングだからこそできることがあるのではないでしょうか。弊社としても、方向性として「スペース×アート」や「スペース×エンターテインメント」「スペース×学び」という掛け算の可能性を追求し続けることが重要ですね。

具体的には、コンテンツが面白ければ、APを利用しやすい環境を主催・企画する方々に提供することも考えています。やはり最初の立ち上げ時にはプロモーションとしてイメージを先進的にして、「ここでやることが憧れ」という状況をつくることを意識しています。

新拠点の可能性

――新しい拠点のAPイノゲート大阪について、改めて今後期待することを教えてください

青木 やはり万博もありますし、最適な視野でグランディングされるというのも一つの手だと思います。情報や人というのは、すべてのビジネスの源になるものです。いかに世界の新鮮な情報をちゃんと共有できる環境づくりが重要です。

例えば、私は毎年4月にイタリアのミラノで開催される、世界最大規模の家具見本市「ミラノデザインウィーク」のレポート報告会をトップジャーナリストと一緒に実施しているのですが、東京では300人のホールが満員になるほど人気があります。そういったイベントを大阪でも開催できれば良いと思います。世界の先端的な仕事をしている方々の知見を共有することで、大阪にいながら世界目線で活動できます。

そのためには大使館との連携も有効です。大使館はその国の文化をプロモーションするために努力されていますから、そういったサポートも活用できます。万博で来日する方々との交流の場をAPイノゲート大阪が提供するというのも面白いでしょう。各国同士が交流する場を作ることで、普通とは違うベクトルの印象を与えることができます。自分たちで何かをやるだけでなく、力のある機関全体を巻き込んでいく俯瞰的な視点が大切です。

また、探究心を持ち続けることも重要です。クリエイティブに特化している人は、マネジメントや経営、リーダーシップを課題にしている方も少なくありません。あるいは、ものづくりに長けた方は、「伝える」「届ける」という面も磨いていく必要があります。

例えば、ミラノサローネの代表とのつながりも、お互いに価値を提供し合う関係性から生まれています。日本でミラノサローネをもっと深く知ってもらうために協力し、逆に彼らにとって有益な提案ができるような関係性を構築しています。

最上 誰かが誰かのお客様という循環を理解することが重要ですね。例えば、青木さんがおっしゃるように家具屋さんにとってのお客様は消費者、ショップにとってはメーカー、メーカーにとってはクリエイターという循環を意識した動きをされていることを感じました。

この循環を理解した上で、先に相手が喜ぶ仕組みをつくっておくと、プロジェクトが進めやすくなりますよね。単にものをつくることに専念するだけでなく、最後までつなげることを考えると、より具体的な内容になっていくのだと学びました。

そのためには、自分ひとりでゼロから考えるのではなく、様々なアイデアや力を持つ人とのつながりをつくっておくことが大切なんですね。ビジネスの資金的な関係ではなく、お互いにやりたいことを実現させる関係を築くことで、よりよい成果につながるのだと思いました。

コロナ以降、離れてしまったコミュニティを再構築するために、フランクな会をやるというアイデアもヒントになりましたし、オフィシャルのパーティーとプライベートの飲み会の間にあるような場をつくることで、新しいコミュニティが生まれる可能性などもみえてきました。

スペースだけでは魂が入らないので、場所と意図がちゃんと結びつく必要があるということですね。特に最初は、みんなに共感を生むような仕掛けで、みんなが欲しくなるような場を仕掛ける。そうした取り組みが広がっていくと、人が集まりやすくなるのだと、会場自体がコネクタの役割を果たせたらと想いを新たにしました。

対談のようす

 

内覧会DAY1のセッション後。「APイノゲート大阪」Room J+K会場にて

 


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