FIFAがサッカーワールドカップなど商業・イベント運営の新会社設立へFIFA Forward Enterprise(FFE)

FIFAがサッカーワールドカップなど商業・イベント運営の新会社設立へFIFA Forward Enterprise(FFE)

国際サッカー連盟(FIFA)は2026年7月28日(火)、ワールドカップなどの商業権とイベント運営を統括する新会社「FIFA Forward Enterprise(FFE)」の設立方針を正式に発表した。FIFAが100%保有する完全子会社として設立し、外部投資家に対して最大20%の少数株式を売却することで最大42億米ドル(約6,200億円)を調達する計画。FFEの初期株式評価額は200億ドル(約3兆円)とされている。調達した資金はすべてサッカーの発展・支援に再投資するとしており、FIFA加盟211協会への開発資金を現行の最大8倍超に拡大することを目標としている。ただし本計画はFIFA加盟211協会の過半数の承認とFIFA理事会による必要な規定変更の承認を条件としており、現時点では正式決定に至っていない。

FIFAワールドカップ2026の成功が構想を後押し 史上最高の大会を経て

今回の発表は、2026年6〜7月に米国・カナダ・メキシコの3カ国共催で行われたFIFAワールドカップ2026の直後に行われた。同大会はFIFA史上最も成功した大会として記録されており、スタジアムおよびファンフェスティバルへの来場者は合計約1,600万人、放送権収益なども含めた総収益は120億ドル規模に達する見通しだ(最終会計は未確定)。新チャンネルや革新的なコンテンツ形式を通じて、世界中から数十億人規模の視聴者が集まった。

インファンティノ会長は今年4月のFIFAコングレス(カナダ・バンクーバー)の場で既にこの方向性を示唆しており、7月19日の決勝前日にはFIFA理事会と加盟協会に向けた演説の中で「FIFAが保有する商業ポテンシャルを解放する」という意図を改めて明確にしていた。

また同大会では、FIFA Forwardプログラムによる10年以上の継続的な支援を受けてきたカボベルデやキュラソーといった新興国がワールドカップの舞台に立ち、開発投資の成果が形として示された大会ともなった。こうした成果の積み重ねが、今回の大規模な商業化構想の背景にある。

FFEとは何か 放送・スポンサー・チケット・ライセンス・運営を一元化する商業子会社

FIFA Forward Enterprise(FFE)は、FIFAが保有する商業権とイベント運営実務を一元的に統括するために新設される子会社だ。具体的には、放送権・スポンサーシップ・チケット販売・ライセンス契約といったFIFAのすべての商業権と、ワールドカップ・クラブワールドカップをはじめとするFIFA大会の運営実務がFFEの管轄となる。

ただし、FFEはあくまでFIFAの「商業・運営部門」を担う組織であり、サッカーのガバナンスに関する権限は一切FFEに移管されない。FIFAはFFE設立後も、サッカーのルール・競技規則・国際試合カレンダー・審判規定・スポーツとしての意思決定に関するすべての「独占的権限」を保持し続けるとしている。外部投資家はFFEの少数株主として財務的な恩恵を受けるにとどまり、運営への関与は一切行わない設計だ。

FIFAは声明の中でこう説明している。「FIFA理事会と理事会は、このプロジェクトの発展を管理する義務を持つ。外部投資家はFFEにおける少数株式のみを持ち、運営上の役割を担うことはない。同様に、彼らはFFA自体ではなく、FIFAの子会社に投資するのであり、FIFAにとって何も変わらない」。

加盟協会への開発資金を最大8倍以上に拡大 4つの資金プログラム

FFE構想の中核をなすのが、FIFA加盟211協会への開発資金の大幅増額だ。現行のFIFA Forwardプログラムでは各加盟協会への配分が1サイクル(4年)あたり800万ドルとなっているが、FFEが承認されれば以下の4つのプログラムが提供される。

①FIFA Fast Forward Programme(FFFP)による特別資金:スタジアム・ナショナルトレーニングセンターなど、単一の開発サイクルでは実現が難しい長期インフラ整備向けに、各協会が任意で最大2,000万ドルの一時的な追加資金にアクセスできる。参加は任意で、強制されるものではない。

②2027〜2030サイクルのForward資金:各協会あたり2,000万ドル(現行の800万ドルから2.5倍増)。インフラ・コーチング・ナショナルチーム・競技・グラスルーツフットボール・女子サッカーを支援する。

③2031〜2034サイクルのForward資金:各協会あたり2,200万ドル。

④2035〜2038サイクルのForward資金:各協会あたり2,400万ドル。

これらを合算すると、既存のFIFAプログラムと合わせた今後4年間の開発資金の合計は100億ドル超となる見通しだ。これはあらゆるスポーツ組織がこれまでに行った開発投資の中で最大規模だとFIFAは位置づけており、インファンティノ会長は「どんなに小さな国・最も遠隔地にある地域にも重点投資する。すべての加盟協会は規模・資源・地理的な条件にかかわらず、自らの将来を決める声と機会を持つべきだ。これはサッカーの民主化だ」と述べた。

民主的プロセスを経た承認を前提 加盟協会への同意を重視

FIFAは通常、特定のベンチャー向けに子会社を単独で設立することができるが、今回の案件はその戦略的重要性の大きさから、加盟協会とFIFA理事会を巻き込む形で協議を進めることを選択した。FIFAは声明の中で「FIFAの民主的・ガバナンス原則を完全に尊重したうえで、本新構造の発足は加盟協会の過半数の支持と、FIFA理事会による必要な規定更新の承認を前提とする」と明記している。

インファンティノ会長は今回の構想についての協議に向けて、9月19日を目安として加盟協会に意見表明を求めているとされる(複数の報道による)。FIFAは、今回のような大規模な構造変更については加盟協会の民主的な意思決定を通じて進める姿勢を強調しており、「加盟協会は参加するかどうかを自ら決定できる」としている。

投資家候補にKushner一族関連のThrive Eternal J.P.モルガンが財務アドバイザー

FIFAは、FFEの投資家候補として「Thrive Eternal」(パーマネント・キャピタル型投資会社)が提案者グループの筆頭となる見込みだと発表した。Thrive EternalはトランプWH大統領の義弟にあたるJoshua Kushner氏が創業したベンチャーキャピタルThrive Capitalと関連があるとされており、その政治的な近さが物議を醸している。なお、FIFAのリリース内ではKushner氏の名前は直接言及されていない。

商業アドバイザーとして関与するのはGreg Maffei氏(BANN Ventures CEO、元Liberty Media社長兼CEO)で、Liberty Media時代にフォーミュラ・ワン(F1)の買収・保有を主導した人物として知られる。財務アドバイザーにはJ.P.モルガンが起用されており、OpenEconomicsも見込み投資家との対話に関与している。投資家グループはヨーロッパ・南北アメリカ・アジア・アフリカから地理的に多様な構成を目指しており、複数地域からの関心表明が既に寄せられているという。

UEFAとCONCACAFが強く反発 「サッカーは売り物ではない」

この発表に対して、欧州サッカー連盟(UEFA)は即座に強い反発を表明した。「私たちの誰もサッカーの所有者ではない」「サッカーのガバナンス機関が越えてはならない一線を越えた」と声明を出し、55の欧州加盟協会を代表する立場から計画への反対姿勢を明確にした。UEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長は「ワールドカップはFIFAが売るものではない」と述べたとされている。

北中米・カリブ海を管轄するCONCACAF(35の加盟協会が所属)も「関連するガバナンス機関とステークホルダーとの議論が行われる前に発表された」として「正当なプロセスを欠く」と懸念を表明した。FIFAワールドカップ2026の共催国を多く抱える同連盟からの反発は、今後の協議において重要な変数となる可能性がある。

インファンティノ会長の声明 「次の成長段階に必要な構造を」

インファンティノ会長は今回の発表に際して以下のような声明を発表している。「サッカーは世界で最も人気のあるスポーツであり、人間と社会の発展にとって並外れた原動力だ。ゲームの一部の領域はその人気を驚くべき商業的価値に転換している。私たちはその成功を称え、継続させたい。なぜならそれはゲーム全体を引き上げるからだ。私たちの仕事は、世界のすべての角においてサッカーの残りの部分がともに成長することを確かなものにすることだ」。

「私たちの次の成長段階には、それに見合った構造が必要だ。商業的な側面が集中した専門ビジネスとして機能し、その価値が世界全体でより広く・より良く共有されるものでなければならない。すべてのFIFA加盟協会が利用可能な資金の公平な分配を求め、他者に頼るのではなく自ら未来を形成する機会を持つべきだ。これが、世界中のサッカーの民主化についてのことだ」。

他スポーツとの比較 F1・NFL・NBAも類似の商業化構造を採用

FIFAのリリースは、今回の構想の正当性を補強するために、他の主要スポーツ団体が類似の商業子会社化を行ってきた先例を挙げている。大陸別・国別のサッカー統括団体やリーグも含む多くの主要スポーツ組織が、近年において「持続可能な成長を実現し、それをスポーツ自体に再投資する」という同じ長期目標のもとで商業運営の再編を行ってきたとしている。フォーミュラ・ワン(F1)がLiberty Mediaによる買収後に商業価値を大幅に拡大させた事例は、Greg Maffei氏がアドバイザーを務めることとも相まって、FIFAが参照するモデルの一つとみられている。

イベント・MICE業界への影響 放送権・会場運営・スポンサー構造が変わりうる

イベント・MICE業界の観点からは、FFEが実現した場合、FIFA大会の放送権・スポンサーシップ・チケット・ライセンス・会場運営がひとつの商業法人に集約されることの影響は小さくない。これまでFIFAという非営利団体が担ってきた大会運営に外部の商業資本が株主として関与することで、例えば放送権の高額化(FIFAは2030年・2034年大会の放送権を最低10億ドル以上と位置づけている)、DTC(直接消費者向け)配信モデルへの転換、スタジアム・ファンイベント運営の商業化加速など、ビジネス構造の変化が進む可能性がある。

国際会議・MICE市場においても、これまでFIFAのイベント部門と協力関係を持ってきた開催都市・会場・PCO・イベント運営会社にとって、契約先・交渉相手の組織構造が変わりうるという実務的な変化が生じる可能性がある。計画の行方は加盟協会の投票結果次第だが、現時点で承認・否決のタイムラインは明示されていない。

発表概要まとめ

発表日 2026年7月28日(火)15:00(スイス・チューリッヒ現地時間)
発表者 FIFA(国際サッカー連盟)/ ジャンニ・インファンティノ会長
新会社名 FIFA Forward Enterprise(FFE)
位置づけ FIFAの100%保有子会社(商業権・イベント運営を統括)
株式評価額 200億米ドル(初期評価)
資金調達目標 最大42億米ドル(外部投資家への少数株式売却、最大20%)
調達資金の使途 全額をサッカー発展(FIFA Fast Forward Programme)に再投資
加盟協会への資金配分(FFFP) 各協会最大2,000万ドルの特別資金(任意・一時的)
加盟協会への資金配分(Forward) 2027-30:各2,000万ドル/2031-34:各2,200万ドル/2035-38:各2,400万ドル(現行:800万ドル)
想定開発資金総額(4年間) 100億ドル超
投資家筆頭候補 Thrive Eternal(パーマネント・キャピタル型投資会社)
商業アドバイザー Greg Maffei氏(BANN Ventures CEO、元Liberty Media社長)
財務アドバイザー J.P.モルガン
その他アドバイザー OpenEconomics
承認条件 FIFA加盟211協会の過半数の賛成 + FIFA理事会の必要な規定変更の承認
FIFAの権限(不変) ガバナンス・競技規則・国際試合カレンダー・審判規定など、すべてのスポーツ的決定
主な反対意見 UEFA「ガバナンス機関が越えてはならない一線を越えた」、CONCACAF「正当なプロセスを欠く」
公式メディアリリース FIFA公式メディアリリース(英語)
FFE公式ページ FIFA Forward Enterprise(inside.fifa.com)

出典:FIFA公式メディアリリース「FIFA intends to expand football development funding to over USD 10 billion subject to approval by FIFA Member Associations」(2026年7月28日、FIFA本部・スイス・チューリッヒ)
参考報道:ABC News、CNBC、ESPN、NBC News、CBS Sports、TIME、Financial Times(いずれも2026年7月29日報道)

 

関連記事

広告

エテルー新感覚エナジードリンク

エナジードリンク「Ehtel(エテル)」発売記念イベント「Ehtel -"Release" Party-」が渋谷ストリームホールで開催 

pr

イベント大学 by イベント学会

イベント大学 Powered by イベント学会   感動、喜び、発見、楽しみ。イベントには新たな時代を創る力がある。イベント学会最大のリソース=会員の知識・知恵の共有と活用、個人会員/賛助会員とも相互にもっと知り合う場を創出する

イベントの未来をつくる105人

イベントの未来をつくる105人 森ビル 虎ノ門ヒルズフォーラム   時代とともに進化していくイベント。 そのイベントの未来の形を考えながら、これから活躍する人々や技術を発掘し、イベントのつくり方などをサポート。5年後10年後の未来を探るコミュニティです。

次号 「AI xイベント」

132号特集: -AI xイベント
(2026年6月30日発行)

〜イベントの仕事はどう変わったか〜
・イベント担当者AI実態調査
・AI×BtoBマーケの現場
・AI×映像制作の現場

Like Us On Facebook

Facebook Pagelike Widget

イベマケYoutubeチャンネル

イベントマーケティングYoutubeチャンネル

2026-27年 編集計画(特集)

月刊イベントマーケティング 2026-27年編集計画(特集)

 

広告

カテゴリー

ページ上部へ戻る