
全米小売業協会(NRF)は1月11〜13日に、米ニューヨークの展示会場、ジャビッツ・コンベンションセンターで開催した年次大会「NRF2026:Retail’s Big Show」は、過去最高の4万1000人を集め、小売業界の変革を象徴する場となった。人工知能(AI)をフル活用し、店舗体験の進化、製品デザインの高度化を推し進める提案・展示が目立った。
オープニングの基調講演では、グーグル最高経営責任者(CEO)のサンダー・ピチャイ氏とウォルマートCEOのジョン・ファーナー氏らが登壇した。グーグルは生成AIを活用した新しい電子商取引(EC)の共通規格「Universal Commerce Protocol(UCP)」を発表した。

基調講演でAI戦略を強調するグーグルのサンダー・ピチャイCEO=NRFサイトから
UCPは、AIエージェントが消費者と小売企業の仲介役となり、商品検索から決済、配送手配までをシームレスにつなぐ「エージェント・コマース」の基盤であり、ピチャイ氏は「発見から決定、そしてその先まで顧客関係を中心に据えた」とUCPの狙いを説明した。
新規格の最大の特徴は「ネイティブ・チェックアウト」機能だ。グーグル検索のAIモードや対話アプリ「Gemini」上で、消費者がAIと会話しながら商品を絞り込み、画面を遷移することなくその場で「購入ボタン」を押して決済まで完了できる。
実は、グーグルは直前の1月6-9日に、米ラスベガスで開催されていた世界最大級のテクノロジー展示会「CES2026」では、大規模な出展を見送った。NRFはCESに比べて参加者数などの規模は劣るが、小売りという観点では、業界各社のCEOを始めとする意思決定権者の参加比率が高い。グーグルがNRFを選んだ理由はそこにある。(ちなみに、グーグルはCESで商談会は実施した)
米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)もAmazonやパートナー企業とともに、小売業および消費財企業が生成AIや最新技術を活用して、運用の最適化、マーケティングの効率化、シームレスな購買体験を実現するためのソリューションを展示した。AIを活用し、短時間で製品デザインを行うコンセプトをスーツケースを題材に展示した。

AWSはAIを活用した製品デザインの手法を展示した
日本企業では富士通が気を吐いた。2025年に完全子会社とした独GK Software SE(以下、GK) と、共同出展した。特に注目を集めたのは、因果AIと呼ばれる技術を使ってマーケティングを高度化する展示だった。購入に至る因果関係を分析し、商品購入に導く方法を提案する。AIエージェントは、商品の推薦、販促文の作成、クーポンの配布なども行える。

NRF2026に出展した富士通とGKの共同ブース
外食産業のDXも主要なテーマだった。メキシカン・ファストフードチェーンのタコベル最高デジタル・技術責任者のデーン・マシューズ氏は、AIで顧客体験を向上させた事例を披露した。
フードサービスイノベーションゾーンには、自動車のレーシング場を模した展示場「The Pit Stop」を設けた。レストランやファストフード店の未来を体感できる。参加者はゴーカートのハンドルを握り、ドライブスルーでの注文と受け取り、オンラインまたはカウンターでの注文、そしてロボットによる配達の予約などを体験した。

フードサービスのイノベーションもNRFの重要なテーマだ
NRF2026ではまた、返品処理や再販売、循環型経済(サーキュラーエコノミー)をテーマとするエリア「NRF Rev」を近隣のシェラトン・ニューヨーク・タイムズスクエア・ホテルに新設した。米国では、日本に比べて返品に対して寛容な商習慣があるが、返品物流コストが増大している。返品を単なるコスト要因から、利益を生み出す「戦略的プロセス」へ転換する議論が活発になっている。オンラインショッピングが普及する日本でも、いずれ経営上の論点になりそうだ。

ベンチャーキャピタリストによるパネルディスカッションも開かれるなど、返品や循環型経済への関心は高まっている













