NoMaps2019 未来という名の最高峰 ルートはひとつではないと教えてくれる

画像:NoaMaps2019 地下空間チ・カ・ホを活用したイベントも

10月16日から「NoMaps2019」がスタートした。10月20日までの5日間、札幌市内中心部のホールや札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)、狸小路5丁目を中心に約100以上のセッションを市内広域10会場を使って開催される。

クリエイティブな発想や技術によって、次の社会、未来を創ろうとする人たちのためのベースキャンプとしている「NoMaps2019」では、”Mt.MIRAI 未来という名の最高峰が僕らの挑戦を待っている”をテーマに展開する。
オープニングで実行委員長の伊藤博之さんは「2016年のゼロ回も含めると、今回で4回目の開催。音楽、映画祭、テクノロジーを含めたビジネスカンファレンスと大きく分けて3種類のイベントが一緒になったもので、それぞれの共通項はクリエイティブ。何かをつくる、表現することで結びついている」とする。
画像:NoMaps2019 オープニングで挨拶する伊藤博之実行委員長

NoMaps2019 オープニングで挨拶する伊藤博之実行委員長

 

また、北海道の地で開催する理由について伊藤さんは「インターネットが登場して、当然のように日常で使うものになった。その上にビッグデータ、IoT、AIをつかったシステムが稼働して、世の中がどんどんスマート化している。それは農業、漁業、観光業、すべての産業に波及すべきもので、北海道はそういった産業が盛んな地域でテクノロジーの恩恵を最も必要とする場所でもある」とし、「同時に行政や企業とのコンビネーションが必要。NoMapsではリスクを考え二の足を踏む前に、社会実装を推し進めるため、大学研究機関にも参加いただいている。札幌の街を実証実験の聖地とみなして、新しいチャレンジを行い、それがよりよい行政サービスにつながり、スタートアップの流れをつくって、最終的にハッピーになることを願っています」と思いを伝えた。
カンファレンス、展示、交流、イベント、実験と5つのプログラムを同時展開する「NoMaps 2019」初日をレポートする。
-展示
展示イベントを中心に、街行く人たちが気軽に参加し、未来を実感し、新しいものにチャレンジするきっかけづくりになれば、と地下の歩行空間など街中でも開催された。
画像:NoMaps2019 札幌駅前通地下歩行空間チ・カ・ホも会場に

NoMaps2019 札幌駅前通地下歩行空間チ・カ・ホも会場に

街なかに街を展示「日本オラクル」
画像:NoMaps2019 展示に参加した日本オラクル株式会社
クラウドサービスを社会実装した街、スマートシティをロゴを使って表現した日本オラクル。「お子さんを連れた方もよく足を留めてくれます」と話す横山慎一郎さんは、「たとえば、お子さんが大きくなった時に電車や電力エネルギーなど、自動化するような仕事や、なにかをつくる仕事に興味をもってもらえればうれしい。将来はこうしたことができるんだよ、と形で示したかった」とレゴで街を表現したと話す。
日本オラクルでは昨年からNoMapsに参加。昨年は実証実験でサクラマス陸上養殖をIoT・AIを活用した事業として展開した。この実験をきっかけに「魚でこうした取組みができるのならば、ほかの動物でもできるのではないか」と道内の別の産業からも声がかかるなど、つながりが生まれたという。

NoMaps2019の展示に参加した日本オラクル 横山慎一郎さん

横山さんは「いまの課題に対して提案することももちろん大事だけれど、NoMapsなどの実験では未来の社会課題を解決するという点でモチベーションが上がった」と話す。「社会課題というととてつもなく大変なことに思えるけれど、意外に身近なところにあって、まずはやってみる。 一つめを素早くやることで、広がりがみえてくることがある。完璧ではないけれど、一箇所でも改善できれば次につながることを実感した」という言葉にNoMapsへ参加する理由が表れていた。

緊張するけどうれしい!「北海道ハイテクノロジー専門学校」
画像:NoMaps2019の展示に参加した北海道ハイテクノロジー専門学校の作品「海中旅行」
札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)という、人通りが多い場所での展示に目を輝かせてよろこんでいたのは北海道ハイテクノロジー専門学校1年生の学生チームだ。「いろんな人の目に触れられるのは、緊張もあるけど、うれしいの一言です」と話す(東遙花さん)。
北海道ハイテクノロジー専門学校では、プログラミング、デザインなどいろんなことに挑戦できる。NoMaps参加は2度目で、前回もプロジェクションマッピングを展開した。「今回もプロジェクションマッピングをするなら、水がきれいに表現できるのではないか」「会場となるチ・カ・ホやプロジェクションマッピングの環境空間と水族館は暗さが似ていて、題材とマッチするのでは」など試行錯誤。企画に1ヶ月を費やし、展示作品「海中旅行」を完成させた。デザイン、プログラミング、岩の造作、音などの実作業は10日間ほどだったという。

北海道ハイテクノロジー専門学校の左から大作明生さん、中山怜先生、東遙花さん、柳原光陽さん

 

中山怜先生の指導のもと、普段はセキュリティ関連を専攻する大作明生さん、プログラミングを専攻する柳原光陽さんのふたりはプロジェクションマッピングのプログラミングを担当、webデザインを専攻する東遙花さんはイラスト、デザインを担当した。
柳原光陽さんは、実際にプロジェクションマッピングの仕事に興味があると話していた。
-実験
一般対象に札幌市初の自動運転試乗体験会
画像:NoMaps2019自動運転試乗体験会
一般対象に札幌市初の自動運転試乗体験会が行われる。特別予約サイトには多くの応募があり、申込み定員の200名はすぐに埋まったという。
群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センター副センター長の小木津武樹さんが同乗し、解説いただきながら自動運転試乗を体験した。
まずは乗車前に、車載された自動運転システムについて説明を受けた。車の上には、レーザーセンサー、GPSアンテナ(4つのGPSから測定。2cmの精度で場所を把握できる)で位置を把握、カメラも搭載されている。レーザーセンサーは360度周囲に照射し、ぶつかって戻ってくるまでの時間で距離を計測するもの。1回転で10万点ほど照射し建物など景色を把握する。一度手動で走り、センサーで把握したデータと照合する形で位置を把握する仕組みだ。
画像:NoMaps2019自動運転試乗体験会で解説する群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センター副センター長の小木津武樹さん

群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センター副センター長の小木津武樹さん

カーメーカーとの自動運転のアプローチの違いは、メーカーがあらゆる場所を走ることを志向しているのに対し、センターでは地域限定・路線限定で動く仕組みを目指している。限定することで、より信頼性の高いデータを確立し、無人化に早くアプローチする。たとえば、病院へ行くルートのみなど高齢化した地域でのニーズに対応が期待できる。地域限定・路線限定することで、車載するコンピュータも小さくできることもポイントだ。
 小木津さんは「2020年、どこか相性のよい地域での実用化を目標にしています」と話す。地域民の周知が進んでいて機運が高まっていること、自動運転が走らせやすいルートがあること、経済性があることの3つの条件が整っている地域は数カ所あるという。まずはスモールスタートで段階的にシステムの高度化を目指す。
乗り心地は、手動とほぼ変わらない。とてもスムーズだ。じつは、2017年のNoMapsでも自動運転試乗はごく一部の関係者で実証実験をしており、今回一般200名という規模での体験会は初。前回の体験者によると、「今回は曲がるときのスムーズさに進歩を感じた」と乗り心地の良さを好評していた。

▼動画で見る自動運転試乗体験(1分30秒の左折するハンドルの動きに注目)

-カンファレンス
画像:NoMaps2019ビジネスカンファレンス会場
3日間のビジネスカンファレンスで30本のセッションを実施。初日の基調講演となる「MITメディアラボ副所長 石井裕スペシャルキーノート〜未来競創〜」にはACU-Aの大きな会場に立ち見がでるほど。1時間でこれまでの研究人生を振り返るという密度の濃い内容となった。「もともとテクノロジーに興味があって1人で参加した」という北海道大学で法律を専攻しているという学生さんも。
画像:NoMaps2019 「都市型フェスティバルの未来」のセッション

「都市型フェスティバルの未来」のセッション

 

また、「都市型フェスティバルの未来」として、No Mapsをはじめ、街なかで開催される都市型フェスティバルを展開する、神戸「078」、東京「YouGoEx」改め「ちょっと先のおもしろい未来」、福岡「明星和楽」の実行委員長、事務局長が集まり、都市部で開催される、音楽、映画、IT、芸術、スポーツ、食などさまざまな分野が融合した複合型のフェスティバル「都市型フェスティバル」を運営する立場から、開催の背景やそれぞれの目指す姿、巻き込み方を展開。「流動化する社会における”地方から見た”都市型フェスティバルの役割」について語られた。

-イベント
画像:NoMaps2019 「第14回札幌国際短編映画祭」
今回、残念ながら初日では回り切れなかったが、「第14回札幌国際短編映画祭」が札幌プラザ2・5でオープニングイベントを皮切りにスタートしている。17日からはノミネート作品が上映され、オールナイトプログラムも(〜20日まで。札幌プラザ2・5/EDiT)。2006年からはじまった映画祭で、No Mapsとコラボしている。
画像:NoMaps2019の「第14回札幌国際短編映画」の国際審査員ステファン・ファングマイヤーさん

NoMaps2019の「第14回札幌国際短編映画」の国際審査員ステファン・ファングマイヤーさん

 

また、17日夜からTANUKI the Showtimeが狸小路5丁目エリアを会場にスタート。「SUNTORY BAR AVANTI 5」がMUSIC BARとしてオープンし、6組のアーティストが音楽を届けるほか、ストリートライブペインティングを旧北海道ツーリスト・インフォメーションセンター前で実施。2人のアーティストが制限時間3時間で作品を描き上げる(18日18時〜・19日16時〜)。
-交流
画像:NoMaps2019ではMeetupを重視。毎日夜に交流の場が設けられた
もっともNo Mapsらしいと言えるのが、交流。今年は、会期の前からプレス発表などもオフィシャルミートアップ「the Meeeeeeeet」とスタイルを変えて複数回開催。コミュニティをつくるように重ねていった。
期間中には、ミートアップイベントを連日夜開催。カンファレンスの会場となったACU-Aにもラウンジや交流会の部屋が設置されているが、それとは別にすすきのに場を移し、バー42BARを貸切。「42BAR NoMapsナイトタイムミートアップ!」として、各日テーマを変え、ドリンクを交えながらの交流の場をつくっていた。
画像:NoMaps201942BAR NoMapsナイトタイムミートアップ!16日はサッポロビールPresentsで開催された

42BAR NoMapsナイトタイムミートアップ!16日はサッポロビールPresentsで開催された

また、オフィシャルラウンジが街中にも登場し、異業種・異世代の出会いや交流、新しいアイデアやビジネスを生み出すきっかけを創出している。

NoMapsの特徴は、街なかで気軽にクリエイティブな発想に立ち会えることと。また、一歩踏み出して、屋内で開催されているカンファレンスに参加すればさらに新しい気づきやアイデアに出会えるだけでなく、スピーカーや同じ興味をもつ参加者とラウンジ、交流会で共有することができることだ。

アプローチや表現方法の多様さにも発見がある。 今回のテーマは”Mt.MIRAI 未来という名の最高峰が僕らの挑戦を待っている”だけれど、Mt.MIRAIへのルートはひとつではないことを教えてくれる。

NoMapsは会期2日間を終え、残り3日間。まだまだたくさんの出会いが待っている。

 

NoMaps2019

会期:2019年10月16日(水)〜20日(日)

会場:札幌市内中心部のホール、札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)、狸小路5丁目など

https://no-maps.jp

 

画像:NoMaps2019NoMaps総合受付は札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)に。一部チケット販売やNoMapsに関する案内は受付へ

NoMaps総合受付は札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)に。一部チケット販売やNoMapsに関する案内を行っている

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