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expo study meeting vol.03 ライゾマティクス齋藤精一と考える「万博」の前後左右レポート

expo study meeting vol.03 ライゾマティクス齋藤精一と考える「万博」の前後左右レポート »

クリエイターが中心となって万博について考える勉強会expo study meeting。これまでクリエイティブディレクター、コミュニティデザイナー、博覧会マニアなどの有識者を迎えて、2回開催されている。8月23日に開催されたexpo study meeting vol.03では、勉強会から趣向を変えて“ブレスト風”で展開。コミュニティデザインに精通した服部滋樹さん(graf)をファシリテーターに、2020年ドバイ万博のクリエイティブアドバイザー齋藤精一さん(ライゾマティクス)をゲストに迎えて、吉田貴紀さん(BYTHREE)、山根シボルさん(人間)が2025年の万博への「企画」や「アイデア」を提案する形で行われた。

齋藤 精一さん ライゾマティクス 代表取締役 1975年神奈川生まれ。2006年にライゾマティクスを設立。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている。京都精華大学デザイン学科非常勤講師。2013年D&AD Digital Design部門審査員、2014年カンヌ国際広告賞Branded Content and Entertainment部門審査員。2015年ミラノエキスポ日本館シアターコンテンツディレクター、2018年グッドデザイン賞審査委員副委員長、2020年ドバイ万博日本館クリエイティブアドバイザー。

 

服部滋樹さん

graf代表、クリエイティブディレクター、デザイナー。

1970年生まれ、大阪府出身。美大で彫刻を学んだ後、インテリアショップ、デザイン会社勤務を経て、1998年にインテリアショップで出会った友人たちとgraf を立ち上げる。建築、インテリアなどに関わるデザインや、ブランディングディレクションなどを手掛け、近年では地域再生などの社会活動にもその能力を発揮している。京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科教授。

第一部「万博を考えるためのガイドラインとアイデア」

 

―クリエイティブを判断できる組織体制を万博に

 

第1部は、「万博を考えるためのガイドラインとアイデア」をテーマに展開。冒頭で、吉田さん、山根さんが万博誘致時に大阪のクリエイターとして万博に関わりたいと試行錯誤し、フリーペーパー「はじめて万博」を勝手に創刊に至った活動経緯を解説した。

 

服部さん、齋藤さんからは、これまでの万博での制作決定プロセスや経験談を踏まえ、これからの万博とクリエイターの関わり方について、なぜ大阪・関西万博にはクリエイターのチカラが必要なのか、どう、いつ、はじめるべきか、といった提言が共有された。

 

齋藤:僕は、万博では2015年ミラノエキスポ日本館シアターコンテンツディレクター、2020年ドバイ万博日本館クリエイティブアドバイザーをさせていただいています。大阪・関西万博では、万博計画具体化検討ワーキンググループの委員で、それこそ服部さん、吉田さん、山根さんにも博覧会委員会を通じたインタビューで意見出しをお願いしました。

 

服部:齋藤さんは万博関係はいろいろと入っているよね。

 

齋藤:はい、いろいろとさせていただいて、2015年ミラノ万博での経験から、「ドバイ万博にはクリエイティブを判断できる組織をつくらないといいものができない。PRから、宣伝、建築、衣装まで、すべてに判断ができる人材をなかに入れるべき」と伝えました。クリエイティブアドバイザーはドバイ万博からできたものです。公示されて、応札しました。僕のほかに、コピーライティング分野で小西利行さんが選出されています。

 

今回の大阪・関西万博では必ず次世代の才能の開発、というのは出てきます。吉田さん、山根さんが誘致活動のときに行政に何度も提案に行っても受け入れられなかった、という事情はある程度わかるんだけれど、本来であれば、なんらかの形で受け入れてくれる方法ができないかなと。でも、彼ら行政側はなかなか柔軟にできないじゃないですか。僕がこれまで学んだのは、行政の事情も把握していないと歯車が合わない、ということ。それなのに、ずっと話しているとうるさ型になる、面倒くさいひとになる、というのを学びました。僕は前、めちゃめちゃ面倒くさいひとだったので(笑)。

 

山根:ちなみに、はじめて万博のフリーペーパーには、僕らだけではなくて、たくさんの大阪のクリエイターが関わっているんですよ。無償でという方も多くて、やっぱり万博には関わりたいと思っているひとが多いし、声をかければ参加したいという方も多いんですが、どうしたらいいのかわからない。間に入るひともいなければ、窓口もわからない。あやふやなところが多いんですよね。

 

吉田:でも、あやふやなままだとずっと変わらないよね。

 

服部:ポジショニングってあると思うんですよ。あいまいに関わるっていうか、むしろ、当事者になってフリーペーパーに参加するクリエイターもいるわけだから、もうちょっとしたら当事者になるチャンスは出てくるはず。むしろ、チャンスはつかんでいかなきゃいけないわけだから、こういうexpo study meetingという場もつくっているし。齋藤くんが、東京でも同じように場を仕込んでくれているわけで。

 

山根:そうですね。来週8月29日に虎ノ門でも「BACKSTAGE」というイベントで万博についてトークします。

 

服部:だから、この会では意見は出るから、その意見をもって、東京へ行こうよ。僕ら、できるだけやっていきたいなと思っています。皆さんも、なかなか思っていることを口に出す機会って少ないと思いますけど、言っていただいてね。

 

吉田:はい、ここは発言する場にしていきたいですね。

 

―2025年大阪・関西万博はこうしたい

 

服部:斉藤さんなりに、2025年大阪・関西万博がこうあったらいいという意見をワーキンググループで言っているんですよね。かいつまんで教えて下さい。

 

齋藤:まず、BIEという万博をしきっているところがパリにあるんですけど、BIEが万博の意義は「世界中のひとが一つの場に集まって学ぶ場である。それをそれぞれ持ち帰って、文化として、もしくは産業として、それぞれの国、最終的には世界を豊かにすること」としています。そこで、僕が大阪・関西万博で期待したのは、3つあります。

 

まずはひとつ、万博を誘致できたのは「SDGsの実装」です。それが特徴的で、票を得ました。SDGsは17の目標と169の具体化したターゲットがあって、エコの話やジェンダーバランス、エネルギーなど、いろいろとあるんですけど、それがきちんと実装された万博でないといけない、ということ。

 

もう一つは、「産業・行政・業界・関西広域の連携」です。日本は産業はこれまで、鉄道産業や建築業界、医療産業は、全然違う分野・業界でカセット的にとれたんですけど、いまって密接に絡み合っている状態です。Maasであったり、最近はUberであったり、要はインターネットとタクシーが連携している。業界を一つにするようなきっかけを大阪・関西万博でつくっていこうという思いです。民間企業では、経団連がいて、関西には関西経済連合会があるので、そこがそれぞれの事業者、もしくはセクターを、一つにまとめていくきっかけにと思っています。あと、関西って、個人的に外から見ていると、比較的、それぞれの県や市が仲が悪いって思うんです。

 

一同:(笑)

 

齋藤:大阪・関西万博は「・(なかまる)関西」を強調していますから、広域でしっかりやるということをしてほしい。最後に、「スマートシティの実装」をしなければいけないと思っています。日本はスマートシティが遅れているんですね。結果論として進んでいるのが中国です。特にアリババは実証実験をするために街を一つつくって、たとえば救急車が普段より8分早く着くという全体の管理システムをつくっています。それをパッケージとして売っていて、マレーシア政府などが買っています。本来、NEC、日立、富士通など、それ以外でもNTTといったいろんな企業が日本にはあるのに、結局、連携しないからそういったことができないので、大阪・関西万博ではそれを実証する場所として、特区中の特区で夢洲を使おうと言いました。

 

服部:僕は東京でつくられる万博というより関西でつくる万博って言いたいなって思っていて、クリエイターがどれだけ関われるのかということを意識した方がいいと言いました。前に向かって突き進む力をもっているひとをみんなクリエイターと呼べばいいんだけど、そういうひとたちが未来のことを翻訳してくれるんじゃないかと思っています。たとえば、70年の大阪万博ころも、手塚治虫が近未来像を描いてくれていたおかげで、多分、そういう未来になるんだろうと導かれた気がするんですよね。でも、近未来絵図を最近みていないなと。

 

それと、20世紀型のカテゴリーを取っ払いたいという思いがあって、どういうことかというと、経済効率型で生まれたカテゴリーがいま残っている状態なんですよね。建築領域もそう、経済領域もそう、建築と経済の領域をぱっと壁をとった瞬間にどういうことが起こるのか、をどこまで考えられるかが、新しい21世紀型のカテゴリーを生み出す方法論だと思うんですよ。で、それを示していくのに、ちょうどいいのが、この万博だと思っていて、テーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」なんですが、一方でコンセプトが「未来社会の実験場 “People’s Living Lab“」って言っているんです。なので、あらゆるカテゴリーが実験できる場が万博でできないかな、と言っています。

 

―『万博』の前後左右アイデアをマッピング

 

ここから、吉田さん、山根さんがアイデアを発表。今回のexpo study meetingのタイトルが「『万博』の前後左右」ということで、アイデアごとに前後左右マップをつくり、万博を考えるうえでのガイドラインのイメージを共有する試みがされた。

 

マップは、現在から2025年までの万博の前、2025年より後の万博を考えるという時間を示す縦軸と、左側は個人や市民、団体などでできる小さなスモールアクション、右側は国家や行政、国際的なビッグアクションの規模を示す横軸となっている。

吉田さんアイデア「2025万博とクリエイティブに関する情報が集まるメディア」

 

吉田:「2025万博とクリエイティブに関する情報が集まるメディア」というアイデアで、目的としては、万博に関心のあるクリエイターを増やすということ、クリエイターと企業・市民がつながる場づくりです。万博に関する情報というのは公式サイトやみんなの万博新聞でも取り上げられているんですが、デザイン・クリエイティブに関する情報が集約されていないなという印象を受けています。だから、読み物としても有益な、万博のクリエイティブに特化したメディアがあったらいいのではないか。クリエイターが国民的なイベントに、反対も賛成もなく、無関心であることが本当によくないと思っていまして、楽しく、主体的に関わっていけたら、めちゃめちゃ面白いものになるんじゃないかなと。

 

例えば、オリンピックはアスリートが活躍する・盛り上げるもの。だから、万博はクリエイターが盛り上げて、着火剤になって大きな波をつくるべきじゃないかなと。単純に、関西から発信するメディア、クリエイティブに関するメディアをつくりたいなと考えています。

 

齋藤:はい、ここでミソだなというのは、行政では絶対に無理だと思うアイデアであるところ。で、こういうメディアは思いついたら、明日からでもはじめちゃえばいいんじゃないかなと思います。

 

吉田:いま、準備を進めています。

 

齋藤:あっ、そうなんだ!そうなると広域で、大阪もそうだし、京都もそうだし、いろんなところでやっている若手限定なのか、わからないけど、そのひとたちがちゃんと一つのプラットフォームに乗るというのは、実現したらすごく波及力は高いと思います。で、実際にできたら、万博側も無視できないので。

 

服部:おおお!そう思う!デザインというか、メディアでクラウドファンディングっぽくやるといいんじゃないかなと。これは誰とやっている、どんな企業とやっているって、もしくは行政と一緒にやろうとしているとか、それも含めて、ここにストックされてもすごくいいような気がする。

 

吉田:応援しやすいといいですよね。

 

服部:そうそうそう!応援のポイント数に応じて、どんどん上に掲載される仕組みで。上位のアイデアは実現するフェーズに入っていく、という。だから、今年度はアイデア募集、次年度は実施、という形で建設的にできそうな気がする。前後左右マップに、マッピングするとしたら、これはオープン以前だから、いまからで縦軸はいいんじゃないかな。

 

齋藤:僕はできれば2030年くらいまで突き抜けてほしい。ずっとレガシーとして続いてほしい。

 

服部:万博のいう未来って、2030年くらいなんでしょ。だから突き抜けたほうがいいよね。

 

齋藤:いまは左よりではじまっていますけど、もう一つ真ん中にも入れてほしい。なんだったら斜めにして段々と広がっていく感じにしたい。

 

 

山根さんアイデア

「トイレの新基準 シン・和式」「性別のないトイレ」「オープントイレ」

 

山根:「トイレの新基準 シン・和式」として「性別のないトイレ」「オープントイレ」というアイデアを考えました。

expo study meeting vol.02 「クリエイターが考える 2025未来社会のデザイン」イベントレポート

expo study meeting vol.02 「クリエイターが考える 2025未来社会のデザイン」イベントレポート »

2025年の国際博覧会(以下万博)が大阪で開催されることが決まり、スタートした「expo study meeting」。大阪のデザイン事務所「株式会社バイスリー」、同じく大阪のWebコンテンツ制作会社「株式会社人間」の2社が主催するこちらの勉強会では、クリエイティブ業界を牽引するゲストや参加者とともに、万博がやってくる近い未来に向けた取り組みについて語り合っている。

 

2019年4月12日、心斎橋ビッグステップにて第2回目となる「expo study meeting vol.02」が開催された。

 

今回は、地域再生やコミュニティデザインに精通した服部滋樹氏(graf代表)、山崎亮氏(studio-L代表)が登壇。「クリエイターが考える 2025未来社会のデザイン」をテーマに、街づくりの観点から万博を考える内容となった。

 

服部滋樹

graf代表、クリエイティブディレクター、デザイナー。

1970年生まれ、大阪府出身。美大で彫刻を学んだ後、インテリアショップ、デザイン会社勤務を経て、1998年にインテリアショップで出会った友人たちとgraf を立ち上げる。建築、インテリアなどに関わるデザインや、ブランディングディレクションなどを手掛け、近年では地域再生などの社会活動にもその能力を発揮している。京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科教授。

 

山崎亮

studio-L代表、コミュニティデザイナー、社会福祉士。

1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院および東京大学大学院修了。博士(工学)。建築・ランドスケープ設計事務所を経て、2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。著書に『ふるさとを元気にする仕事(ちくまプリマー新書)』、『コミュニティデザインの源流(太田出版)』、『縮充する日本(PHP新書)』など。

 

第1部「成熟社会に万博を迎えて」

―2025年、日本が迎える「超長寿社会」

第1部は「成熟社会に万博を迎えて」をテーマに掲げた服部氏・山崎氏による対談。

まずは、第1回目として1851年に開催されたロンドン万国博覧会から1970年の日本万国博覧会まで美術史とともに振り返ります。そして話題は大阪万博を迎える2025年、日本が抱える社会課題へ。

 

服部:山崎くんとよく近未来の社会の状況について話してるんですよね。今日は、万博が開催される2025年に社会がどうなっているのか、我々で仮説を立てながらその課題を明らかにしていこうと思います。

 

山崎:2025年、日本は超長寿社会なんですよね。

 

服部:山崎くんはこの間、東京で『おいおい老い展』を開催してましたよね。

 

山崎:厚生労働省補助事業として、福祉や介護のこれからについてもっと多くの人が考えるきっかけづくりに取り組みました。全国でワークショップを同時開催し、介護や福祉について学びながら「私たちならこんなことをする」と、マニフェストを掲げてもらったんです。それらを集めて、最終的に東京で展覧会を開催。4月からは各チームが実現に向けて動き出しています。

 

―超長寿社会に求められる「デザイン」とは

 

山崎:これをやってみて、日本が今、世界に打って出ることができる領域ってここ(介護・福祉)だよなと実感しました。高齢社会を何とかしないと待ったなしの状態の中「どんなデザインで解決するんだろう」と、世界が日本に注目しているんです。でも、ここでデザインというと「おしゃれな高齢者施設を作ろう」とか考えちゃうんですけど、全く違うんですよ! 「そもそも高齢者をひとところに集めるのはおかしい」というのが本来デザイナーが持つべき感覚で、社会の課題を鋭く見つけて解決するのがデザイナーの役目なんです。たとえば、在宅医療・訪問看護・ヘルパーといった仕組みを集約した拠点を地域に置く。そんな風に、仕組みそのものをデザインすることに力を発揮しないと、デザイナーは小手先の道具に使われてしまいます。

 

服部:確かに、そうなりがちだよね。

 

山崎:1970年の万博以降、デザイナーは企業のデコレーター的存在に変わってしまったんですよね。今、世界のデザイナーもそうなってきているので、2025年には「日本は違うんだ」と、「いのち輝く未来社会のデザイン」とはこういうものだというのを示さないといけないんじゃないかなと思っています。

 

服部:山崎くんは5、6年前から医療や介護のことを言ってるでしょ。前に、高齢者が増える一方でAIに仕事を取られていくという話をしてたじゃない。

 

山崎:そうそう。

 

服部:皆さんご存知だと思いますけど、これから病院のベッド数がどんどん足りなくなっていくんですね。かといって、若い世代が少なくなる中で病院を新しく建てるのは効率が悪い。

 

山崎:一人当たりのベッド数が多い県ほど医療費がかかってるんです。医療費が2割負担だとすると4割は税金、4割は医療保険ですから、お医者さんにかかる度に税金と保険のお金を引き出すことになります。自分たちの地域に病院を作れば作るほど、病院にかかる人が増えるという調査結果もあるんですよ。だから「病院が足りないなら作ればいい」っていうのは、国の財政と保険の仕組みを破綻させる方向に進む結果になってしまうんですよね。

 

―1970年に思い描いた「便利な社会」というファンタジー

 

服部:夕張市の例で、運営できなくなった病院のベッド数を減らしたら「健康にならなければ」と街中でお年寄りたちが歩き出したという話があったよね。水道局も運営できなくなったから各家庭で井戸を掘ったら井戸水を飲んで健康になった、とか。

 

山崎:意識が変わりましたよね。そうそう、キューバは今、オーガニック野菜の産地になってるんですよ。アメリカの経済制裁で何も輸入できなくなって、仕方ないから自分たちが出したものを肥料にして、育てて食べたものをまた出して…っていうのを繰り返していたら、オーガニック野菜の市場が出来上がっていたらしいんです。でも数年前にアメリカとの経済交流が復活したので、今後はどうなるかわからないですね。便利になるとか、進歩するとか、前の万博の時に夢見ていたことを突き詰めた結果をひと通り見て「そっちじゃないかもしれない」というのが今、少し見えてきていますよね。だから今回はそこからシフトした新しい未来像を見せなければいけないなと。

 

服部:キューバには畑もなかったわけでしょう。道路を剥がして、その下にある土で栽培を始めて。こういう「便利な未来社会」というファンタジーとは正反対のことがこれからも起こるっていうことを、どれだけリアルに感じているかが大事じゃないかな。最近、コンビニが薬局の役割を担い始めたりしてるけど、前に僕たちは「コンビニがナースステーションになる」っていう話をしてたんですよね。多分コンビニは今後もっと増えるので、ローカリティを高めるために、今のフランチャイズという仕組みから、周囲の人口や年齢のバランスを見て運営を考えていくという風に変わっていくだろうと。それが進んでいくと、病院のベッド数が足りない中でコンビニがナースステーションの役割も果たすだろうと考えています。

 

 

―未来社会の働き方はどうなる?

山崎:ドイツの調剤薬局では今、調剤をロボットに任せる仕組みが始まっているんです。処方箋を読み取って、大きなボックスに入った約3000種類の中から薬を出してきてくれる。「これとこれはセットで渡すことが多い」というようなことを自己学習で学ぶから、ボックスの配置などが効率的になっていって、仕事のスピードが早くなっていく。薬剤師の仕事は何かというと患者とのコミュニケーションで、その人がお医者さんに言えなかった悩みを把握して医者と情報共有したりするんです。こういう風に人間とロボットの役割分担が明確になっていって、生身の人間を劣悪な環境で働かせることはだんだんと成り立たなくなっていくだろうと思います。

 

服部:そういう世界が目の前に来ている、じゃあ2025年がどうなるか。第2部では「万博をターゲティングするなら?」という話を始めていきましょう。

 

山崎:素晴しいまとめだ(笑)

 

第2部「万博とコミュニケーションデザイン」

―万博を背負う行政の今

 

第2部では服部氏・山崎氏が主催者や参加者からの質問に答える形で「万博とコミュニケーションデザイン」をテーマに話した。

 

山根:第1部では海外の事例だったり最新のAI技術だったり、いろんなお話をしていただきましたが、行政はどんな取り組みをしているんでしょう? 民間企業が街づくりのために活動している一方、それがどこまで行政に伝わっているのかなと気になりました。

 

服部:さっきの「コンビニがナースステーションに」っていう話なんて、5年前ならそんな仮説が本当に形になるなんて思ってもみなかったけど、今は実際に計画が練られて実施もされ始めている状況でしょ。デザイナーにとって「未来はどういう風になるだろうか」と仮説を立てることってすごく大事だと思うんですよね。それと社会のムーブメントがマッチする瞬間がきっとあるはずなんです。

 

吉田:昔と今で行政のあり方や関わり方に変化はありますか?

 

服部:きっとこういう場にも興味を持って来られてると思いますよ。

 

山根:山崎さんは行政との関わりも深いと思うんですけど、有識者会議の雰囲気とかはどんな感じなんですか?

 

山崎:ちゃんとした感じですよ。もちろん「こういう方向に持っていきたい」というのはあるでしょうけど、万博に反対だった僕を呼ぶぐらいですから。反対というのは、今の時代「最先端を見せる万博」みたいなものはもうだめで「僕らが超長寿社会で何をしているのか」を示すくらいしか成り立たない、というのが僕の意見だったんですが、そういう発言も全部議事録に載せるし、公開もしているし、とても健全な委員会だったと思います。

 

―参加型のアクションが未来社会を変えていく

 

吉田:今日来てくださってる方は僕らと同じく、万博に関わることのできるきっかけがないか模索しているはずなんです。

 

山根:でも、窓口がないですもんね。

 

山崎:どんどん参加型に変えていった方がいいと思うんですけどね。愛知万博はそれがうまくいったケースなんですけど。素人の方がたくさん集まって、最終的に環境に対するそれぞれの意識がものすごく変わったんですよね。まさにこの勉強会でも参加型を実行していると思いますよ。

 

山根:僕たちも今回初めて万博について勉強してみて、どんどん頭が良くなってるような気がします。

 

一同:(笑)

 

服部:僕からもひとつ、山崎くんに質問したいんですけど、山崎くんは社会課題をどうやって発見してるんだろうっていつも思っていて。

山崎:誰か偉い人が教えることを見たり聞いたりするより、普通の人が集まって、調べて、発表してみることが課題発見に繋がっていくんだと思います。そしてそれを繰り返していくうちに、進め方・考え方というプロセスの部分がクリエイティブになっていく。そういうチームがいろんなところにできていくというのが、万博にとっても非常に重要だと思います。

 

服部:未来の輪郭みたいなものを多角的に見ることが大事ですよね。この勉強会もそんな風に成長していくよう、今後も期待しています。

 

最後に、株式会社バイスリーの代表・吉田氏が「いろんな方の意見を聞きながら、この勉強会をバージョンアップさせていきたい」と締めくくった。

expo study meeting vol.01 「クリエイターはどうする? 2025大阪・関西万博」イベントレポート

expo study meeting vol.01 「クリエイターはどうする? 2025大阪・関西万博」イベントレポート »

2018年11月23日。2025年に開催される国際博覧会(以下万博)の開催国に、長い誘致期間を経て日本(大阪)が選ばれた。過去の万博の開催実績や、運営能力の高さなどが評価され選ばれた大阪には、国内外から約2800万人の来場が想定され、経済効果はおよそ2兆円と試算されている。

経済効果もさることながら、1970年万博の際に建設された「太陽の塔」を始め、万博にはさまざまな「クリエイティブ」が関わってくる。しかし国内のクリエイターには、万博の意義や、パビリオンやプログラムの選定方法など、さまざまなことが未浸透なのが現状だ。

2019年1月25日に心斎橋ビッグステップにて開催された「expo study meeting vol.01」は、大阪のデザイン事務所「株式会社バイスリー」と、同じく大阪のWebコンテンツ制作会社「株式会社人間」の2社が企画した、2025年大阪万博のための「勉強会」だ。

「バイスリー」と「人間」は万博の誘致活動として、自社の資金でフリーペーパー「はじめて万博」を共同刊行した実績がある。

第1回となる今回は、「クリエイターはどうする? 2025大阪・関西万博」のテーマを掲げ、2名の万博有識者をゲストに招き、来場者に向け、万博に関する講演を行った。

―過去の万博から学ぶ「開催成功」のかたち

二神敦(ふたがみあつし)さん

1972年生まれ、神戸在住。世界各国140以上の博覧会を巡った博覧会マニア。普段は阪神高速道路の会社員として働く。史上最大規模の上海万博には10回訪問。万博終了後の跡地を訪れるなど、“万博後”についても動向をチェックしている。

「博覧会マニア」の異名をもつ二神敦さんは、1981年に開催された「神戸ポートアイランド博覧会」に一番乗りで来場し、当時の新聞でも報道された。それ以降、世界140か所の博覧会に足を運び、自他ともに認める「博覧会」の第一人者だ。

今回のイベントでは、過去9か国の「万博」を訪れた二神さんだけが知る、万博のあり方、そして万博が人々にもたらす影響などを話してくれた。

 

二神敦さん(以下、二神さん):「万博の失敗と成功の判断基準」にしている要素がこのふたつです。

 

 

一般的に「成功」といわれているのが、「愛・地球博(愛知)」「上海万博(中国)」「花の万博(大阪)」。

これまで、「最大の万博」といわれていたのが、「上海万博」。6410万人という大阪万博に対して、上海万博は7308万人という多くの来場者数を記録したわけです。

日本の場合、最近では「愛知万博」が一番大きな万博でした。当初から(来場者数などが)軌道に乗っていたかというとそうではなくて、開始前の内覧会は新聞でネガティブに報道されていましたが、結果大成功しました。

 

はじめは全然人(来場者)がいなかったんですけど、どんどん増えてきて、入場規制もかかりました。ゲート前に徹夜組が5000人待機したり、閉場時間には次の日目当ての徹夜組のお客さんが門を取り囲む形で集まっていました。

―開催中と開催後ではまた別物。それぞれの「成功と失敗」

先ほど「収益が大事」という話をしたんですが、それは運営側の問題で、それ以外の一般の方は、赤字であろうが黒字であろうが、あまり関係ないですよね。収益の話は、あくまで開催期間中の問題です。

万博が終わると、期間中には万博に関心がなかった人たちにも関心は広がっていくんです。期間後には「跡地がどうなったか」「博覧会によって、国民の気持ちがどう変わったか」、こういうことが一番大事になってくると思うんです。

「神戸ポートアイランド博覧会」は、当時の「太陽神戸銀行」が出展していたパビリオンを今もプラネタリウムとして残していますが、跡地である「神戸コンベンションコンプレックス」は現在あまり盛況していません。

その一方、同じ港町ということで、「横浜博覧会」の跡地である「みなとみらい21」は現在でも賑わいを見せています。「横浜博覧会」自体は、集客の面でも収益の面でも、大失敗だった。けど、街づくりとしては大成功ということですね。

―数字に踊らされない、人々の「万博の思い出」

海外の跡地も、もちろん色々訪れました。ヨーロッパ、アジア、アメリカなど。神戸が元々、何もない区画で万博を開催し、その後私自身が街づくりの様子も見ていたことで、「跡地」に興味を惹かれたんです。

シカゴ万博(1893年)の例では、パビリオンがいまだに美術館として残ってるんですね。元々残すつもりで作られたパビリオンだったから、今でも「博覧会やってよかったね」という気持ちがシカゴの人々の心に残ってるんです。

―鉄道乗客者数に見る、万博跡地の隆興

一方、我が国の跡地を最寄り駅の乗客数で比べてみました。やっぱりトップは大阪万博(1970)の跡地ですね。「つくば万博」(1985)、つくばエキスプレスの最寄り駅の乗客者数が、1日当たり5,276人。そして乗客数が一番少ないのが、「愛・地球博」(2005)の愛知です。「花の万博」跡地の鶴見緑地公園は入場無料、愛・地球博の跡地も入場無料ですが、今でも一番人を集めてるのは、入場料がいるにも関わらず、大阪万博の跡地である「万博公園」なんです。

 

愛・地球博の開催地であった愛知県は、開催中あれだけ人を集めたのに、今は低迷してるようで、「愛・地球博は財政面で成功とは言えなかった」と、去年も報道されていました。

その理由は、博覧会の会場に交通を連結するためにわざわざ鉄道を通したけど、万博が終わるとあまり乗客数が伸びなかったんです。愛知は大企業「トヨタ」の所在地でもあり、車社会なんですよね。

―「分りやすさ」と「描きやすさ」。万博ロゴマークの課題

二神さん:今回のテーマに沿って、少しデザインの話もということで、過去の博覧会を振り返ってみようと思います。

実は私、ロゴマークが大好きなんです。今回の誘致マーク公募の際も、デザイン能力なんてないにも関わらず応募しました。過去に、応募の謝礼といったレターセットが送られてきたことがあったので、「今回もそういったものがあるかもしれない……」という景品目当ての応募でした。

その後、一般投票作の内から3点の作品が最終選考に選ばれ、結果3に決定しました。

基本的にロゴマークは、子どもでも描けるデザインでないといけないと思うんです。例えば、絵日記に書けるぐらいの分かりやすさ。その点を考えると3かなーとも思いますね。

 

―安易な発想が誰かを傷つける? キャラクターデザインにも十分な配慮を

二神さん:続いて、マスコットキャラクターについてお話ししたいと思います。花の万博(1990)のボランティアをした際に「花ずきんちゃん」がプリントされたTシャツを着たけれど「高校生の男子にこのTシャツはキツいかな」なんて思ってましたね。大阪万博の際には、大人の男性にも似合うかっこいいキャラクターを、クリエイターのみなさんにデザインしていただきたいなと思います。

 

さすが数々の万博をリアルタイムで見てきた二神さん。大阪に住まう人間がおそらく一番気がかりであろう「収益」「広大な土地の事後処理」の問題も、過去のケースを用いて、分りやすい言葉で解説してくれた。

二人目の登壇者は井口 皓太(いぐちこうた)さん。武蔵野美術大学在学中に会社を立ち上げるほど、優れたクリエイティブの才能をもつ井口さんは、2015年のミラノ万博の際に日本のパビリオン設立に関わったクリエイターのひとりだ。実際に、現地で万博の構築に携わったクリエイティブの第一人者として、お話をうかがった。

井口皓太(いぐちこうた) さん

2008年武蔵野美術大学在学中に株式会社TYMOTEを設立。2014年に世界株式会社を設立。グラフィックデザインを軸にさまざまなデザインワークを行う。主な受賞歴に2014東京TDC賞、D&AD2015 yellow pencil、NY ADC賞2015goldなど。京都造形大学客員教授。 ミラノ万博では日本館 FUTURE RESTAURANTのアートディレクター兼モーションデザインを担当。本プロジェクトは、ミラノ万博の展示デザイン部門で「金賞」を受賞。

―多彩なクリエイターが集った「ミラノ万博日本館」の制作

井口皓太さん(以下、井口さん):よろしくお願いします。井口皓太です。僕には個人で色々な肩書きがあります。肩書を固定しないで仕事してる感じですね。では早速ミラノ万博の話をしようかなと思います。

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